[P-ED-17-2] 当院における新人理学療法士の職場適応に向けた支援に関する研究
~新人の抱える悩みと管理者が推測する悩みのギャップから見えてきたこと~
Keywords:職場適応, 管理者, 新人教育
【目的】部下の育成は管理者の役割の1つであり,新人の不安の増大や意欲低下を防ぐことも重要である。管理者の支援が少ない新人は,入職後6か月に活気が減少し身体愁訴が増える報告もあるため,管理者が新人の悩みを把握し適切に支援することが必要となる。そこで,当院の管理者が新人の悩みをどれくらい把握しているか調査した。
【方法】当院理学療法科の管理者(主任)7名と新人8名の合計15名に対して入職後6か月の時点でアンケート調査を行った。管理者は全員男性で病棟主任として部下を平均12.1±2.4人抱えており,平均臨床経験15.0±7.0年,平均管理者経験4.6±6.6年である。新人は男性5名,女性3名,全員臨床経験0年である。調査内容は新人が抱える職場での悩みとし,管理者は推測で,新人は現状を返答してもらい全て自由記載とした。統計処理はテキスト型データマイニングを分析するKH Coder(樋口ら)を用いた。形態素解析で得られた語に対して,上位5つまでの頻出語を選出し,5%未満を有意水準としカイ二乗検定を実施した。また,出現頻度が2以上の語を分析対象とし,共起ネットワークで単語間の関係性について検討した。
【結果】形態素解析の結果から一人称を除外し,管理者は95語,新人は81語が抽出された。管理者の頻出語は患者,業務,治療,時間,内容であり,新人は患者,治療,勉強,焦る,病態であった。カイ二乗検定の結果,管理者(χ2(4,N=39)=1.64,p=0.92)はそれぞれの語が高い頻度で挙げられており,出現頻度に有意差は見られなかった。新人(χ2(4,N=26)=10.16,p<0.05)は患者,治療の語の出現頻度が有意に高かった。共起ネットワークの結果,管理者は,患者の治療内容,ゴール設定,日常業務に時間がかかる,家庭の役割と仕事の両立,他部署との関わりを新人の悩みとして推測した。新人は,患者の治療や病態,勉強への焦りを悩みとして挙げた。
【考察】新人は患者の治療で悩んでいたが,管理者は治療に限らず日常業務や他職種連携といった幅広い視点で悩みを推測していることが明らかとなった。伊藤は支援者が価値観を押し付けることは相手の成長を損なわせると述べており,鈴木は自己評価が低い人にとってより高い資質,技能を期待されることは,心理的なプレッシャーになりうることを指摘している。また,小野田らは入職後3か月時と比べて6か月時に先輩・主任からの支援が新人の期待値を下回る傾向にあると述べている。今回も入職後6か月時に調査し,管理者は時間経過とともに新人の悩みを幅広く察知したと考えられるが,新人の悩みと異なった視点での支援は心理的なプレッシャーを与えかねない。山崎はコミュニケーションをとることがその人の悩みを和らげ,問題の解決に向かう手伝いをすると述べている。したがって,管理者は新人との悩みのギャップを埋めるために,まずは援助的なコミュニケーションを実践していくことが重要であると考えられる。
【方法】当院理学療法科の管理者(主任)7名と新人8名の合計15名に対して入職後6か月の時点でアンケート調査を行った。管理者は全員男性で病棟主任として部下を平均12.1±2.4人抱えており,平均臨床経験15.0±7.0年,平均管理者経験4.6±6.6年である。新人は男性5名,女性3名,全員臨床経験0年である。調査内容は新人が抱える職場での悩みとし,管理者は推測で,新人は現状を返答してもらい全て自由記載とした。統計処理はテキスト型データマイニングを分析するKH Coder(樋口ら)を用いた。形態素解析で得られた語に対して,上位5つまでの頻出語を選出し,5%未満を有意水準としカイ二乗検定を実施した。また,出現頻度が2以上の語を分析対象とし,共起ネットワークで単語間の関係性について検討した。
【結果】形態素解析の結果から一人称を除外し,管理者は95語,新人は81語が抽出された。管理者の頻出語は患者,業務,治療,時間,内容であり,新人は患者,治療,勉強,焦る,病態であった。カイ二乗検定の結果,管理者(χ2(4,N=39)=1.64,p=0.92)はそれぞれの語が高い頻度で挙げられており,出現頻度に有意差は見られなかった。新人(χ2(4,N=26)=10.16,p<0.05)は患者,治療の語の出現頻度が有意に高かった。共起ネットワークの結果,管理者は,患者の治療内容,ゴール設定,日常業務に時間がかかる,家庭の役割と仕事の両立,他部署との関わりを新人の悩みとして推測した。新人は,患者の治療や病態,勉強への焦りを悩みとして挙げた。
【考察】新人は患者の治療で悩んでいたが,管理者は治療に限らず日常業務や他職種連携といった幅広い視点で悩みを推測していることが明らかとなった。伊藤は支援者が価値観を押し付けることは相手の成長を損なわせると述べており,鈴木は自己評価が低い人にとってより高い資質,技能を期待されることは,心理的なプレッシャーになりうることを指摘している。また,小野田らは入職後3か月時と比べて6か月時に先輩・主任からの支援が新人の期待値を下回る傾向にあると述べている。今回も入職後6か月時に調査し,管理者は時間経過とともに新人の悩みを幅広く察知したと考えられるが,新人の悩みと異なった視点での支援は心理的なプレッシャーを与えかねない。山崎はコミュニケーションをとることがその人の悩みを和らげ,問題の解決に向かう手伝いをすると述べている。したがって,管理者は新人との悩みのギャップを埋めるために,まずは援助的なコミュニケーションを実践していくことが重要であると考えられる。