第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-07] ポスター(教育)P07

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-07-5] 「臨床実習指導で困ったこと」におけるテキストマイニングを用いた客観的分析

二宮 省悟1, 濵田 輝一1, 吉村 修2, 楠元 正順2 (1.九州看護福祉大学, 2.医療法人社団慶仁会川﨑病院)

キーワード:実習指導, 困ったこと, テキストマイニング

【はじめに,目的】
我々は,H23年度から臨床実習指導体制の構築の検討を目的に質問紙調査を行い,当学会にて発表してきた。現状は,臨床実習指導経験者(以下,指導者)は自身の学生時代や就職後の体験的・経験的教育を行っていることが把握できた。昨年は,「実習で困ったこと」について臨床経験年数により意識の違いがあるのかを知ることを目的に臨床経験年数を4群に分け,比較検討し発表した。今回は得たデータの全体像を,テキストマイニングを用いて客観的に把握することを目的とする。


【方法】

調査期間はH25年8月からの8か月間。42施設の理学療法士を対象として任意に回答要請し,質問紙調査を行った。回答方法は無記名で,選択肢質問と自由記載にて「困ったこと」について分析した。自由記載の回答はテキスト形式にデータ化し,KHCoderを用いてテキストマイニングを行った。分析した内容は,頻出語抽出と階層的クラスター分析及び共起ネットワークの作成とした。さらにKruskalの非計量多次元尺度構成法(以下,MDS)による分析を加え,図表化した。


【結果】

回収部数は790名,有効回答数は689名(87.2%)であった。その内479名(臨床経験年数8.5±6.1年)の臨床実習指導の経験者を分析対象とした。指導に「困った」と回答した者は,434名(90.6%)であった。困った内容の第1位は,「学生の資質の問題」(回答総数に対する%:23.6%),第2位は「指導に自信がない」(20.7%),第3位は「学生の問題がつかみにくい」(18.5%)であった。自由記載では8299語が抽出された。データより最頻150語を抽出した結果,「学生(150)」,「指導(138)」,「レポート(74)」,「分かる(74)」,「実習(59)」,「提出(50)」,「言う(40)」,「理解(34)」,「患者(33)」,「自分(30)」が上位10番目までの最頻語であった。その後,併合水準(非類似度)を算出した上で,階層的クラスター分析(ユークリッド距離によるWard's methodを使用:出現回数15回以上を対象)を行った。その結果,4つのクラスターに分類された。またJaccard係数を算出し,単語間のネットワーク図を描画した共起ネットワーク(サブグラフ検出:媒介)からは,「学生」「指導」「分かる」を中心として,特徴的な頻出語との強い繋がりを示した(Node18,edge60,Density0.392,Min.Jaccard0.05)。さらに抽出語を用いてMDSを行ったところ,幾何的図形により単語の関係性を網羅的に示すことができた。


【結論】

今回,指導者の指導に際し,「困ったこと」の現状が把握できた。臨床実習指導者の共通の「困ったこと」としては主に「レポート指導」に帰着していることも判明した。このことは従来いわれている問題点と合致するものである。しかし,レポート課題を指導のツールに用いていることが多く,未だに解消できていない現実がある。今後も臨床実習について積極的に分析し,その対応策を考える必要性が示唆された。