[P-HT-01-5] 腎臓機能区分G2-G3a-G3bの心不全患者における身体機能の検討
Keywords:心不全, 慢性腎臓病の重症度分類, 身体機能
【はじめに,目的】
心腎連関・心腎症候群が重要視され,心不全(HF:heart failure)患者にて,慢性腎臓病(CKD:Chronic kidney disease)の併存は,心筋梗塞や脳卒中など心血管系疾患の発症頻度の増加,心血管系疾患の発症・重症化を生じさせる。CKDの診療方針は,末期腎不全への移行を防ぐ,あるいは末期腎不全への進行を遅らせることである。先行研究にて,CKDとHF患者の身体機能,運動耐容能の検討は,年齢因子に左右される傾向にある。今回は前期高齢者に限定し,CKD重症度分類である腎臓機能区分を用いて,腎機能軽度~高度低下患者にて,身体機能の傾向を調査・検討することを目的とした。
【方法】
2014年11月~2016年5月にて,10m歩行が可能となった前期高齢(65歳~74歳)HF患者(年齢65.3±7.8,n=79)を対象とした。糸球体濾過量(GFR:Glomerular Filtration Rate)を基に,G2群(90>GFR≧60,年齢69±3.3,n=34),G3a群(60>GFR≧45,年齢69.21±2.99,n=30),G3b群(45>GFR≧30,年齢70.75±2.91,n=14)の3群に分け,各群の年齢,性別,BMI,握力,10m歩行速度,Barthel Index,呼吸機能検査について,多重比較検定(Tukey-Kramer法,Steel-Dwass法)を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
G2群vs.G3a群にて,握力,10m歩行速度,呼吸機能に差は認めず,Barthel Index(90.15±13.12vs.83.83±14.1)に差を認めた(p<0.05)。G3a群vs.G3b群にて,握力(21.9±6.83vs.17.9±8.95),10m歩行速度(17.18±5.99vs.23.48±13.96),%VC(78.08±18.64vs.71.72±16.9),Barthel Index(83.83±14.1vs.73.25±17.75)に差を認めた(握力,10m歩行速度,Barthel Index:p<0.01,%VC:p<0.05)。G2群vs.G3b群にて,握力(23.28±9.56vs.17.9±8.95),10m歩行速度(15.92±3.56vs.23.48±13.96),%VC(79.52±19.86vs.71.72±16.9),Barthel Index(90.15±13.12vs.73.25±17.75)に差を認めた(握力,10m歩行速度,Barthel Index:p<0.01,%VC:p<0.05)。
【結論】
当院においてG3b群のHFは,握力,10m歩行速度,Barthel Index,%VCに低値を示した。腎機能の低下はおおよそ不可逆的であるが,腎機能の更なる低下を予防することが運動療法に期待されている。腎臓機能の低下に伴い,身体機能の低下を呈するため,可及的早期からの予防的側面をもった,理学療法の構築,生活習慣の改善を目的とした患者指導がCKD合併のHF患者の予後に寄与すると考える。
心腎連関・心腎症候群が重要視され,心不全(HF:heart failure)患者にて,慢性腎臓病(CKD:Chronic kidney disease)の併存は,心筋梗塞や脳卒中など心血管系疾患の発症頻度の増加,心血管系疾患の発症・重症化を生じさせる。CKDの診療方針は,末期腎不全への移行を防ぐ,あるいは末期腎不全への進行を遅らせることである。先行研究にて,CKDとHF患者の身体機能,運動耐容能の検討は,年齢因子に左右される傾向にある。今回は前期高齢者に限定し,CKD重症度分類である腎臓機能区分を用いて,腎機能軽度~高度低下患者にて,身体機能の傾向を調査・検討することを目的とした。
【方法】
2014年11月~2016年5月にて,10m歩行が可能となった前期高齢(65歳~74歳)HF患者(年齢65.3±7.8,n=79)を対象とした。糸球体濾過量(GFR:Glomerular Filtration Rate)を基に,G2群(90>GFR≧60,年齢69±3.3,n=34),G3a群(60>GFR≧45,年齢69.21±2.99,n=30),G3b群(45>GFR≧30,年齢70.75±2.91,n=14)の3群に分け,各群の年齢,性別,BMI,握力,10m歩行速度,Barthel Index,呼吸機能検査について,多重比較検定(Tukey-Kramer法,Steel-Dwass法)を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
G2群vs.G3a群にて,握力,10m歩行速度,呼吸機能に差は認めず,Barthel Index(90.15±13.12vs.83.83±14.1)に差を認めた(p<0.05)。G3a群vs.G3b群にて,握力(21.9±6.83vs.17.9±8.95),10m歩行速度(17.18±5.99vs.23.48±13.96),%VC(78.08±18.64vs.71.72±16.9),Barthel Index(83.83±14.1vs.73.25±17.75)に差を認めた(握力,10m歩行速度,Barthel Index:p<0.01,%VC:p<0.05)。G2群vs.G3b群にて,握力(23.28±9.56vs.17.9±8.95),10m歩行速度(15.92±3.56vs.23.48±13.96),%VC(79.52±19.86vs.71.72±16.9),Barthel Index(90.15±13.12vs.73.25±17.75)に差を認めた(握力,10m歩行速度,Barthel Index:p<0.01,%VC:p<0.05)。
【結論】
当院においてG3b群のHFは,握力,10m歩行速度,Barthel Index,%VCに低値を示した。腎機能の低下はおおよそ不可逆的であるが,腎機能の更なる低下を予防することが運動療法に期待されている。腎臓機能の低下に伴い,身体機能の低下を呈するため,可及的早期からの予防的側面をもった,理学療法の構築,生活習慣の改善を目的とした患者指導がCKD合併のHF患者の予後に寄与すると考える。