[O-YB-07-1] 老年期の抑うつ状態を予防する活動は何か?
―身体/認知/社会の3側面からの検討―
Keywords:メンタルヘルス, コホート研究, 性差
【はじめに,目的】
老年期の抑うつ状態は,生活の質を低下させるだけでなく,認知症や生活機能障害の要因となることから,予防的対策が重要と考えられる。メンタルヘルスの維持・改善には多様な生活習慣要因が関連していることが予想されるが,身体/認知/社会活動のように複数の側面から抑うつ状態発生に及ぼす影響を明らかとした研究はない。本研究の目的は,老年期における抑うつ状態の新規発生を前向きに調査し,身体/認知/社会の3つの側面からの比較検討により,予防に寄与する活動を明らかにすることである。
【方法】
愛知県における高齢者機能健診に参加した5,104名のうち,うつ病・パーキンソン病・認知症の既往者,要介護認定者,Mini-Mental State Examination(MMSE)で18点未満者,ベースラインの時点で抑うつ状態であった者を除いて,約15か月後の追跡調査に回答の得られた3,106名(男性1,580名,女性1,526名,平均年齢71.5歳)を最終的な分析対象とした。抑うつ症状はベースラインと15か月後に,Geriatric Depression Scale(GDS)により評価し,6点以上を抑うつ状態ありと判定した。質問紙により活動状況の調査を行い,【身体活動:①散歩・ウォーキング,②軽い運動・体操,③スポーツ】,【知的活動:①習い事,②ビデオ・DVDの操作,③パソコンの使用】,【社会活動:①家族友人の相談にのること,②公民館での行事・催し物への参加,③地区の会合等への出席】の9項目について実施の有無を聴取した。その他の測定項目は,基本属性(年齢,性,教育歴),Short Physical Performance Battery,MMSE,飲酒・喫煙習慣,主観的健康観,家族構成,服薬数とした。抑うつ状態の新規発生の有無を従属変数,各活動の有無を独立変数,その他の測定項目を調整因子とした多重ロジスティック回帰分析を性別ごとに行った。
【結果】
239名(7.7%)で抑うつ状態が新規発生した。多重ロジスティック回帰分析の結果,有意となったのは,男性では習い事(OR[95%CI]=0.59[0.35-0.99]),ビデオ・DVDの操作(0.64[0.42-0.97]),パソコンの使用(0.51[0.32-083])であり,女性では軽い運動・体操(0.65[0.44-0.95]),習い事(0.65[0.44-0.97]),公民館での行事・催し物への参加(0.39[0.26-0.58]),地区の会合等への出席(0.49[0.33-0.73])であった。
【結論】
男性では電子機器の使用のような知的活動が,女性では身体活動や地域行事・会合への参加のような社会活動が抑うつ状態の発生と独立して関連していた。老年期の抑うつ状態の保護因子となる活動には性差がみられ,性別によって異なる予防的アプローチが必要となる可能性が考えられた。
老年期の抑うつ状態は,生活の質を低下させるだけでなく,認知症や生活機能障害の要因となることから,予防的対策が重要と考えられる。メンタルヘルスの維持・改善には多様な生活習慣要因が関連していることが予想されるが,身体/認知/社会活動のように複数の側面から抑うつ状態発生に及ぼす影響を明らかとした研究はない。本研究の目的は,老年期における抑うつ状態の新規発生を前向きに調査し,身体/認知/社会の3つの側面からの比較検討により,予防に寄与する活動を明らかにすることである。
【方法】
愛知県における高齢者機能健診に参加した5,104名のうち,うつ病・パーキンソン病・認知症の既往者,要介護認定者,Mini-Mental State Examination(MMSE)で18点未満者,ベースラインの時点で抑うつ状態であった者を除いて,約15か月後の追跡調査に回答の得られた3,106名(男性1,580名,女性1,526名,平均年齢71.5歳)を最終的な分析対象とした。抑うつ症状はベースラインと15か月後に,Geriatric Depression Scale(GDS)により評価し,6点以上を抑うつ状態ありと判定した。質問紙により活動状況の調査を行い,【身体活動:①散歩・ウォーキング,②軽い運動・体操,③スポーツ】,【知的活動:①習い事,②ビデオ・DVDの操作,③パソコンの使用】,【社会活動:①家族友人の相談にのること,②公民館での行事・催し物への参加,③地区の会合等への出席】の9項目について実施の有無を聴取した。その他の測定項目は,基本属性(年齢,性,教育歴),Short Physical Performance Battery,MMSE,飲酒・喫煙習慣,主観的健康観,家族構成,服薬数とした。抑うつ状態の新規発生の有無を従属変数,各活動の有無を独立変数,その他の測定項目を調整因子とした多重ロジスティック回帰分析を性別ごとに行った。
【結果】
239名(7.7%)で抑うつ状態が新規発生した。多重ロジスティック回帰分析の結果,有意となったのは,男性では習い事(OR[95%CI]=0.59[0.35-0.99]),ビデオ・DVDの操作(0.64[0.42-0.97]),パソコンの使用(0.51[0.32-083])であり,女性では軽い運動・体操(0.65[0.44-0.95]),習い事(0.65[0.44-0.97]),公民館での行事・催し物への参加(0.39[0.26-0.58]),地区の会合等への出席(0.49[0.33-0.73])であった。
【結論】
男性では電子機器の使用のような知的活動が,女性では身体活動や地域行事・会合への参加のような社会活動が抑うつ状態の発生と独立して関連していた。老年期の抑うつ状態の保護因子となる活動には性差がみられ,性別によって異なる予防的アプローチが必要となる可能性が考えられた。