第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-18] ポスター(教育)P18

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-18-5] 当法人における職場マネジメントの取り組み
10年間の取り組みと成果

川田 悟史, 植野 拓, 由川 明生, 川崎 亘 (福岡医療団千鳥橋病院)

キーワード:マネジメント, 職員満足度, ストレスアンケート

【はじめに,目的】

当法人は2ヶ所の病院と10ヶ所の診療所群を有する549床の法人である。現在140名のリハセラピストが在籍し急性期から在宅まで各疾患別リハを提供している。良質なリハサービスを提供するため2006年以降職員満足度の高い職場作りを基本コンセプトに掲げ組織作りに取り組んできた。10年間の取り組みと成果について報告する。

【方法】

特に下記の4点について重点的に改善に取り組んだ。
①収益の確保
一日18単位取得を標準に稼働率目標と稼動高目標を設定し達成に向けて取り組んだ。また,毎年リハセラピスト数を微増させ継続した総収益の増加に取り組んだ。
②業務負担の軽減
リハセラピストを計画的に増員し一人あたり業務の量的負担軽減に取り組んだ。また,役職者数を増やし職場の業務支援機能強化に取り組んだ。
③技術建設の推進
研究研修費を確保してリハセラピストのスキルアップを支援し,働きがい向上と退職率低下に取り組んだ。
④メンタルヘルスのケア
臨床心理士による「心の健康相談室」を活用し,負担を感じているリハセラピストには早めにカウンセリングを受けるよう勧め,健康リスク低下と抑うつ率低下に取り組んだ。
上記取り組みを開始して以降,2006年~2015年までの「職場のストレスアンケート」調査結果について分析を行った。このアンケートは職業性ストレス簡易調査表の質問57項目とCES-D(うつ病自己評価尺度)の質問20項目を合わせた構成となっている。「職場のストレスアンケート」は労働安全衛生委員会が倫理委員会の承認を受け,毎年法人全職員を対象に実施している。解析は産業保健スタッフ(産業医,衛生管理者)が行いプライバシーの保護には細心の注意が払われている。

【結果】

①収益の確保
リハ総収益は6.1億円から10.4億円に増加した。
②業務負担の軽減
量的負担指数は9.9から9.5に低下した。また,上司の支援指数は8.0から8.7に向上した。
③技術建設の推進
働きがいは95.1%から97.5%に向上した。また,退職率は20.6%から2.3%に低下した。
④メンタルヘルスのケア
健康リスク指数は90.5から78.1に低下した。また,抑うつ率は56.1%から42.0%に低下した。

【結論】

稼動管理と計画的増員により職員数は68名から135名に増加した。リハ総収益を継続的に増加させつつ一人あたりの量的負担を軽減し,研究研修費を確保して技術建設を促進し職員満足度を高める,という一連のマネジメントによって,リハ総収益増加,働きがい向上,退職率低下,上司の支援指数向上,業務の量的負担低下,健康リスク低下,抑うつ率低下,等の成果を得ることができた。顧客満足向上を目指すのであれば同時に従業員満足向上も考慮しておく必要があると言われている。医療の場合,患者満足度向上のためには職員満足度向上を考慮しておく必要があると言い換えることができるであろう。今後も継続して職員満足度向上を意識した職場マネジメントに取り組みたい。