The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-13] ポスター(教育)P13

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-13-5] 療法士の卒後教育における海外研修の意義の検討
―アメリカ研修参加者のグループインタビュー分析を通して―

元石 光裕1, 森本 圭太2, 愛洲 純2, 綿 祐二3 (1.八尾はぁとふる病院, 2.島田病院, 3.日本福祉大学福祉経営学部)

Keywords:卒後教育, アメリカ研修, インタビュー

【はじめに,目的】

療法士の卒後教育は,各職域で必要な知識・技術習得に向けて,職場内外の研修を履修するのが一般的である。しかし,現場のSpecialistでありつつ,広い視野を有するGeneralistとしての育成を意図した時,卒後教育は一つの施設・分野にとどまらない枠組みで,広義に議論される必要がある。こうした中,複数施設のローテーション研修の他,継続的な海外研修を実施する施設も散見されてきた。しかし,これらの施設の海外研修の報告で,療法士の卒後教育やキャリアへの影響を論じたものは見当たらない。

研究者の勤務施設では平成23年より,全職種を対象にアメリカ研修(10日前後で,大学・クリニック・病院・ホスピス・在宅ケア施設見学の他,アメリカ人や現地の日本人との交流を含む)が開始され,現在まで延べ41名が参加している。本研究は,アメリカ研修を受けた療法士を対象として,研修前後の意識及び行動の変化を明らかにして,療法士の卒後教育における海外研修の意義を検討することを目的とした。

【方法】

対象は,アメリカ研修に参加した10名の療法士(理学療法士9名,作業療法士1名,経験年数3~12年)とした。方法は3~4名のグループインタビューとし,ICレコーダー(OLYMPUS社製ボイストレックDS-902)を用いて録音した。各参加者へ①参加目的,②参加後の意識への影響,③参加後の行動への影響(自己評価)を質問した後,グループ全体へ他者評価(②・③を客観的に見てどうか)を質問した。分析は逐語記録を作成し,①参加目的,②参加後の意識への影響(自己・他者評価),③参加後の行動への影響(自己・他者評価)に該当する部分を要約・コード付けを行い,各コードの関係を検討・構造化して,卒後教育における海外研修の意義となる概念を抽出した。

【結果】

①参加目的のコードでは,「新たな知識」「肌で感じる」「先行参加者への興味」など,各自の職域を指向した情報収集の他,「将来の発見」「自己変化」など,違う環境に身を置いて自己を相対化し,キャリアを見定めようとする目的が抽出された。②意識の影響では「日本・世界の認識」「施設・地域の認識」といった環境の意識化,「組織理念」「考えの共有」「伝え方」といった連携の意識化を基に,「課題・目標の発見」が最も多く抽出された。③行動の影響では連携意識に基づいた行動を基に,「結果」「形に表す」など,対外活動(学会発表・公開講座・地域ネットワーク創りなど)の契機,「新たな研修」「語学」「部署異動希望」など,目標に向けた活動の契機として評価された。

【結論】

療法士の卒後教育における海外研修の意義は,職場にとどまらないマクロな環境を意識化させ,広い視野からキャリア上の目標・課題を発見させるとともに,連携意識を活かした具体的な対外活動の契機になる可能性と考える。