[O-YB-05-4] 自宅見取り図を用いた転倒予防指導の有効性に関するランダム化比較試験
急性期病院における退院患者を対象に
Keywords:転倒予防, 自宅見取り図, 急性期病院
【はじめに,目的】
転倒及び転倒のヒヤリハット(躓き・滑り等)は,高齢者にとって健康寿命の延伸を阻む要因である。一般的に,地域在住高齢者より病院からの退院患者の方が転倒する割合が高いといわれており,退院後2ヶ月以内での再転倒が17.5%あったという報告がある。転倒予防においては様々な戦略がとられており,近年家屋評価が注目されているが,全ての退院患者に対応していくことは困難である。そこで今回,急性期病院から自宅退院する際に,簡便に使用できる見取り図を用いて転倒予防指導を行うことで,再転倒予防効果が得られるかを検証することを目的とした。
【方法】
対象者は,急性期病院整形外科病棟に入院された65歳以上の高齢者のうち,入院前一年間に転倒歴があり,屋内自立レベル(補助具の有無不問)にて自宅退院される患者60名とした。除外基準は,重篤な神経症状,視力障害,認知機能評価MMSE<24点とした。
研究デザインはランダム化比較試験とし,ランダムに対照群30名,介入群30名の2群に分け,割り付けを決定後,自宅退院までに介入を行った。対照群には,運動指導を主体とした指導を退院時に行い,介入群には,運動指導に加え,自宅見取り図を用いた転倒危険因子についての指導を実施した。転倒危険因子は,先行研究で報告されている段差や敷物,不適切な履き物,暗所,整理整頓されていない場所とした。
ベースライン評価として,対象者の属性(年齢・性別・BMI),認知機能評価(MMSE),身体機能評価(TUG),日常生活評価(BI),精神・心理的評価(MFES・GDS5),入院前の生活機能評価(LSA)の調査・測定を退院前に行った。追跡期間において,退院後2ヶ月間の自宅内での転倒と転倒のヒヤリハットを転倒カレンダーを用いて観察した。
統計解析では,ベースラインの両群間の比較検討にはχ2検定及びt検定を用いて検討を行った。また,観察期間中の介入の効果を確認する為,Kaplan-Meier法による累積ヒヤリハット回避率の算出とCoxの比例ハザードモデルによる多変量解析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
追跡率は81.7%であった。ベースライン評価では両群間において各項目で有意な差はみられず,平均年齢は対照群75.0±6.9歳,介入群76.8±6.7歳であった。
2ヶ月の観察期間において,転倒発生状況は,対照群で3名(12%)転倒したのに対し,介入群では転倒が発生しなかった。ヒヤリハット発生状況は,介入群のヒヤリハット回避率は対照群に比べて有意に高値を示した(p<0.01)。さらに,性・年齢を調整したCox比例ハザードモデルによる検討では,介入群(ハザード比:0.361,95%信頼区間:0.147-0.886)が有意な独立因子であった。
【結論】
急性期病院の転倒予防の取り組みとして,自宅見取り図を用いた指導が有効である可能性が示唆された。今回,簡易に指導を行うことで一定の効果が得られたことは,臨床的に意義があると考える。
転倒及び転倒のヒヤリハット(躓き・滑り等)は,高齢者にとって健康寿命の延伸を阻む要因である。一般的に,地域在住高齢者より病院からの退院患者の方が転倒する割合が高いといわれており,退院後2ヶ月以内での再転倒が17.5%あったという報告がある。転倒予防においては様々な戦略がとられており,近年家屋評価が注目されているが,全ての退院患者に対応していくことは困難である。そこで今回,急性期病院から自宅退院する際に,簡便に使用できる見取り図を用いて転倒予防指導を行うことで,再転倒予防効果が得られるかを検証することを目的とした。
【方法】
対象者は,急性期病院整形外科病棟に入院された65歳以上の高齢者のうち,入院前一年間に転倒歴があり,屋内自立レベル(補助具の有無不問)にて自宅退院される患者60名とした。除外基準は,重篤な神経症状,視力障害,認知機能評価MMSE<24点とした。
研究デザインはランダム化比較試験とし,ランダムに対照群30名,介入群30名の2群に分け,割り付けを決定後,自宅退院までに介入を行った。対照群には,運動指導を主体とした指導を退院時に行い,介入群には,運動指導に加え,自宅見取り図を用いた転倒危険因子についての指導を実施した。転倒危険因子は,先行研究で報告されている段差や敷物,不適切な履き物,暗所,整理整頓されていない場所とした。
ベースライン評価として,対象者の属性(年齢・性別・BMI),認知機能評価(MMSE),身体機能評価(TUG),日常生活評価(BI),精神・心理的評価(MFES・GDS5),入院前の生活機能評価(LSA)の調査・測定を退院前に行った。追跡期間において,退院後2ヶ月間の自宅内での転倒と転倒のヒヤリハットを転倒カレンダーを用いて観察した。
統計解析では,ベースラインの両群間の比較検討にはχ2検定及びt検定を用いて検討を行った。また,観察期間中の介入の効果を確認する為,Kaplan-Meier法による累積ヒヤリハット回避率の算出とCoxの比例ハザードモデルによる多変量解析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
追跡率は81.7%であった。ベースライン評価では両群間において各項目で有意な差はみられず,平均年齢は対照群75.0±6.9歳,介入群76.8±6.7歳であった。
2ヶ月の観察期間において,転倒発生状況は,対照群で3名(12%)転倒したのに対し,介入群では転倒が発生しなかった。ヒヤリハット発生状況は,介入群のヒヤリハット回避率は対照群に比べて有意に高値を示した(p<0.01)。さらに,性・年齢を調整したCox比例ハザードモデルによる検討では,介入群(ハザード比:0.361,95%信頼区間:0.147-0.886)が有意な独立因子であった。
【結論】
急性期病院の転倒予防の取り組みとして,自宅見取り図を用いた指導が有効である可能性が示唆された。今回,簡易に指導を行うことで一定の効果が得られたことは,臨床的に意義があると考える。