第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-05] ポスター(糖尿病)P05

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-05-1] 理学療法介入のない外来通院をしている男性2型糖尿病患者の身体機能

白井 信行1,2, 椿 淳裕2, 森下 慎一郎2, 礒部 純代1, 五十嵐 佳南1, 村山 悟3 (1.新潟臨港病院, 2.新潟医療福祉大学大学院, 3.村山内科)

キーワード:糖尿病, 身体活動量, 等尺性膝伸展筋力

【はじめに,目的】

世界保健機関によると,1980年には1億800万人であった世界の糖尿病患者は,2014年には4億2200万人と急増している。有病率は男性の方が高く(男性9%,女性5%),65歳以上の20%が糖尿病であると報告している。また,糖尿病が脳梗塞や心筋梗塞などの大血管障害や糖尿病合併症を引き起こすことに加え,身体機能の低下に関する報告も散見される。しかし,理学療法の介入がされていない糖尿病患者の身体機能や身体活動量は把握できていない。そこで本研究の目的は,理学療法介入のない糖尿病患者の身体活動量を測定し,その多寡で身体機能を比較することとした。

【方法】

対象は,当院の糖尿病外来に通院し,理学療法介入の行われていない男性2型糖尿病患者19名(平均年齢65.7±8.6歳)とした。身体機能の評価として,Short Physical Performance Battery(以下;SPPB),握力,等尺性膝伸展筋力を評価した。また,糖尿病性神経障害のスクリーニング評価として,Michigan Neuropathy Screening Instrument(以下;MNSI)を使用した。さらに身体活動量の評価として,International Physical Activity Questionnaire(以下;IPAQ)のShort version日本語版を使用した。また,カルテより年齢,性別,罹患歴,BMI,HbA1c,eGFR,中性脂肪,HDL-C,LDL-Cを収集した。IPAQの中央値により,身体活動量の高い群(以下;高値群)と低い群(以下;低値群)に分け,対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて,各評価項目を比較した。有意水準は5%とした。

【結果】

IPAQの中央値は157.2kcal/日であり,高値群262.3±71.2kcal/日と,低値群44.5±11.4kcal kcal/日との間に有意な差があった(p<0.01)。年齢(高値群;63.9±4.6歳,低値群;66.7±11.4歳),罹患歴(高値群;7.8±6.9年,低値群;7.8±5.6年),BMI(高値群;25.0±2.9kg/m2,低値群;26.3±3.7kg/m2)では両群間に有意差を認めなかったが(p=0.59~0.87),等尺性膝伸展筋力では,高値群が0.54±0.15kgf/kg,低値群が0.32±0.18kgf/kgであり,低値群が有意に低かった(p<0.01)。握力(高値群;36.5±7.3kg,低値群;32.1±8.0kg),4m歩行速度(高値群;3.4±0.4sec,低値群;3.8±1.0sec),5回立ち上がり時間(高値群;8.5±1.8sec,低値群;9.6±3.0sec),SPPB(高値群;11.7±0.4点,低値群;11.4±1.3点),MNSI(高値群;3.9±1.5点,低値群;4.0±1.3点)では,差がなかった(p=0.32~0.88)。血液データにおいても両群間に差はなかった(p=0.14~0.81)。

【結論】

本研究によって,理学療法介入の行われていない男性2型糖尿病患者は,身体活動量の高い群は低い群に比べ,等尺性膝伸展筋力が高いことが明らかとなった。外来で定期診察のみ行っている2型糖尿病患者に対し理学療法介入をすることで,下肢筋力の改善や,身体活動量の増加に寄与できる可能性を示唆する結果であった。