The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本糖尿病理学療法学会 » ポスター発表

[P-DM-06] ポスター(糖尿病)P06

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本糖尿病理学療法学会

[P-DM-06-5] 動脈硬化指標と外気温との関連について
―運動習慣をもつ肥満症患者における検討―

本田 寛人1, 井垣 誠1, 小松 素明2, 田中 愼一郎2 (1.公立豊岡病院日高医療センターリハビリテーション技術科, 2.公立豊岡病院日高医療センター内科)

Keywords:肥満, 動脈硬化, 運動習慣

【はじめに,目的】

身体活動量に影響を与える要因の一つに,気温や降雨などの気象学的因子が挙げられる。とくに冬季の気温低下は運動機会の減少を引き起こし,それに伴い,体重の増加や代謝機能の悪化などを臨床上よく経験する。一般に,動脈硬化指標の一つである血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation:FMD)も,気温が低下する冬季に悪化するとされる。我々は過去,通院型の運動療法を継続して週2回以上実施する肥満症患者では,体重・代謝関連指標管理において外気温の影響が少ないことを報告したが,FMDやほかの動脈硬化指標である心臓足首血管指数(cardio-ankle vascular index:CAVI)および足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index:ABI)の変動を把握できていない。そこで今回,運動習慣をもつ肥満症患者における動脈硬化指標と外気温との関連を検証した。


【方法】

対象は,外来の肥満症患者21名[男性6名,女性15名,年齢65.5±2.6歳,body mass index(BMI)28.4±1.2 kg/m2(±標準誤差)(いずれもデータ収集開始時)]である。対象者は,院内監視下の運動療法を週2回以上,2016年10月現在まで10年近く継続している。運動種目はトレッドミルや自転車エルゴメーターを用いた40分間の有酸素運動であり,中等強度の範囲の心拍数を目標としている。データ収集期間はデータ欠損のない過去5年間とした(2010年1月~2014年12月)。血圧および動脈硬化指標であるFMD,CAVI,ABIと平均外気温との関係を単相関分析(Pearsonの積率相関係数)にて解析した。有意水準はすべて危険率5%未満とした。


【結果】

5年間の追跡では,各指標で有意な経年変化はみられなかった。平均外気温との関係では,血圧およびFMDで有意な相関がみられたが(r=-0.659,r=0.539,ともにp<0.01),CAVIおよびABIでは有意ではなかった(r=-0.145,r=0.029)。


【結論】

本研究では,運動習慣をもつ肥満症患者においても,気温の低下に伴い血管内皮機能が悪化する結果となった。FMDが外気温と正の相関関係にあった要因として,血圧の影響が挙げられる。一般に,FMDと血圧は負の相関関係にあるとされる。今回,血圧は外気温と負の相関関係にあったが,低外気温環境下で末梢血管抵抗が増大することで血圧上昇を引き起こし,それに伴い血管内皮機能が障害され,FMDが悪化したと考えられる。一方,CAVIやABIでは外気温の変化に伴う変動はみられなかったが,その要因として,CAVIやABIは動脈の器質的な変化を捉えるものであり,その変化はFMDよりも緩やかであることが考えられる。運動療法の効果判定など臨床評価の際には,このような各動脈硬化指標の特徴を考慮しなければならない。