第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-03] ポスター(教育)P03

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-03-4] 卒業前教育としてコミュニケーション能力を醸成する意義

松崎 秀隆1,2, 吉村 美香1,2, 原口 健三2, 森田 正治2, 高嶋 幸男2 (1.福岡国際医療福祉学院, 2.国際医療福祉大学大学院)

キーワード:コミュニケーション能力, プロフェッショナリズム, 指定規則

【はじめに,目的】保健医療教育について議論する際,その教育の質は学生の成長過程(技術や能力)に向けられることが多い。そこで,著者らは先行研究において理学療法士(以下,PT)の質に着目し,実習指導における学生に対する不当待遇(medical student abuse)を調査,報告してきた。PTの質については,多くの解釈が存在する。たとえば,コミュニケーション能力も重要なPTの資質とされる。しかし,そもそもPTが卒業前にコミュニケーション能力について,学ぶ機会があっただろうか。PTの卒業前教育では,理論的にコミュニケーション能力を学ぶための教育は指定規則にも含まれておらず,系統的に実施されていない。しかし,PTの実践過程では,高いコミュニケーション能力やプロフェッショナリズムが求められ,学生は先輩PTや教員をロールモデルとして学ぶことも少なくない。そこで今回,卒業前教育として醸成されるべきコミュニケーション能力獲得に向けた,教育指導方法を提言したい。

【方法】PT学科,第1学年前期講義にて,コミュニケーション論(全15回)として実施。講義内容は,1.コミュニケーションの概念を学ぶ(講義形式)。2.コーチングを学ぶ(協同学習)。3.絵画を用いて観察力およびコミュニケーション能力を学ぶ(協同学習)。4.自身の考えを他者へ口頭および文章にて説明する重要性を学ぶ(協同学習)とした。終了後には感想文,および各自が絵画から連想した物語を提出させた。

【結果】コミュニケーション能力やプロフェッショナリズムなど,主観的なものを数値化し,評価することは非常に難しい。しかし,授業後の感想から,卓越性や人間性,利他主義などを踏まえたプロフェッショナリズムに起因する言葉が抽出された。一方,自身の思考を文章化(物語)することは難しく,苦慮していることも分かった。

【結論】指定規則とは,学生の到達目標を明確するために必要な科目,学習項目,取得に要する時間(単位)を構造化したものである。つまり,指定規則には,PTに必要とされる能力は全て取り入れられているはずである。しかし,この中にコミュニケーション能力やプロフェッショナリズムの醸成に関する記載はない。おそらく,昔は非正規の指定規則として問題がなかったと考えられる。では,現在の指定規則に問題はないのか。教育指導方法は時代背景を考慮し変えていかなければならない。アクティブラーニングやICT教育などの普及は良い例である。あらゆる能力や知識について,系統的に教育し卒業させる重要性は,単発的に指導し卒業させるものとは大きく異なる。これまでの知識評価を重視した教育とは別に,コミュニケーション能力を含めた学生の態度や姿勢,言語技術教育についても,十分に配慮した教育指導方法の構築が求められる時代と考えている。