The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本予防理学療法学会 » 口述発表

[O-YB-08] 口述演題(予防)08

Sun. May 14, 2017 10:20 AM - 11:20 AM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:井上 和久(埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科)

日本予防理学療法学会

[O-YB-08-3] 地域在住高齢者における通常歩行速度の最小可検変化量と年齢による差異

橋立 博幸1, 島田 裕之2, 牧迫 飛雄馬2, 土井 剛彦2, 堤本 広大2 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.国立長寿医療研究センター)

Keywords:地域在住高齢者, 通常歩行速度, 最小可検変化量

【はじめに,目的】通常歩行速度は歩行能力を示す代表的な指標であり,主要な日常生活活動に反映され,転倒や虚弱と密接に関連する重要な評価として用いられている。とくに地域在住高齢者における介護・転倒・認知症の効果的な予防を図るためには,有害事象のリスクを早期に検出するためだけでなく,予防・改善の介入効果を客観的に判断する評価指標とその参考値が求められる。評価における測定誤差の限界域を表す最小可検変化量(MDC)は,測定値が測定誤差以上の変化を示したかどうかを判断する参考値になるが,大規模研究による地域在住高齢者の年齢や性別を考慮した通常歩行速度のMDCを示した報告は乏しい。本研究では,地域在住高齢者において,性別と各年代の違いによる通常歩行速度の差異を検証するとともに,各年代における通常歩行速度のMDCを大規模集団の横断データによって明らかとすることを目的とした。

【方法】対象は,愛知県における高齢者機能健診に参加した65歳以上の地域在住高齢者5104人のうち,脳血管疾患,パーキンソン病,認知症の既往者,要介護認定者を除外し,通常歩行速度の測定が可能であった4637人とした。調査項目は通常歩行速度であり,実際には6.6mの直線歩行路における中央2.4mの歩行区間を通常速度にて歩行した際の所要時間をWalkwayにて測定し,2回測定した値を速度に換算して分析に用いた。全対象者を男女別で5歳ごとの年齢階級の群(65-69歳,70-74歳,75-79歳,80-84歳,85歳以上)に分類し,通常歩行速度について年齢および性別による差異を検討するために2元配置分散分析および多重比較検定を用いて比較するとともに,各群において通常歩行速度の級内相関係数(ICC),測定標準誤差(SEM),およびMDC95を算出した。

【結果】全対象者における通常歩行速度は1回目1.20±0.22m/s,2回目1.26±0.22m/sであり,級内相関係数ICC(2,1)0.92,ICC(2,2)0.96,SEM 0.06m/s,MDC95 0.17m/sであった。2元配置分散分析の結果,年代および性別による有意な主効果(p<0.01)と交互作用(p<0.001)を示した。また,多重比較検定の結果,男女ともに年代別のすべての群間に有意差が認められ,年齢階級の高さに順じて有意な低値を示した。さらに,各群における通常歩行速度のMDC95を算出した結果,0.15~0.18m/sであった。

【結論】本研究における通常歩行速度の測定は,臨床的に有用とされる高い再現性を示した。近年の先行研究(Mangione KK, et al., 2010)では,地域在住高齢者における通常歩行速度についてSEM 0.08m/s,MDC 0.19m/sと報告されているが,通常歩行速度の平均値が年齢の高さに順じて有意に低い値を示すとともに,年齢階級の差によって通常歩行速度のMDCにおいても0.01~0.03m/s程度の差異が生じていた。本研究における大規模集団の横断データによって算出された通常歩行速度の平均値およびMDCは,地域高齢者の予防的介入に活用できる参考値になると考えられた。