[P-ED-12-5] 理学療法士・作業療法士における臨床での倫理的対応に関する意識調査
Keywords:臨床倫理, 倫理的ジレンマ, 理学療法士・作業療法士
【はじめに,目的】
医療の現場では様々な倫理的問題が存在し,患者やその家族,医療従事者がジレンマを抱えていることは少なくない。しかしわが国の医療機関では,日常的な臨床倫理的介入やサポートはあまり行われていないのが現状である。そこで,リハビリテーション領域において倫理的問題やジレンマを理学療法士・作業療法士がどのように捉え,解決しているかについて意識調査を行い,倫理的問題の解決へ繋げる体制づくりのための基礎的資料を得ることを目的とした。
【方法】
対象:2015年3月時点で熊本市内の医療機関60施設で勤務する理学療法士380名,作業療法士282名,合計662名を対象とした。医療機関の選定条件は,倫理的問題が発生した際に話し合える体制が作れることを想定し,3名以上の理学療法士もしくは作業療法士が在籍する病院とした。
調査方法:臨床倫理に関する認識やジレンマの感じ方等を調査項目とした無記名自記式質問票(以下,アンケート)を作成した。質問項目は,①職種,②経験年数,③勤務病院の病床数,④主に関わるリハビリテーション病期,⑤倫理に関するイメージ,⑥臨床倫理に関する理解,⑦日常での倫理的ジレンマの内容・対処法の選択回答式を主とした12項目である。回収したデータは単純集計ならびにカイ二乗検定を用いた解析を行い,有意水準5%とした。
【結果】
アンケートの回答総数は589件であり,内訳は55施設,理学療法士339名,作業療法士250名,回答率88.9%であった。日常で倫理的ジレンマを感じた経験があると答えたセラピストは67%であり,ないと答えたものは28%であった。ジレンマの内容としては,「治療・ケアにおける医療従事者間の意見の不一致」が最も多く,「治療方針に関する迷い」,「患者・家族とのコミュニケーションにおける問題」等が続いた。臨床倫理に関する認識については,言葉を知っているセラピストは63%だったものの,言葉の意味まで知っているものは18%であった。また臨床倫理の意味を知っているセラピストは,ジレンマを感じ易い傾向にあった。経験年数や職種によってもジレンマの感じ方に違いがあるといった興味深い結果も得られた。
【結論】
倫理的問題の認識には,個人の倫理観,価値観や教育背景,職場の同僚・上司などの指導や患者との体験,キャリア,施設の特性が影響を与えている可能性があり,特に教育背景が認識の差を招くと言われている。本研究でも,「臨床倫理」の概念を認識しているセラピストは,倫理的感受性が高く,自覚的に倫理問題に向き合っている可能性があると考えられた。今後は,より一層リハビリテーション領域に「臨床倫理」の概念を広めることで,患者や家族,医療従事者の日々のストレスを軽減させ,患者の身体機能や日常生活の改善,QOL向上へ向けた円滑なサポートができる体制が作られて行く必要がある。
医療の現場では様々な倫理的問題が存在し,患者やその家族,医療従事者がジレンマを抱えていることは少なくない。しかしわが国の医療機関では,日常的な臨床倫理的介入やサポートはあまり行われていないのが現状である。そこで,リハビリテーション領域において倫理的問題やジレンマを理学療法士・作業療法士がどのように捉え,解決しているかについて意識調査を行い,倫理的問題の解決へ繋げる体制づくりのための基礎的資料を得ることを目的とした。
【方法】
対象:2015年3月時点で熊本市内の医療機関60施設で勤務する理学療法士380名,作業療法士282名,合計662名を対象とした。医療機関の選定条件は,倫理的問題が発生した際に話し合える体制が作れることを想定し,3名以上の理学療法士もしくは作業療法士が在籍する病院とした。
調査方法:臨床倫理に関する認識やジレンマの感じ方等を調査項目とした無記名自記式質問票(以下,アンケート)を作成した。質問項目は,①職種,②経験年数,③勤務病院の病床数,④主に関わるリハビリテーション病期,⑤倫理に関するイメージ,⑥臨床倫理に関する理解,⑦日常での倫理的ジレンマの内容・対処法の選択回答式を主とした12項目である。回収したデータは単純集計ならびにカイ二乗検定を用いた解析を行い,有意水準5%とした。
【結果】
アンケートの回答総数は589件であり,内訳は55施設,理学療法士339名,作業療法士250名,回答率88.9%であった。日常で倫理的ジレンマを感じた経験があると答えたセラピストは67%であり,ないと答えたものは28%であった。ジレンマの内容としては,「治療・ケアにおける医療従事者間の意見の不一致」が最も多く,「治療方針に関する迷い」,「患者・家族とのコミュニケーションにおける問題」等が続いた。臨床倫理に関する認識については,言葉を知っているセラピストは63%だったものの,言葉の意味まで知っているものは18%であった。また臨床倫理の意味を知っているセラピストは,ジレンマを感じ易い傾向にあった。経験年数や職種によってもジレンマの感じ方に違いがあるといった興味深い結果も得られた。
【結論】
倫理的問題の認識には,個人の倫理観,価値観や教育背景,職場の同僚・上司などの指導や患者との体験,キャリア,施設の特性が影響を与えている可能性があり,特に教育背景が認識の差を招くと言われている。本研究でも,「臨床倫理」の概念を認識しているセラピストは,倫理的感受性が高く,自覚的に倫理問題に向き合っている可能性があると考えられた。今後は,より一層リハビリテーション領域に「臨床倫理」の概念を広めることで,患者や家族,医療従事者の日々のストレスを軽減させ,患者の身体機能や日常生活の改善,QOL向上へ向けた円滑なサポートができる体制が作られて行く必要がある。