[P-ED-01-5] 基礎実習が理学療法士への意欲に及ぼす影響
キーワード:意欲, 基礎実習, 理学療法学生
【はじめに,目的】
臨床実習で学生は,多くのことを経験し,自己効力感を高めつつ成長していく。一方では,自らの能力を発揮できずに終えてしまう学生も存在する。近年,理学療法士養成校の臨床実習における実習前後の自己効力感などの経時的変化に対する調査は多数報告されている。しかし,学生の意欲に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,4年制課程の理学療法士養成校に在籍する1年生を対象に,量的に分析が可能な「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」という理学療法士への意欲が基礎実習前後でどのように変化したかを明らかにすることで,学生へのフォローやキャリア意識を高める対策を考える一助とすることである。ここでの意欲とは,現在の理学療法士になりたい度と定義する。
【方法】
対象は,本学理学療法学科に入学した1年生51名(男性24名,女性27名)とした。1年生の基礎実習は,9月に3日間行われている。その基礎実習前後で,理学療法士への意欲の変化について「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」という質問を百分率で示してもらった。次に,基礎実習経験後,理学療法士という職業に対する気持ちの変化を自由回答形式で記述を求め回収した。アンケート分析方法は,t検定を用いた。
【結果】
基礎実習前後における「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」は,実習前は82.8±14.6%(平均±標準偏差),実習後には87.6±20.5%となり,基礎実習後に有意に向上した(p=0.015)。意欲が向上した学生の比率は29名(54.9%),変化のない学生は15名(29.4%),低下した者は7名(13.7%)であった。理学療法士への意欲が高まった学生は,実習指導者との良好な関係性や患者様からの励ましやお礼などを言われた体験があった。一方,5名(9.8%)は進路変更を視野に入れた回答であった。
【結論】
本学では9月からの基礎実習を鑑み,医療専門職に相応しい礼節を学修目的として,夏休みにボランティア体験を行っている。このような準備を講じているが,「本当に自分にできるのか」や「思っていた理学療法士像と違った」など意欲が低下した学生も認められた。梶田は,プラスの体験をして自己効力感が高まることによりアイデンティティが形成され,なりたい自分と現在の自分との差を感じ,そのギャップを埋めるために意欲が向上すると述べている。また,それとは逆に,マイナス体験により自己効力感が低下するとアイデンティティが崩壊し,学習の意味を見失うことによって意欲が低下するとも報告している。意欲が向上した学生は今後もさらに意欲を維持・向上できる促しが必要であるが,意欲の変化のないあるいは低下した学生への対応が今後の課題であると考える。進路や将来に不安を抱く学生は低学年のうちに,キャリア意識を高める対策を講じる必要があり,学生の多様性を理解しながら個々の指導・援助,相談等の充実を図ることが大切であると考える。
臨床実習で学生は,多くのことを経験し,自己効力感を高めつつ成長していく。一方では,自らの能力を発揮できずに終えてしまう学生も存在する。近年,理学療法士養成校の臨床実習における実習前後の自己効力感などの経時的変化に対する調査は多数報告されている。しかし,学生の意欲に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,4年制課程の理学療法士養成校に在籍する1年生を対象に,量的に分析が可能な「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」という理学療法士への意欲が基礎実習前後でどのように変化したかを明らかにすることで,学生へのフォローやキャリア意識を高める対策を考える一助とすることである。ここでの意欲とは,現在の理学療法士になりたい度と定義する。
【方法】
対象は,本学理学療法学科に入学した1年生51名(男性24名,女性27名)とした。1年生の基礎実習は,9月に3日間行われている。その基礎実習前後で,理学療法士への意欲の変化について「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」という質問を百分率で示してもらった。次に,基礎実習経験後,理学療法士という職業に対する気持ちの変化を自由回答形式で記述を求め回収した。アンケート分析方法は,t検定を用いた。
【結果】
基礎実習前後における「現在の理学療法士になりたい度は?(%)」は,実習前は82.8±14.6%(平均±標準偏差),実習後には87.6±20.5%となり,基礎実習後に有意に向上した(p=0.015)。意欲が向上した学生の比率は29名(54.9%),変化のない学生は15名(29.4%),低下した者は7名(13.7%)であった。理学療法士への意欲が高まった学生は,実習指導者との良好な関係性や患者様からの励ましやお礼などを言われた体験があった。一方,5名(9.8%)は進路変更を視野に入れた回答であった。
【結論】
本学では9月からの基礎実習を鑑み,医療専門職に相応しい礼節を学修目的として,夏休みにボランティア体験を行っている。このような準備を講じているが,「本当に自分にできるのか」や「思っていた理学療法士像と違った」など意欲が低下した学生も認められた。梶田は,プラスの体験をして自己効力感が高まることによりアイデンティティが形成され,なりたい自分と現在の自分との差を感じ,そのギャップを埋めるために意欲が向上すると述べている。また,それとは逆に,マイナス体験により自己効力感が低下するとアイデンティティが崩壊し,学習の意味を見失うことによって意欲が低下するとも報告している。意欲が向上した学生は今後もさらに意欲を維持・向上できる促しが必要であるが,意欲の変化のないあるいは低下した学生への対応が今後の課題であると考える。進路や将来に不安を抱く学生は低学年のうちに,キャリア意識を高める対策を講じる必要があり,学生の多様性を理解しながら個々の指導・援助,相談等の充実を図ることが大切であると考える。