[P-ED-05-2] クリニカルクラークシップは臨床実習の指導方法として有用か
キーワード:クリニカルクラークシップ, 臨床実習, アンケート
【はじめに,目的】
日本理学療法士協会の臨床実習教育の手引き第5版(2007年)では,臨床実習方法としてクリニカルクラークシップ(CC)が強く推奨されている。CCの本質的概念は診療参加による学生の成長を促すこととされ,学生は指導者の助手として見学し,模倣を繰り返し,実施へと展開する。CCは徐々に広まりつつあるも,スタンダートとしては定着していない。我々は2007年よりCCによる臨床実習の準備を始め,現在ではCCを原則とした指導を行っている。そこで今回,CCの有用性や課題を検証するため実施したアンケートの調査結果を報告する。
【方法】
当部署でのCCによる臨床実習に,平成27年4月から平成28年8月にかけて関与した9名を対象に,アンケート調査を実施した。対象者にアンケートを配布後,回収場所を指定して対象者が提出した。対象者は理学療法士7名,作業療法士1名,言語聴覚療法士1名,平均経験年数は8.4年,スーパーバイザー(SV)を務めた回数は1回4名,2~4回2名,5回以上3名であった。なお,当部署の臨床実習環境は,実習対象となる主な診療科が脳神経外科,整形外科,循環器科,内科,外科,腎臓内科であり,平成27年度の平均在院日数は9.8日であった。アンケートは①自分が学生の頃にCCによる実習を受けた経験があるか,②従来型とCCはSVにとってどちらが良いと思うか,③従来型とCCは学生にとってどちらが良いと思われるか,④従来型と比べてCCの良いところ,⑤従来型と比べてCCの課題は何か,の設問で構成した。②と③は5段階のLikert scaleで回答し,1点CC/3点どちらとも言えない/5点従来型とし,2点と4点はそれぞれ中間位とした。④と⑤は自由記載とし,KJ法を用いて集計した。
【結果】
対象者全員よりアンケートの回答を得た。①は全員が『ない』と回答した。②は1点3名,2点4名,3点1名であり,SVにとってCCの方が良い回答が多かった。③は1点1名,2点2名,3点2名,4点2名と,学生にとって従来型とCCのどちらが良いと思われるかは,拮抗した結果であった。④で多かったものは,『SVの指導と業務負担が減る』6名,『学生が実践に近い経験を積める』3名,『患者の負担軽減が図れる』2名,『学生が多くの患者の経験を積める』2名,であった。⑤で多かったものは,『SVと学生の介入配分の調整が難しい』4名,『SVの介入の質の低下の危惧がある』3名,『学生の患者に触れる時間が少なくなる可能性がある』3名,『学生が受動的になる可能性がある』3名,であった。
【結論】
臨床実習の指導方法として,SVにとってCCは従来型よりも有用であることが示唆された。日常業務に携わりながらSVを務めるにあたり,CCは効率的な指導方法であると考えられた。一方で,SVの指導スキルが求められる課題が挙げられた。今回はSVへの小規模アンケートの調査報告に留まるが,養成校や学生の実態調査と分析などを含めて,CCを発展させていくための検証が必要である。
日本理学療法士協会の臨床実習教育の手引き第5版(2007年)では,臨床実習方法としてクリニカルクラークシップ(CC)が強く推奨されている。CCの本質的概念は診療参加による学生の成長を促すこととされ,学生は指導者の助手として見学し,模倣を繰り返し,実施へと展開する。CCは徐々に広まりつつあるも,スタンダートとしては定着していない。我々は2007年よりCCによる臨床実習の準備を始め,現在ではCCを原則とした指導を行っている。そこで今回,CCの有用性や課題を検証するため実施したアンケートの調査結果を報告する。
【方法】
当部署でのCCによる臨床実習に,平成27年4月から平成28年8月にかけて関与した9名を対象に,アンケート調査を実施した。対象者にアンケートを配布後,回収場所を指定して対象者が提出した。対象者は理学療法士7名,作業療法士1名,言語聴覚療法士1名,平均経験年数は8.4年,スーパーバイザー(SV)を務めた回数は1回4名,2~4回2名,5回以上3名であった。なお,当部署の臨床実習環境は,実習対象となる主な診療科が脳神経外科,整形外科,循環器科,内科,外科,腎臓内科であり,平成27年度の平均在院日数は9.8日であった。アンケートは①自分が学生の頃にCCによる実習を受けた経験があるか,②従来型とCCはSVにとってどちらが良いと思うか,③従来型とCCは学生にとってどちらが良いと思われるか,④従来型と比べてCCの良いところ,⑤従来型と比べてCCの課題は何か,の設問で構成した。②と③は5段階のLikert scaleで回答し,1点CC/3点どちらとも言えない/5点従来型とし,2点と4点はそれぞれ中間位とした。④と⑤は自由記載とし,KJ法を用いて集計した。
【結果】
対象者全員よりアンケートの回答を得た。①は全員が『ない』と回答した。②は1点3名,2点4名,3点1名であり,SVにとってCCの方が良い回答が多かった。③は1点1名,2点2名,3点2名,4点2名と,学生にとって従来型とCCのどちらが良いと思われるかは,拮抗した結果であった。④で多かったものは,『SVの指導と業務負担が減る』6名,『学生が実践に近い経験を積める』3名,『患者の負担軽減が図れる』2名,『学生が多くの患者の経験を積める』2名,であった。⑤で多かったものは,『SVと学生の介入配分の調整が難しい』4名,『SVの介入の質の低下の危惧がある』3名,『学生の患者に触れる時間が少なくなる可能性がある』3名,『学生が受動的になる可能性がある』3名,であった。
【結論】
臨床実習の指導方法として,SVにとってCCは従来型よりも有用であることが示唆された。日常業務に携わりながらSVを務めるにあたり,CCは効率的な指導方法であると考えられた。一方で,SVの指導スキルが求められる課題が挙げられた。今回はSVへの小規模アンケートの調査報告に留まるが,養成校や学生の実態調査と分析などを含めて,CCを発展させていくための検証が必要である。