[P-ED-09-3] 理学療法学生におけるストレス耐性と臨床実習成績の関連性について
Keywords:ストレス耐性, 臨床実習, メンタル不全
【はじめに,目的】
日本学生支援機構によると,高等専門教育機関においてメンタル不全の徴候を示す学生が著明に増加している。本校においても例外ではなく,年々増加している印象を受ける。メンタル不全の発症にはストレスが関与し,過度のストレスが重なり対処できない状態が続くことで,ストレス反応が生じてメンタル不全に陥ると報告されている。
理学療法学生においては,臨床実習でストレスが増加することが報告されている。したがって,臨床実習を円滑に遂行するためにはストレスに対処する力,つまりストレス耐性を有する必要がある。しかし,ストレス耐性と実習成績の関連性についての報告は少なく,不明な点が多い。
今回,我々は実習前教育の一助とするため,ストレス耐性と実習成績との関連性を調査したので報告する。
【方法】
対象は,本校理学療法学科の昼間部4学年54名(男性32名,女性22名,平均年齢21.7歳)とした。
方法は,2度にわたる臨床実習において総合評定が両者ともに合格だった41名を合格群,いずれかにおいて不可または成績保留であった13名を不可群とし,ストレス耐性を検定した。評価には,折津らが考案したストレス耐性度チェックリストを使用した。これは20項目の質問に対して,「いつも(4点)」「しばしば(3点)」「ときどき(2点)」「めったにない(1点)」の4件法で回答し,総得点によりストレス耐性を評価できる尺度である。
統計処理には,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
総得点に関しては,合格群が54.6点,不可群が54.7点であり,両群間に有意差は認められなかった(P=0.98)。項目別では「うらやましくなる」という1項目においてのみ,合格群が2.8点,不可群が3.1点で,有意な差を認めた(P=0.05)。
【結論】
臨床実習では強いストレスにさらされることから,ストレス耐性は実習の可否にも関与するという仮説のもと調査を行った。しかし,ストレス耐性と実習成績には有意な差は認められなかった。この理由として,今回不可群において評定が不可・保留となった主要因が資質面であったため,一般的なストレス要因とされる実習課題の増加,環境の変化に対処する力とは関連が低かったと考える。
一方,合格群に比べて不可群の学生で「うらやましくなる」頻度が有意に高いことが分かった。「うらやましい」とは,「他人の能力や状態をみて,自分もそうありたいとねたましく思うさま。」とされ,他人に目が向いている心理状態といえる。実習中では,他実習生の優れている点に目が向き,自身の内省に至らず修正すべき点の改善が不十分となる。また,自分を卑下して自己効力感の低下が生じて,実習の遂行にも問題が生じると考える。
実習では第一に担当症例と向き合い,指導者と相談しながら学生として最善の対応をすること,そのために自身の修正すべき点に着目し改善を目指すこと,以上の指導を実習前により強化していくことが望まれる。
日本学生支援機構によると,高等専門教育機関においてメンタル不全の徴候を示す学生が著明に増加している。本校においても例外ではなく,年々増加している印象を受ける。メンタル不全の発症にはストレスが関与し,過度のストレスが重なり対処できない状態が続くことで,ストレス反応が生じてメンタル不全に陥ると報告されている。
理学療法学生においては,臨床実習でストレスが増加することが報告されている。したがって,臨床実習を円滑に遂行するためにはストレスに対処する力,つまりストレス耐性を有する必要がある。しかし,ストレス耐性と実習成績の関連性についての報告は少なく,不明な点が多い。
今回,我々は実習前教育の一助とするため,ストレス耐性と実習成績との関連性を調査したので報告する。
【方法】
対象は,本校理学療法学科の昼間部4学年54名(男性32名,女性22名,平均年齢21.7歳)とした。
方法は,2度にわたる臨床実習において総合評定が両者ともに合格だった41名を合格群,いずれかにおいて不可または成績保留であった13名を不可群とし,ストレス耐性を検定した。評価には,折津らが考案したストレス耐性度チェックリストを使用した。これは20項目の質問に対して,「いつも(4点)」「しばしば(3点)」「ときどき(2点)」「めったにない(1点)」の4件法で回答し,総得点によりストレス耐性を評価できる尺度である。
統計処理には,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
総得点に関しては,合格群が54.6点,不可群が54.7点であり,両群間に有意差は認められなかった(P=0.98)。項目別では「うらやましくなる」という1項目においてのみ,合格群が2.8点,不可群が3.1点で,有意な差を認めた(P=0.05)。
【結論】
臨床実習では強いストレスにさらされることから,ストレス耐性は実習の可否にも関与するという仮説のもと調査を行った。しかし,ストレス耐性と実習成績には有意な差は認められなかった。この理由として,今回不可群において評定が不可・保留となった主要因が資質面であったため,一般的なストレス要因とされる実習課題の増加,環境の変化に対処する力とは関連が低かったと考える。
一方,合格群に比べて不可群の学生で「うらやましくなる」頻度が有意に高いことが分かった。「うらやましい」とは,「他人の能力や状態をみて,自分もそうありたいとねたましく思うさま。」とされ,他人に目が向いている心理状態といえる。実習中では,他実習生の優れている点に目が向き,自身の内省に至らず修正すべき点の改善が不十分となる。また,自分を卑下して自己効力感の低下が生じて,実習の遂行にも問題が生じると考える。
実習では第一に担当症例と向き合い,指導者と相談しながら学生として最善の対応をすること,そのために自身の修正すべき点に着目し改善を目指すこと,以上の指導を実習前により強化していくことが望まれる。