The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-03] ポスター(教育)P03

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-03-5] 本校学生における職業的アイデンティティの今年度の傾向と経年的変化について

佐野 純平, 山際 清貴, 原田 憲二, 小関 博久 (東都リハビリテーション学院)

Keywords:職業的アイデンティティ, 経年的変化, 学生指導

【はじめに,目的】

前回,筆者らは青年期における職業的アイデンティティ(VI)の形成と学生指導に関して一考察を述べたが,最終学年への調査および経年的な変化の言及には至らなかった。今回我々は,VIの形成における今年度の傾向および昨年度からの経年的変化を調査したので報告する。


【方法】

対象は本学昼間部1~4年生で,昨年度からの追試が可能であった190名(男性130名,女性60名,平均年齢19.6歳)とした。方法は,大橋らが作成した「職業的アイデンティティの形成度に関する質問紙」を用いた。この質問紙は20項目の質問で構成されており,各項目に対し「非常に当てはまる」から「全く当てはまらない」の7件法で回答を求めるものである。また,各項目を「PT選択への自信」「自分のPT観の確立」「PTとして必要とされることへの自負」「社会貢献への志向」の4因子に分類し,因子別スコアと今年度の総計を分析した。分析には一元配置分散分析を用い,有意水準は5%とした。


【結果】

今年度の総計は,他学年と比較して3年生のみが有意に低かった(P<0.01)。また,因子別スコアでは「PT選択への自信」については1年生のみが有意に高く(P<0.01),2~4年生に有意差は認められなかった。「自分のPT観の確立」および「PTとして必要とされることへの自負」については,他学年と比較して3年生のみが有意に低かった(共にP<0.01)。「社会貢献への志向」については,各学年間で有意差は認められなかった。なお昨年度から今年度にかけての経年的変化については,総計および因子別スコアの両者共に有意差は認められなかった。


【結論】

今年度の総計および「自分のPT観の確立」,「PTとして必要とされることへの自負」については他学年と比較して3年生が有意に低かった。これは,2年生次の昨年度においても同様の結果を示したことから,いわば「学級の性質」であることがうかがえる。しかし,その性質を有するに至った要因については不明であり,さらなる調査の必要がある。1年生の「PT選択への自信」が高値を示したのは昨年度の1年生と同様の傾向であり,今年度においても新入生の入学後の満足感が表現されていると考えた。「社会貢献への志向」に関して学年間で有意差が認められなかったことも,昨年度と同様の傾向である。全学年にわたり高値を示していることから,本校に入学した学生においては,PTとして患者に貢献したいという思いに関しては学年の隔てなく有していることが確認できた。総計および因子別スコアには,経年的変化が認められなかった。これは前回報告した,VIは高学年になるに連れて漸増的に形成されるものではなく流動的に形成されるということを裏付ける結果となった。同時に,前述した「学級の性質」といえるものは経年的に容易に変化しないことが示唆された。今後は複数年にわたる調査を行い,4年間という学生生活全体を通してVIがどのように変化するかを検討したい。