[P-ED-06-5] 臨床実習指導者が考える臨床実習指導者の理想像
―臨床経験年数群での比較―
キーワード:臨床実習指導者, 理想像, 臨床経験年数
【はじめに,目的】
理学療法士の卒前教育である臨床実習において,より良い教育には,質の良い臨床実習指導者(以下,指導者と略す)が必要である。指導者の質の向上のためには,良い指導者の特徴を検討する必要があると考えた。そこで今回,指導者が考える指導者の理想像の把握及び臨床経験年数での理想像の違いの有無を目的に調査・分析を行った。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。今回は,41問の設問の中から自由記載により「理想とする指導者像」で得られた回答について調査・分析を行った。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適切と判断されたものは除外した。自由記載の回答はテキスト形式にデータ化し,樋口らの開発したフリーソフトウェア「KH Coder」を利用して,テキストマイニングの手法を用いて,頻出語抽出と階層的クラスター分析を行った。臨床経験年数を0~5年目(A群),6~10年目(B群),11~15年目(C群),16年目以上(D群)に分類し,臨床経験年数群間での差についてカイ二乗検定を行った。有意水準は1%未満とした。
【結果】
回収部数は790名,有効回答数は689名(87.2%)であった。その内479名の臨床実習指導の経験者を分析対象とした。全体では,7,660語が抽出された。最頻150語を抽出した結果,「学生」,「指導」,「出来る」,「実習」,「能力」が上位5番目までの最頻語であった。クラスター分析(Ward's Method,出現回数30回以上の語を対象)を行った結果,「臨床の楽しさを伝える」,「能力に合わせた学生指導が出来る」,「患者のことを一緒に考える」の3つのクラスターに分類された。
臨床経験年数はA群181名,B群:164名,C群80名,D群54名に分類し,最頻語での差の有無を検討した結果,全ての回答では群間に差が認められた(P<0.01)。しかし,全体での最頻語の上位3語の「学生」「指導」「出来る」のみでは群間に差が認められなかった(P=0.508)。
【結論】
指導者が考える指導者の理想像を把握しておくことで,より良い指導を行うヒントがあると考える。調査の結果,「臨床の楽しさを伝える指導者」,「能力に合わせた学生指導が出来る指導者」,「患者のことを一緒に考える指導者」が理想像と考えられていた。臨床経験年数による差は,一部では認められなかったが,全体では差が認められたことより,共通性はあるが臨床経験年数による指導の変化が生じる可能性が考えられた。良い指導者の特徴を検討し,理解する事は,より良い理学療法士教育に役立ち,理学療法士の質の向上に繋がると考える。また,臨床経験年数別の差をみることで,指導者の特徴をより詳しく分析する事や指導者教育に繋がるとも考える。
理学療法士の卒前教育である臨床実習において,より良い教育には,質の良い臨床実習指導者(以下,指導者と略す)が必要である。指導者の質の向上のためには,良い指導者の特徴を検討する必要があると考えた。そこで今回,指導者が考える指導者の理想像の把握及び臨床経験年数での理想像の違いの有無を目的に調査・分析を行った。
【方法】
調査期間は平成25年8月から平成26年3月までの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択回答もしくは自由記載とした。今回は,41問の設問の中から自由記載により「理想とする指導者像」で得られた回答について調査・分析を行った。質問紙の回収後は,回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適切と判断されたものは除外した。自由記載の回答はテキスト形式にデータ化し,樋口らの開発したフリーソフトウェア「KH Coder」を利用して,テキストマイニングの手法を用いて,頻出語抽出と階層的クラスター分析を行った。臨床経験年数を0~5年目(A群),6~10年目(B群),11~15年目(C群),16年目以上(D群)に分類し,臨床経験年数群間での差についてカイ二乗検定を行った。有意水準は1%未満とした。
【結果】
回収部数は790名,有効回答数は689名(87.2%)であった。その内479名の臨床実習指導の経験者を分析対象とした。全体では,7,660語が抽出された。最頻150語を抽出した結果,「学生」,「指導」,「出来る」,「実習」,「能力」が上位5番目までの最頻語であった。クラスター分析(Ward's Method,出現回数30回以上の語を対象)を行った結果,「臨床の楽しさを伝える」,「能力に合わせた学生指導が出来る」,「患者のことを一緒に考える」の3つのクラスターに分類された。
臨床経験年数はA群181名,B群:164名,C群80名,D群54名に分類し,最頻語での差の有無を検討した結果,全ての回答では群間に差が認められた(P<0.01)。しかし,全体での最頻語の上位3語の「学生」「指導」「出来る」のみでは群間に差が認められなかった(P=0.508)。
【結論】
指導者が考える指導者の理想像を把握しておくことで,より良い指導を行うヒントがあると考える。調査の結果,「臨床の楽しさを伝える指導者」,「能力に合わせた学生指導が出来る指導者」,「患者のことを一緒に考える指導者」が理想像と考えられていた。臨床経験年数による差は,一部では認められなかったが,全体では差が認められたことより,共通性はあるが臨床経験年数による指導の変化が生じる可能性が考えられた。良い指導者の特徴を検討し,理解する事は,より良い理学療法士教育に役立ち,理学療法士の質の向上に繋がると考える。また,臨床経験年数別の差をみることで,指導者の特徴をより詳しく分析する事や指導者教育に繋がるとも考える。