[O-YB-04-5] 慢性痛を有する高齢者に対する運動介入と患者教育指導を併用した介護予防プログラムの効果検証
ランダム化比較試験
Keywords:慢性痛, 介護予防, 教育指導
【目的】慢性痛は運動機能や身体活動量ならびに心理面と密接に関連するため,介護予防事業においても慢性痛対策は重要な課題である。しかし,慢性痛を有する高齢者に対する効果的な介入プログラムは開発されていない。一方,先行研究では慢性痛に対する有効な介入手段として運動介入と患者教育指導が推奨されている。また,自験例においては高齢者の慢性痛発生には痛みの認知的側面を反映する破局的思考の強さが最も影響することが明らかとなっている。そこで,我々は運動介入と痛みの捉え方といった認知面を修正する患者教育指導を併用した介護予防プログラムの開発を進めている。本研究では,慢性痛を有する高齢者を対象に本プログラムの効果をランダム化比較試験で検証した。
【方法】対象は介護予防事業に参加した慢性痛(NRSが5以上かつ持続期間が6ヶ月以上)を有する65歳以上の高齢者66名(平均78.1歳)であり,運動介入を実施する群(対照群)34名とそれに加えて痛みの捉え方を修正する教育指導を実施する群(介入群)32名の2群にランダムに振り分けた。介入期間は12週間で,両群ともに筋力・バランストレーニングから構成した60分間の運動プログラムを週1回実施した。そして,介入群には万歩計を配布し痛み行動日誌を用いたセルフモニタリングを行った。具体的には,事業に従事している理学療法士が痛みの適応行動に着目するフィードバックと,歩数を介入後4週毎に初期評価時より10%増加することを目標とする指導を週1回行った。評価項目は,痛み・ADL・運動機能・心理面・身体活動量とし,痛みは部位数と最も痛みが顕著であった部位のNRSを聴取した。ADLは疼痛生活障害評価尺度(PDAS)で評価し,運動機能は椅子起立時間とTUGで評価した。また,心理面はGDS-15とFESならびに痛みの破局的思考(PCS)で評価した。そして,身体活動量は1軸加速度計Lifecorder GSを用いて評価し,介入前後1週間の平均歩数と1-3,4-6,7-9Metsの各運動強度別平均活動時間を算出した。分析は,2要因分散分析を用いて介入前後で比較した。
【結果】介入前の対象者属性と評価項目全てで2群間に有意差を認めなかった。介入中の中止例は介入群0名,対照群2名,出席率はそれぞれ93.0%,92.4%であり,脱落率と出席率に有意差を認めなかった。痛みと運動機能は2群ともに介入後は有意に改善した。一方,PDASとPCSは2群間で交互作用を認め,介入群のみ介入後に有意に改善した。また,身体活動量は歩数・1-3・4-6Mets活動時間で交互作用を認め,介入群は介入前後で変化はないものの,対照群は介入後に有意に低下した。
【結論】慢性痛を有する高齢者に対する運動介入は,痛みと運動機能の改善をもたらすが,身体活動量やADLの改善にはつながらないといえる。一方,患者教育指導の併用により痛みの捉え方といった認知的側面が改善し,身体活動量の維持ならびにADLの改善につながることが示唆された。
【方法】対象は介護予防事業に参加した慢性痛(NRSが5以上かつ持続期間が6ヶ月以上)を有する65歳以上の高齢者66名(平均78.1歳)であり,運動介入を実施する群(対照群)34名とそれに加えて痛みの捉え方を修正する教育指導を実施する群(介入群)32名の2群にランダムに振り分けた。介入期間は12週間で,両群ともに筋力・バランストレーニングから構成した60分間の運動プログラムを週1回実施した。そして,介入群には万歩計を配布し痛み行動日誌を用いたセルフモニタリングを行った。具体的には,事業に従事している理学療法士が痛みの適応行動に着目するフィードバックと,歩数を介入後4週毎に初期評価時より10%増加することを目標とする指導を週1回行った。評価項目は,痛み・ADL・運動機能・心理面・身体活動量とし,痛みは部位数と最も痛みが顕著であった部位のNRSを聴取した。ADLは疼痛生活障害評価尺度(PDAS)で評価し,運動機能は椅子起立時間とTUGで評価した。また,心理面はGDS-15とFESならびに痛みの破局的思考(PCS)で評価した。そして,身体活動量は1軸加速度計Lifecorder GSを用いて評価し,介入前後1週間の平均歩数と1-3,4-6,7-9Metsの各運動強度別平均活動時間を算出した。分析は,2要因分散分析を用いて介入前後で比較した。
【結果】介入前の対象者属性と評価項目全てで2群間に有意差を認めなかった。介入中の中止例は介入群0名,対照群2名,出席率はそれぞれ93.0%,92.4%であり,脱落率と出席率に有意差を認めなかった。痛みと運動機能は2群ともに介入後は有意に改善した。一方,PDASとPCSは2群間で交互作用を認め,介入群のみ介入後に有意に改善した。また,身体活動量は歩数・1-3・4-6Mets活動時間で交互作用を認め,介入群は介入前後で変化はないものの,対照群は介入後に有意に低下した。
【結論】慢性痛を有する高齢者に対する運動介入は,痛みと運動機能の改善をもたらすが,身体活動量やADLの改善にはつながらないといえる。一方,患者教育指導の併用により痛みの捉え方といった認知的側面が改善し,身体活動量の維持ならびにADLの改善につながることが示唆された。