The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-19] ポスター(教育)P19

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-19-3] 熊本地震からの一考
急性期リハビリテーション科の立場から

田畑 伸治1, 立野 伸一1, 池嵜 寛人2 (1.熊本赤十字病院, 2.熊本保健科学大学言語聴覚学専攻)

Keywords:熊本地震, 運営, 災害支援

【はじめに,目的】

当院は熊本県熊本市東部地区に位置し,県内における急性期病院の役割を担い,また基幹災害拠点病院としての活動も行っている。周知のように,熊本県は平成28年4月14日,16日の2度にわたり最大震度7となる熊本地震を経験し,当院も震災被害にあう一方,病院機能の維持にも努めた。今回震災後のリハビリテーション科における患者の動向に関して調査を行った。

【方法】

前震となった平成28年4月14日を基準とし,翌4月15日以降入院となった患者を対象に,理学療法処方件数と平均在院日数を疾患別リハビリテーション料の項目別に調査した。調査期間は4月15日~21日の1週,4月15日~5月14日の1ヶ月,4月15日~6月14日の2ヶ月に分類した。さらに前年となる平成27年の同期間における理学療法処方件数と平均在院日数も併せて調査し比較検討を行った。なお,当院では疾患別リハビリテーション料は心大血管疾患リハビリテーション料(I),脳血管疾患等リハビリテーション料(I),廃用症候群リハビリテーション料(I),運動器リハビリテーション料(I),呼吸器リハビリテーション料(I),がん患者リハビリテーション料の6項目を算定している。また統計処理は理学療法処方件数に対してはχ二乗検定を,平均在院日数に対しては対応のないt-検定を用いた。

【結果】

震災後2ヶ月時点で脳血管疾患等リハビリテーション料(I)算定患者数が前年に比べ有意に増加した(p<0.01)。また平均在院日数においても震災後2ヶ月時点で脳血管疾患等リハビリテーション料(I)算定患者が有意に延長した(p<0.05)。



【結論】

熊本県は全国的に見ても地域連携が図れており,脳卒中患者においては特に地域連携パスを利用し急性期,回復期,維持期へのスムーズな移動が行われている。しかしながら今回の震災で急性期病院のひとつであるA病院の病院機能が失われ急性期患者が当院へ流出,結果として脳血管障害患者の増加に繋がったと考えられる。これは当院が震災後にまとめた資料からも,脳卒中,特に脳梗塞患者が前年同時期に比べ増加していることが読み取れる。また自宅等が損壊し,回復期病院からの転退院が滞りベッドコントロールが困難となった結果,急性期病院から回復期病院への早期転院が滞り在院日数の延長に繋がったと考えられる。処方件数の増加と在院日数の延長はリハビリテーション科の仕事量の増加を意味し,今回の結果は震災直後よりそれ以降にスタッフの負担が増加することを示唆した。さらに震災協力支援は反比例して時間経過とともに減少する為,震災支援,医療スタッフの派遣協力等の時期は検討される必要性があるだろう。今回の結果は震災の発生状況や被害状況,また地域特性等により変化するものと思われるが,本研究は震災後における急性期リハビリテーションの在り方を考察し,今後起こり得る地震に対し備え活動していくための意義あるものだと考えられる。