The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-01] ポスター(教育)P01

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-01-2] 入学時の学生の心理特性と学力の関連性について
学生調査の結果の分析と初年次教育の検討

大寺 健一郎 (宮崎リハビリテーション学院)

Keywords:学生調査, 心理特性, 初年次教育

【はじめに,目的】

当学院では,平成28年度より初年次教育の基本調査として,新入生を対象に学生調査を実施している。本研究では,この調査の前段階で実施した予備調査の結果を基に,学生の心理特性と学力に関連性があるのか分析し,一定の知見を得たので報告する。

【方法】

平成27年度に当学院に入学した学生34名(男子18名・女子16名)に予備調査を実施した。調査項目は,学力調査(学力)を理系科目である物理,化学,生物,数学,心理特性調査(心理特性)をSTAI(状態-特性不安検査・特性不安のみ使用),RQ(レジリエンス指標)テスト(感情調整力,衝動調整力,楽観力,原因分析力,共感力,自己効力感,リーチアウト力=働きかける力の7つの能力を点数化),コーピング尺度とした。これらの点数の関連性を,標準化した偏相関係数で分析した。また初年次の学年末に実施した解剖学・生理学・運動学の業者模擬試験(模試)の点数についても,前述と同様に心理特性との関連性を分析した。統計学的分析には統計解析ソフトR3.3.1を使用し,有意水準はp=0.05とした。

【結果】

心理特性と学力との偏相関係数をみると,STAIは化学で-0.447(p<0.05),生物で-0.455(p<0.05),RQテストでは,生物と自己効力感で-0.624(p<0.01),生物とリーチアウト力で0.564(p<0.01),コーピング尺度では,化学と問題焦点型で-0.482(p<0.05)となった(結果①)。心理特性と模試では,STAIは有意な相関はなかったが,RQテストは解剖学と衝動調整力で0.501(p<0.05),運動学と衝動調整力で0.511(p<0.05),コーピング尺度では,解剖学と回避・逃避型で0.539(p<0.05),運動学と回避・逃避型で0.455(p<0.05)となった(結果②)。

【結論】

結果①から,心理特性と学力の関連性を示したのは化学と生物であり,不安が少なく苦手を克服しようとする心理特性であるほど成績は良い傾向を示した。特に生物では,学力に自信が持てないほど外への働きかけで解決しようとする傾向を示している。また化学では,ストレスの原因にこだわらないほど成績は良い傾向となっている。次に結果②の心理特性と模試との関連性では,解剖学と運動学において,ストレスを柔軟に回避し,衝動的な心理をコントロールできるほど成績は良い傾向を示した。以上の分析から初年次の学習指導として,学力の程度によらず,苦手としている教科に粘り強く取り組む学習習慣の習得や,いつでも学生の質問を受けられる,また学生同士や教員との協同学習が可能な学習環境の整備,入学当初の心理的サポートが重要であることが示唆された。今後は引き続き初年次教育の基礎調査として,学生の心理特性と学力を時系列で分析し,学習指導はもちろん心理面のサポートについても検討し,特に不安や衝動的心理のコントロールが必要な学生のメンタルケアも視野に入れた実践指導を,学習の補助として取り入れていきたい。