第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-06] ポスター(教育)P06

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-06-1] 臨床実習における実習生の理学療法への参加度と主体性・心理的側面との関係

武井 圭一1, 國澤 洋介2, 岩田 一輝1, 鈴木 翔太1, 山岸 宏江3, 山本 満3 (1.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部, 2.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 3.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科)

キーワード:臨床実習, クリニカル・クラークシップ, 参加

【はじめに,目的】当院の臨床実習は,クリニカル・クラークシップ(CCS)の形態で行っている。CCSは,実習生の担当症例を限定するのではなく,実習指導者(SV)が担当しているすべての患者に対して助手として“できること”から参加するため,実習後期ほど参加度が増加することが予測される。本研究の目的は,臨床実習における実習生の参加度と主体性,心理的側面の経時的変化,および参加度と各項目間の関連を明らかにし,臨床実習における実習生の診療参加の意義を検討することである。

【方法】対象は,2015年4月から2016年10月までに当院で7週間以上の臨床実習を行った理学療法学科学生12名とした。調査は,実習生の診療場面への参加度と主体性,心理的側面に関して自記式アンケート調査を1-2週・3-4週・5-6週・7-8週の2週間ごとに行った。質問内容は,参加度は「診療場面にどれくらい参加できていますか」,主体性は「本実習に対して主体的に取り組んでいますか」,心理的側面は「助手として参加することで担当患者の役に立っていると思いますか」(自己有用感),「本実習を楽しんでいますか」(楽しさ),「本実習を通して成長していると思いますか」(自己成長感)とした。回答は,0%を“全く○○ない”,100%を“可能な限り○○している”として11段階で評価した。なお,すべての項目は直近1週間における実習内容について質問した。分析は,各項目の経時的変化についてFreedman検定を行い,各時期における参加度と他項目の関連についてSpearmanの順位相関分析を行った。統計解析には,IBM SPSS Ver.22を使用し,有意水準を5%とした。

【結果】経時的変化の結果(中央値),参加度は50%・70%・80%・80%,主体性は70%・70%・70%・80%,自己有用感は60%・65%・70%・85%,楽しさは90%・80%・80%・90%,自己成長感は70%・70%・75%・80%であり,参加度・主体性・自己有用感に有意な向上を認めた。参加度と他項目間の関連の結果,1-2週は自己有用感(rs=0.68),3-4週は主体性(rs=0.59)・自己有用感(rs=0.86)・楽しさ(rs=0.65)・自己成長感(rs=0.65),5-6週は自己有用感(rs=0.79),7-8週は主体性(rs=0.58)・自己有用感(rs=0.90)・自己成長感(rs=0.71)で有意な相関を認めた。

【結論】参加度・主体性・自己有用感は統計学的有意に向上し,特に自己有用感は全期間を通して参加度と有意な相関を認めた。自己有用感とは,他者との関係の中で自分の存在を価値あるものとして捉える感覚であり,他者に対して自分が役に立つ行動をする“貢献”や,他者から自分の行動や存在が認められる“承認”等で構成される。CCSの形態で実習生が診療場面に参加することは,患者との関係性を築いて貢献する機会や時には承認される機会を得て,自己有用感を向上することが示唆された。