The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-14] ポスター(教育)P14

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-14-2] 1986年から2015年に雑誌「理学療法学」で発表された論文の計量書誌学的分析

樋室 伸顕1, 村上 雅仁2, 泉水 朝貴2, 日髙 惠喜3, 小林 英司4 (1.札幌医科大学医学部公衆衛生学講座, 2.つじもと整形外科, 3.あらき整形外科, 4.医療法人札幌山の上病院リハビリテーション部)

Keywords:計量書誌学, 理学療法学, 論文

【はじめに,目的】最近の理学療法業界は,大学化や大学院の設立,理学療法士の急増と変化がめまぐるしい。雑誌「理学療法学」はその変化を反映し,発表された論文の計量書誌学的データは,日本の理学療法発展の傾向を示していると考える。そこで本研究は,過去30年間に雑誌「理学療法学」に発表された研究論文を計量書誌学的に分析することを目的とした。


【方法】CiNiiのウェブサイト上で,1986年から2015年に発表された論文を検索した。取り込み基準は(1)原著論文,システマティックレビュー,症例報告,調査報告,(2)論文のための一次的データ収集をしていること。除外基準は,(1)学会や研修会の発表をまとめた論文,(2)学会抄録とした。なお,日本理学療法士学会の研究助成成果報告は,2006年以前は研究論文の体裁で,それ以降は報告書である。よって2006年以前の論文は解析対象,それ以降は除外した。先行研究を参考にコード表を作成し,論文の特徴をコード化した。解析対象は,筆頭筆者の所属,研究デザイン,論文の目的,分科学会・部門などであった。コード化は2人の研究者が独立して行った。統計解析は,各特徴の割合の増加,減少について,年次推移を線形回帰分析で検討した。


【結果】1,111論文が解析対象であった。筆者の所属は病院等の臨床施設が57%と最も多かった。1995年ごろから所属が大学・大学院,複数か所に所属の筆者の割合が増加,大学付属病院と短大・専門学校が減少した。研究デザインは,分析的研究76%,記述的研究17.2%,実験室内研究6.8%であった。年次推移では分析的研究が増加,記述的研究が減少した。分析的研究では被験者内・被験者間研究(45.3%),横断的研究(33.2%)が多く,ランダム化比較試験(2.7%),症例対照研究(1.4%),シングルケーススタディー(0.7%),システマティックレビュー(0.6%)が少なかった。年次推移ではランダム化比較試験,横断的研究が増加,被験者内・被験者間研究が減少した。記述的研究では症例報告が増加,調査が減少した。論文の目的は解剖・生理学(32.9%),治療(18.8%),病因(14.6%)が多く,年次推移で病因,評価尺度が増加,経済が減少した。分科学会では基礎理学療法学会(29.9%),神経理学療法学会(16.4%),運動器理学療法学会(13.6%)が多く,年次推移で心血管理学療法学会が増加,小児理学療法学会が減少した。


【結論】雑誌「理学療法学」の30年間の特徴が明らかになった。研究の発展だけでなく,理学療法を取り巻く環境の影響を受けていることが示唆された。一方でエビデンスの高い論文が発表されているか疑問が残った。海外英文誌をはじめ関連誌の中での位置付けが今後の課題と考える。本研究の限界は研究方法や報告の質,エビデンスレベルを検証していないこと,分科学会の分類を研究者の判断で行ったことである。