The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-13] ポスター(教育)P13

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-13-1] 臨床経験年数の違いが思考過程に与える影響について

松永 真悟 (市立池田病院リハビリテーション科)

Keywords:評価, 思考過程, 臨床教育

【目的】

日々の臨床の中で,経験年数の違いによって理学療法評価や治療の考え方に違いがあることをよく経験する。そこで今回,臨床経験年数が評価や治療等を行う際の思考過程に与える影響を検討した。

【方法】

当院に勤務する理学療法士(以下,PT)10名(経験年数34年,23年,16年,14年,10年,9年,7年,5年,2年2名)に対して,人工膝関節全置換術を施行した架空の患者を設定し,各PTがその患者のカルテからの情報収集,リスク管理,評価,目標設定,治療プログラム立案を行い,項目ごとに経験年数による差異や傾向を分析した。

【結果】

1.カルテからの情報収集
経験年数の長短に関わらず医学的情報では手術の内容や術前・術中の状態を収集し,社会的情報では家族構成の内容をカルテから収集していた。経験年数による差はみられなかった。

2.リスク管理
経験年数の長いものでは,カルテから得られた情報をもとに,リスクを挙げる際に,例えば疼痛から生じる迷走神経反射や,安静から生じるDVTといった症状から想起できる内容にまで及んでいたが,経験年数の短いものでは症状そのものが多かった。

3.評価
経験年数の長いものは順序立てた評価項目の記載がされており,経験年数の短いものでは断片的に評価項目が羅列されていた。

4.目標設定
短期目標として,院内歩行の自立という共通点は見られたが,到達する目標の動作能力レベルに経験年数による差がみられた。長期目標ではほとんどが屋外杖歩行自立を目標にしていたが,経験年数の短いPTで,院内独歩を目標にしたものがいた。

5.治療プログラム立案
経験年数が5年以上と5年未満で比較すると,5年以上のPTでは疼痛を改善させるためのプログラムを優先して立案していたが,5年未満のセラピストでは関節可動域の改善および,動作の改善を優先していた。

【結論】

各項目において経験年数が長いPTでは必要最低限の内容を順序立てて記載していた。しかし,経験年数の短いPTでは,マニュアルから得られる知識に基づいたものと思われる記載が多かった。

リスク管理では,経験年数が長いPTでは過去に経験した事象を基に,より深く具体的にリスクを想定できたと考えられる。

評価に関しては,評価項目の優先順位や,関連性のある評価項目順に記載があったことより,過去に類似症例を評価したか否かといった経験的な差が出ていたと考えられる。

目標設定では,経験的にある程度の予後を予測して目標を設定するが,臨床経験が少ないPTは経過や予後予測が難しく,患者の希望を中心に目標設定を行い,高い目標を設定してしまったと考える。

以上のことから,経験年数の違いにより,リスク管理,評価,目標設定,治療プログラム立案といったほとんどの項目で様々な差が認められた。これらの違いに注意しながら日々の臨床を経験することにより,より効率的なPT自身の学習が可能になると思われる。