第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-08] ポスター(教育)P08

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-08-5] 臨床実習の指導に関する検討
学生の性格特性を知る事は指導上有効か

佐藤 一成1,2, 高橋 尚明2 (1.医療法人新さっぽろ脳神経外科病院, 2.北海道医療大学大学院リハビリテーション科学研究科)

キーワード:臨床実習生, 性格特性, 臨床実習指導者

【はじめに】

理学療法教育は,認知領域(想起・解釈・問題解決),精神運動領域(技能),情意領域(態度)の3つの領域に分類されている。この中で,情意領域においては客観的な評価が難しく,その指導方法も確定しているものはない。また,情意領域に問題があると臨床実習指導者(以下,指導者)との関係のみならず臨床実習そのものの継続が難しくなる為,指導者と学生が良好な人間関係を構築する必要があり,指導者が如何に学生の性格を理解していくかも重要となる。そこで本研究は,臨床実習の指導者が学生の性格特性を把握することが臨床実習の指導上有効かを調査し検討した。

【方法】

対象は,北海道医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科に在籍し総合実習(8週間)を控えた4年生(以下,学生)46名およびその学生の臨床実習施設の指導者40施設45名。

方法は,①学生に臨床実習IV開始前に矢田部ギルフォード性格検査(以下,YG性格検査)を実施,②YG性格検査結果を臨床実習5週目に指導者・学生に提示し性格特性について共有,③2・4・6・8週目に,「臨床実習が円滑に進んでいるか」についてVisual Analogue Scale(以下,VAS)測定を学生と指導者に対して実施,同時に1週間の指導時間を記入,④臨床実習4週目終了時および最終週に情意面の目標到達度に関するルーブリック評価を実施,⑤臨床実習終了時に指導者及び学生に性格特性把握に関するアンケートを実施,⑥YG性格検査の提示が臨床実習指導に有効であったか,開示前後に指導方法や内容に変化が生じたかを確認。

以上の調査結果を検討した。

【結果】

YG性格検査の分析結果提示前後に関わらず,2Wごとに指導者のVASの平均値に向上がみられた。学生視点の「学生と指導者の関係」に関するVASの平均値において,4W目と6W目に変化はみられなかった。ルーブリック評価の結果では,殆どの項目で向上が認められた。指導者の70%がYG性格検査の分析結果を確認できたことが「有効」と回答した。学生の79%がYG性格検査の分析結果を指導者と共有したことは「有効ではない」と回答した。フィードバック時間は。指導者より学生の方が長く感じていた。指導者はYG性格検査結果の「総合所見」「情緒安定」「社会適応性」「社交性」について着目し,また,1日の総括フィードバックで多く活用していた。

【結論】

臨床実習指導において,指導者は性格特性を把握できたことは有効と回答した半面,「学生と指導者の関係」が良好のまま保たれていたにも関わらず,多くの学生が「有効ではない」と回答しており,学生はYG性格検査結果提示を受けて指導者との関係性や指導内容に大きな変化を期待していたのではないかと考えられた。