[P-ED-16-1] 在宅復帰に影響する家族要因と介護者要因の検討
Keywords:在宅復帰, 決定木, 介護者
【はじめに,目的】一般に,同居家族の存在は在宅復帰に有利であり,多くの先行研究により支持されている。しかし近年,同居家族があっても家庭内では独居同然の場合や,近隣住人の生活支援により独居を維持する要介護例も存在し,単純な家族形態や同居人数だけでは判断できないケースが増えている。そこで今回,家族や介護者に関する要因(以下,F要因と仮称)を多角的に評価し,在宅復帰に対する影響度を検証した。【方法】2015年6月から2016年6月の期間に自宅から直接入院し,理学療法を完結した患者169例,女性109例,男性60例,平均年齢±SD=79.3歳±11.7を対象とした。疾患別は,大腿骨近位部骨折術後59例,胸腰椎圧迫骨折55例,脳卒中55例であり,うち109例(64.5%)は当院地域包括ケア病棟を経て退院し,60例(35.5%)は急性期病棟から直接退院した。紹介入院,回復期リハビリテーション病院への転院,打切り,および死亡退院は除外した。F要因は,同居配偶者の有無,患者本人と未就学児を除く同居家族数,介護者有無,家族協力度の4項目を評価した。なお,介護者とは,同居に関係なく「患者の都合に合わせて生活を直接支援できる者」と定義した。家族協力度は,小山ら(2008)の6段階評価法により行った。方法は,在宅復帰可否を従属変数とする決定木を行い,成長方法はChi-Squared Automatic Interaction Detection(CHAID)を選択した。独立変数は,F要因,年齢,性別,入院時血清アルブミン値,退院時Functional Independence Measureの運動項目合計点(運動FIM)と認知項目合計点,地域包括ケア病棟の利用有無,理学療法待機日数と施行日数,および総在院日数とした。解析は,IBM SPSS Statistics(ver.24)により行った。【結果】在宅復帰群は116例(68.6%),施設・療養型転院群は53例(31.4%)となり,第一層を運動FIM,第二層を介護者有無とする決定木が成立した。在宅復帰率の高い順に,①運動FIM>83点;復帰率97.1%,②83点≧運動FIM>72点で介護者あり;94.4%,③83点≧運動FIM>72点で介護者なし;68.8%,④72点≧運動FIM>27点;41.2%,⑤27点>運動FIM;6.2%となった。配偶者有無,同居家族数,家族協力度は選択されなかった。相対リスクは,再代入での推定値が0.178,標準誤差が0.029に対し,考査検証では推定値0.225,標準誤差0.032を示した。的中率は82.2%だった。【結論】F要因のうち,介護者有無のみが選択され,かつ運動FIMの見守り例において影響することが示された。運動FIMが見守り以外の場合,すなわち自立例では介護の必要がなく,要介護例では介入の困難さのため,介護者有無は影響しなかった。その他のF要因については,配偶者が患者本人より要介護度の高い場合もあり,また,家族数の多さや来院の熱心さが直接介護力に結びつく訳ではない。ゆえに,家族構成や来院頻度の情報による安易な復帰判断を避け,確実な介護力の提供者を見極めることが必要である。