第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-01] ポスター(心血管)P01

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-01-3] 重症大動脈弁狭窄症を合併した長期人工呼吸器管理後の心臓リハビリテーションの効果
シングルケーススタディ

眞鍋 周志 (医療法人マックシール巽今宮病院リハビリテーション科)

キーワード:大動脈弁狭窄症, 長期人工呼吸器, リスク管理

【はじめに,目的】

長期人工呼吸器管理後は離脱に難渋することが多く,在宅復帰はより困難となる。心血管疾患におけるリハビリテーションのガイドラインでは重症大動脈弁狭窄症(以下,AS)は運動療法の絶対的禁忌とされている。今回,重症ASを合併し長期人工呼吸器管理となったが厳重なリスク管理のもと心臓リハビリテーション(以下,リハ)を行ない在宅復帰に至った症例を経験したので報告する。



【方法】

症例は78歳の男性。妻と二人暮らしでADL全自立。平成27年8月10日に自動車運転中に意識消失し交通事故にて救急搬送された。急性心筋梗塞と診断され同日#.6に対し経皮的冠動脈形成術を受けた。8月22日に痰詰まりによる呼吸不全を起こし挿管され,27日に気管切開を受けた。10月17日に脳梗塞を発症。11月24日に人工呼吸器から離脱したものの気管切開状態で長期療養を要すると判断され11月28日に当院へ転院。

当院入院時CTR52.5%。心臓超音波検査にて大動脈弁弁口面積0.98cm2,前壁~中隔にakinesis,EF41.4%。NT-proBNP1414pg/ml。Br.SV~VIと著名な麻痺はなく,両下肢MMT3~4レベル。起立に軽介助を要し歩行は介助歩行3~4mにて下肢疲労を訴えた。運動FIMは31点とADL全般に介助が必要であった。

リスク管理として毎日の体重測定,全身観察による心不全症状のチェックを行った。心肺運動負荷試験は実施困難と判断し,中止基準としてDouble Product<12000,Borg指数<13,その他リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドラインを採用した。主なプログラムはコンディショニング,レジスタンストレーニング,有酸素運動(平地歩行),ADLトレーニングとした。リハ頻度は1日1~2回,1回40~60分とした。担当者間での負荷量に差がないよう詳細にプログラムを設定した。


【結果】

呼吸不全・心不全の増悪などの有害事象を認めることなく93日間リハを行なうことができた。日差は認めるが最大連続歩行距離400m程度を獲得することができた。運動FIMは78点に改善し,ADLが自立できた。屋内歩行独歩自立・屋外歩行独歩見守りにて自宅退院となった。

【結論】

今回,運動療法の絶対的禁忌とされている重症ASの症例においても,適切なリスク管理のもとリハを実施することができ在宅復帰を果たすことができた。リスク管理に留意し負荷量を調整したことが有害事象なくリハを完遂し在宅復帰することができた要因と考える。

本研究は一症例での検討であり,今後は症例数を重ねて有効性や安全性を検討する必要がある。今回の結果から,リスクの高い症例であっても個々に応じたリハプログラムを立案し,リスク管理を徹底することで安全かつ効果的なリハを行なうことができる可能性が示唆された。