[P-ED-14-3] カンボジアにおける理学療法の提供
Keywords:カンボジア, 理学療法教育, クリニカルクラークシップ
【はじめに,目的】
私たちは「日本の医療を輸出産業に育てる」という理念のもと,医療の海外展開を行っている。2012年12月にカンボジアの首都プノンペンにて北原ジャパンクリニックを開院し,また2016年9月にサンライズジャパン病院の運営を始めている。現地で医療を提供するにあたり,カンボジア人の教育は重要である。今回はカンボジアでの理学療法の現状とカンボジア人理学療法士に対して行った教育活動について紹介する。
【方法】
北原ジャパンクリニックとサンライズジャパン病院のカンボジア理学療法士5名を対象として教育を行った。サンライズジャパン病院のスタッフは日本の北原国際病院にて研修を行っている。教育内容としては,倫理,清潔管理,接遇など医療者としての基本姿勢から科学的根拠に基づく適切な評価や治療,急性期のリスク管理など理学療法士として必要な知識や技術の教育を行った。スタッフ間のコミュニケーションは英語と日本語を使用した。研修はクリニカルクラークシップの形式をとり,当院独自の評価表を用いながらカンボジア人スタッフが積極的に臨床現場に参加できるような体制を整えた。研修の評価は,当院で作成した評価表と客観的臨床能力試験(OSCE)を用いて行った。客観的臨床能力試験では,被評価者が脳卒中模擬患者に対して必要な検査や測定を行った。研修後にはカンボジア理学療法士5名に対してアンケートを実施し,教育内容や教育時間に対する理解度,満足度を聴取した。
【結果】
医療者としての基本姿勢として,時間の管理と問題解決能力に課題がみられた。研修中に予定を把握できておらず他者に迷惑を掛けてしまったり,課題に対して提出期限を守ることができなかったりした。一方で患者様やスタッフに対しては素直で丁寧な対応ができており,研修によって日々の成長がみられた。理学療法の専門技術においては,研修前より基本的な介助技術や徒手的な治療技術は優れていた。一方で客観的な評価,測定に関する知識や技術が不足しており,また測定結果を記録として残すという習慣がなかったため習得に苦労した。
【結論】
カンボジアの理学療法養成校の授業時間は3405時間であり,その内の臨床実習時間は900時間を占める。卒業後に現場において即戦力を求められる傾向が強く,実際に多くの患者様の治療を経験している。それによって,患者様に対する介助や徒手的な介入は日本の理学療法士よりも慣れている。一方で,客観的な評価の視点は不足しており,根拠に基づく問題点の抽出や治療展開が難しい。今後,日本の理学療法の教育を参考にしながら,現地に根付く形として教育を提供してきたい。また,カンボジアの理学療法の発展のために,人材育成だけでなく,医療制度や人材雇用制度とも連携させながらシステムを構築することを目指したい。
私たちは「日本の医療を輸出産業に育てる」という理念のもと,医療の海外展開を行っている。2012年12月にカンボジアの首都プノンペンにて北原ジャパンクリニックを開院し,また2016年9月にサンライズジャパン病院の運営を始めている。現地で医療を提供するにあたり,カンボジア人の教育は重要である。今回はカンボジアでの理学療法の現状とカンボジア人理学療法士に対して行った教育活動について紹介する。
【方法】
北原ジャパンクリニックとサンライズジャパン病院のカンボジア理学療法士5名を対象として教育を行った。サンライズジャパン病院のスタッフは日本の北原国際病院にて研修を行っている。教育内容としては,倫理,清潔管理,接遇など医療者としての基本姿勢から科学的根拠に基づく適切な評価や治療,急性期のリスク管理など理学療法士として必要な知識や技術の教育を行った。スタッフ間のコミュニケーションは英語と日本語を使用した。研修はクリニカルクラークシップの形式をとり,当院独自の評価表を用いながらカンボジア人スタッフが積極的に臨床現場に参加できるような体制を整えた。研修の評価は,当院で作成した評価表と客観的臨床能力試験(OSCE)を用いて行った。客観的臨床能力試験では,被評価者が脳卒中模擬患者に対して必要な検査や測定を行った。研修後にはカンボジア理学療法士5名に対してアンケートを実施し,教育内容や教育時間に対する理解度,満足度を聴取した。
【結果】
医療者としての基本姿勢として,時間の管理と問題解決能力に課題がみられた。研修中に予定を把握できておらず他者に迷惑を掛けてしまったり,課題に対して提出期限を守ることができなかったりした。一方で患者様やスタッフに対しては素直で丁寧な対応ができており,研修によって日々の成長がみられた。理学療法の専門技術においては,研修前より基本的な介助技術や徒手的な治療技術は優れていた。一方で客観的な評価,測定に関する知識や技術が不足しており,また測定結果を記録として残すという習慣がなかったため習得に苦労した。
【結論】
カンボジアの理学療法養成校の授業時間は3405時間であり,その内の臨床実習時間は900時間を占める。卒業後に現場において即戦力を求められる傾向が強く,実際に多くの患者様の治療を経験している。それによって,患者様に対する介助や徒手的な介入は日本の理学療法士よりも慣れている。一方で,客観的な評価の視点は不足しており,根拠に基づく問題点の抽出や治療展開が難しい。今後,日本の理学療法の教育を参考にしながら,現地に根付く形として教育を提供してきたい。また,カンボジアの理学療法の発展のために,人材育成だけでなく,医療制度や人材雇用制度とも連携させながらシステムを構築することを目指したい。