[P-ED-15-1] 救命救急センターにて帰宅支援目的に介入した腰痛症例における転帰に関連する因子の検討
キーワード:救命救急センター, 帰宅支援, 職域拡大
【はじめに,目的】
当院の救命救急センター(以下ER)では1次から3次救急まで全ての患者を受け入れる北米方ER方式をとっている。2013年4月より理学療法士(以下PT)をERに専任として配置し,主に運動器疾患を対象に外来理学療法を開始している。第51回の本学会において我々のERにおけるPTの配置の効果として帰宅支援に寄与する報告では,帰宅支援目的に介入する症例の7割近くが腰痛症例であった。しかし,ERにて帰宅支援目的に介入する腰痛症例対する転帰に関連する因子についてはまだ明らかになっていない。
今回,ERにおいて帰宅支援目的に介入した腰痛患者における転帰に関連する因子について明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は2015年10月~2016年8月の間に当院ERにおいて,医師が医学的に入院の必要がないと診断し帰宅支援目的に介入した腰痛患者115例とした。
転帰別として対象をPT介入により帰宅可能となった群(以下,帰宅群),介入するも入院となった群(以下,入院群)の2群に分けた。検討項目は年齢,性別,搬送方法,疾患別の4項目とした。搬送方法はwalk inと救急車の2群に,疾患別は圧迫骨折,ヘルニア・脊柱管狭窄症,非特異的腰痛症の3群にそれぞれ分類した。統計解析は転帰別を従属変数,検討項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を用い検討した。変数の選択には尤度比検定における変数増加法用い有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象は帰宅群86例(男性31例,女性55例,平均年齢73.5±15.71歳)と入院群29例(男性13例,女性16例,平均年齢74.93±17.84歳)に分けられた。搬送方法ではwalk inが(帰宅群/入院群)40例/7例,救急車が46例/22例,疾患別では圧迫骨折が15例/16例,ヘルニア・脊柱管狭窄症が3例/5例,非特異的腰痛症が68例/8例であった。
ロジスティック回帰分析の結果,転帰に影響する変数として搬送方法と疾患別が選択された。搬送方法(p<0.05)のオッズ比は0.312(95%信頼区間0.11~0.881),疾患別(p<0.01)のオッズ比は2.78(1.645~4.70)であった。また判別的中率は75.7%であった。
【結論】
医師にて医学的に入院の必要がないと診断され,帰宅に難渋する腰痛症例に対してERからPTが介入するも,救急車で搬送され圧迫骨折の診断がついた症例では入院となる可能性が高いことが示唆された。一方で,walk inで来院した非特異的腰痛症ではPTが介入することで帰宅可能となる可能性が高く,このような症例に対しERからPTが積極的に介入することで不必要な入院が避けられ,ひいては医療費の削減に繋がると考えられる。そして,このようなERにおけるPTの役割や効果を示すことで今後PTの新たな職域拡大の一助になると推察される。
一方,介助者の有無や家屋環境などの社会的背景により入院となる症例も存在したが,本研究では社会的背景については検討できていない。今後はそれらの因子についても検討していく必要がある。
当院の救命救急センター(以下ER)では1次から3次救急まで全ての患者を受け入れる北米方ER方式をとっている。2013年4月より理学療法士(以下PT)をERに専任として配置し,主に運動器疾患を対象に外来理学療法を開始している。第51回の本学会において我々のERにおけるPTの配置の効果として帰宅支援に寄与する報告では,帰宅支援目的に介入する症例の7割近くが腰痛症例であった。しかし,ERにて帰宅支援目的に介入する腰痛症例対する転帰に関連する因子についてはまだ明らかになっていない。
今回,ERにおいて帰宅支援目的に介入した腰痛患者における転帰に関連する因子について明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
対象は2015年10月~2016年8月の間に当院ERにおいて,医師が医学的に入院の必要がないと診断し帰宅支援目的に介入した腰痛患者115例とした。
転帰別として対象をPT介入により帰宅可能となった群(以下,帰宅群),介入するも入院となった群(以下,入院群)の2群に分けた。検討項目は年齢,性別,搬送方法,疾患別の4項目とした。搬送方法はwalk inと救急車の2群に,疾患別は圧迫骨折,ヘルニア・脊柱管狭窄症,非特異的腰痛症の3群にそれぞれ分類した。統計解析は転帰別を従属変数,検討項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を用い検討した。変数の選択には尤度比検定における変数増加法用い有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象は帰宅群86例(男性31例,女性55例,平均年齢73.5±15.71歳)と入院群29例(男性13例,女性16例,平均年齢74.93±17.84歳)に分けられた。搬送方法ではwalk inが(帰宅群/入院群)40例/7例,救急車が46例/22例,疾患別では圧迫骨折が15例/16例,ヘルニア・脊柱管狭窄症が3例/5例,非特異的腰痛症が68例/8例であった。
ロジスティック回帰分析の結果,転帰に影響する変数として搬送方法と疾患別が選択された。搬送方法(p<0.05)のオッズ比は0.312(95%信頼区間0.11~0.881),疾患別(p<0.01)のオッズ比は2.78(1.645~4.70)であった。また判別的中率は75.7%であった。
【結論】
医師にて医学的に入院の必要がないと診断され,帰宅に難渋する腰痛症例に対してERからPTが介入するも,救急車で搬送され圧迫骨折の診断がついた症例では入院となる可能性が高いことが示唆された。一方で,walk inで来院した非特異的腰痛症ではPTが介入することで帰宅可能となる可能性が高く,このような症例に対しERからPTが積極的に介入することで不必要な入院が避けられ,ひいては医療費の削減に繋がると考えられる。そして,このようなERにおけるPTの役割や効果を示すことで今後PTの新たな職域拡大の一助になると推察される。
一方,介助者の有無や家屋環境などの社会的背景により入院となる症例も存在したが,本研究では社会的背景については検討できていない。今後はそれらの因子についても検討していく必要がある。