The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-11] ポスター(教育)P11

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-11-2] グループ担当制における理学療法治療成果およびグループ間格差の検証

邑口 英雄 (日高病院)

Keywords:グループ担当, 卒後教育, 回復期

【はじめに,目的】

医療機関等において理学療法士(以下PT)は一個人で主担当を務め目標設定や治療プラン等を決定し,またPT臨床実習では基本的理学療法を一個人で行えるレベルを到達目標としてきた経緯がある。しかし多くの医療機関が365日体制へと移行し,新卒PTが多数輩出される現状を鑑みるとPT一個人が担当を務め続けることは勤務体制や質の観点からも患者の不利益等に繋がる懸念がある。そこで当院では理学療法の均質化および卒後教育体制の充実等を目的としてグループ担当制を導入した。当院で規定したジョブグレードを基にPT複数名を1グループとし,グループ単位で方針決定や治療施行を担うこととした。本研究はグループ治療の成果とグループ間の差について検証することを目的とした。


【方法】対象は平成28年4月~9月に当院回復期リハ病棟を退棟した患者142名(76.8±12.2歳)とした。当該病棟を担当するPT13名を1グループ3~4名で4グループとした。グループメンバーはジョブグレードに偏りが無いよう配置し,リーダーは一定以上のジョブグレードを有する者1名が務めた。基本調査項目は平均PT経験年数,入棟時重症者率,自宅復帰率,実績調査項目は平均在棟日数,退棟時重症者改善率,FIM利得,FIM効率,実績指数とした。なお実績調査項目は転棟・転院者を除外した129名で検証した。統計方法は入棟時重症者率・退棟時重症者改善率はχ二乗検定およびFisherの直接確率検定,平均在棟日数・FIM利得・FIM効率・実績指数はKruskal Wallis検定およびSteel Dwass多重比較法により検証した。統計解析はR version 2.8.1を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】平均PT経験年数は各グループで7.3±3.2年,6.0±6.1年,4.3±3.5年,4.0±3.0年,リーダーは10.3±3.6年であった。各グループの担当患者数は32~41名,自宅復帰率は79.4%~93.9%,平均在棟日数は53.3~62.3日,入棟時重症者率は34.2~46.9%,退棟時重症者改善率は66.7~93.3%,FIM利得は23.1~33.4点,FIM効率は0.413~0.588点/日,実績指数は34.4~56.7であった。χ二乗検定,Fisherの直接確率検定,Kruskal Wallis検定より入棟時重症者率・退棟時重症者改善率・平均在棟日数・FIM利得・FIM効率・実績指数では有意差は認められなかった。Steel Dwass多重比較法より,2グループ間でFIM効率(p=0.026),実績指数(p=0.043)に有意差が認められた。


【結論】全ての実績調査項目で全グループ間での有意差は生じておらず,患者へ提供する理学療法の均質化が概ね図れていることが示唆された。2グループ間で有意差が生じた項目は在棟日数が関与しており患者重症度や疾患分布等の相違や退院調整等が要因と考えられるが,理学療法の技量による影響も考えられ今後精査が必要である。今後の理学療法の治療体制モデルや臨床教育体制モデルを考察する上で,グループ担当制の有用性を示した本研究の結果は一つの指針となり得る。