[P-HT-02-2] 心疾患患者における下腿三頭筋と運動耐容能との関連について
Keywords:下腿三頭筋, 運動耐容能, 心疾患
【はじめに,目的】
心疾患患者の運動耐容能規定因子として骨格筋が重要視されている。しかし,先行研究では膝伸展筋力を用いた研究は多くみられるが,第二の心臓と呼ばれる下腿三頭筋についての研究はみられない。下腿三頭筋は大腿部よりも強い筋ポンプ作用を有しており,静脈還流量の増加からFrank-Starlingの法則を介し,心拍出量を増加させることができるとされている。そこで,心疾患患者における下腿三頭筋と運動耐容能の関連について検討した。
【方法】
対象は当院の外来心臓リハビリテーションに参加している虚血性心疾患患者33例(平均年齢72±7歳,男性22例,女性11例,狭心症24例,心筋梗塞9例)とした。測定項目として,骨格筋は足関節底屈筋力,腓腹筋厚,ヒラメ筋厚,下腿周径,運動耐容能は嫌気性代謝閾値(AT),最大酸素摂取量(peak VO2),6分間歩行距離(6MWD),心機能は左室駆出率(LVEF),一回心拍出量の指標として酸素脈(O2 pulse,peak VO2/HR)を用いた。筋厚測定にはVscan with Dual Probe(GEヘルスケア・ジャパン社製),筋力測定にはBiodex System 3(Biodex社製)を使用した。統計はIBM SPSS statistics 22を用いて,運動耐容能指標とその他の項目,O2 pulseと筋厚に対してSpearmanの順位相関係数を求めた。
【結果】
運動耐容能指標とその他の項目との相関について,ATでは足関節底屈筋力(r=0.420,p<0.05),O2 pulse(r=0.364,p<0.05),peak VO2では足関節底屈筋力(r=0.460,p<0.01),O2 pulse(r=0.545,p<0.01),6MWDではヒラメ筋厚(r=0.493,p<0.01),足関節底屈筋力(r=0.353,p<0.05),O2 pulse(r=0.535,p<0.01),下腿周径(r=0.456,p<0.01)と有意な相関がみられた。また,O2 pulseと筋厚の相関ではヒラメ筋厚のみに有意な相関がみられた(r=0.611,p<0.01)。腓腹筋厚はAT(r=-0.190,p=0.291),peak VO2(r=-0.197,p=0.273),6MWD(r=0.033,p=0.854),O2 pulse(r=0.035,p=0.846)と有意な相関はみられなかった。
【結論】
本研究では足関節底屈筋力は運動耐容能指標のすべてに軽度~中等度の有意な相関がみられた。また,O2 pulseは運動耐容能指標のすべてに軽度~中等度の有意な相関がみられており,心拍出量と運動耐容能の関連が示唆された。筋厚とO2 pulseの相関はヒラメ筋厚のみに中等度の有意な相関がみられている。先行研究にて下腿圧が上がるほど静脈還流量が増加するとされていることや,腓腹筋よりもヒラメ筋の筋内静脈が長く大きいという面から,筋ポンプ作用には特にヒラメ筋厚が重要であると考えられる。以上より,下腿三頭筋は足関節底屈筋力とヒラメ筋による筋ポンプ作用が,運動耐容能に関連している可能性が示唆された。
心疾患患者の運動耐容能規定因子として骨格筋が重要視されている。しかし,先行研究では膝伸展筋力を用いた研究は多くみられるが,第二の心臓と呼ばれる下腿三頭筋についての研究はみられない。下腿三頭筋は大腿部よりも強い筋ポンプ作用を有しており,静脈還流量の増加からFrank-Starlingの法則を介し,心拍出量を増加させることができるとされている。そこで,心疾患患者における下腿三頭筋と運動耐容能の関連について検討した。
【方法】
対象は当院の外来心臓リハビリテーションに参加している虚血性心疾患患者33例(平均年齢72±7歳,男性22例,女性11例,狭心症24例,心筋梗塞9例)とした。測定項目として,骨格筋は足関節底屈筋力,腓腹筋厚,ヒラメ筋厚,下腿周径,運動耐容能は嫌気性代謝閾値(AT),最大酸素摂取量(peak VO2),6分間歩行距離(6MWD),心機能は左室駆出率(LVEF),一回心拍出量の指標として酸素脈(O2 pulse,peak VO2/HR)を用いた。筋厚測定にはVscan with Dual Probe(GEヘルスケア・ジャパン社製),筋力測定にはBiodex System 3(Biodex社製)を使用した。統計はIBM SPSS statistics 22を用いて,運動耐容能指標とその他の項目,O2 pulseと筋厚に対してSpearmanの順位相関係数を求めた。
【結果】
運動耐容能指標とその他の項目との相関について,ATでは足関節底屈筋力(r=0.420,p<0.05),O2 pulse(r=0.364,p<0.05),peak VO2では足関節底屈筋力(r=0.460,p<0.01),O2 pulse(r=0.545,p<0.01),6MWDではヒラメ筋厚(r=0.493,p<0.01),足関節底屈筋力(r=0.353,p<0.05),O2 pulse(r=0.535,p<0.01),下腿周径(r=0.456,p<0.01)と有意な相関がみられた。また,O2 pulseと筋厚の相関ではヒラメ筋厚のみに有意な相関がみられた(r=0.611,p<0.01)。腓腹筋厚はAT(r=-0.190,p=0.291),peak VO2(r=-0.197,p=0.273),6MWD(r=0.033,p=0.854),O2 pulse(r=0.035,p=0.846)と有意な相関はみられなかった。
【結論】
本研究では足関節底屈筋力は運動耐容能指標のすべてに軽度~中等度の有意な相関がみられた。また,O2 pulseは運動耐容能指標のすべてに軽度~中等度の有意な相関がみられており,心拍出量と運動耐容能の関連が示唆された。筋厚とO2 pulseの相関はヒラメ筋厚のみに中等度の有意な相関がみられている。先行研究にて下腿圧が上がるほど静脈還流量が増加するとされていることや,腓腹筋よりもヒラメ筋の筋内静脈が長く大きいという面から,筋ポンプ作用には特にヒラメ筋厚が重要であると考えられる。以上より,下腿三頭筋は足関節底屈筋力とヒラメ筋による筋ポンプ作用が,運動耐容能に関連している可能性が示唆された。