[P-HT-02-4] 重症虚血性心疾患患者の離床に関する検討
Keywords:虚血性心疾患, 離床基準, 緩和
【はじめに】
集中治療室での理学療法の早期介入に関する有効性は多く報告されているが,重篤な虚血性心疾患患者において長期カテコラミン投与中の離床に関する報告は少ない。今回,急性心筋梗塞にて入院した症例において,長期カテコラミン投与下での離床を経験したので若干の知見を加えて報告する。
【方法】
今回の報告については,診療録より後方視的に調査した。症例は74歳男性。10年前より糖尿病と脂質異常症にて服薬,1日20本の喫煙あり。独居。電気関係の仕事をしていた。入院前日より胸部違和感と呼吸困難感あり。かかりつけ医を受診し酸素化不良と12誘導心電図にてIII・aVF誘導でQ波認め心筋梗塞疑いで当院に救急搬送された。当院搬送後,呼吸状態悪化し気管内チューブを挿入し人工呼吸器管理となった。その後心臓カテーテル検査にてLAD心筋梗塞を含む3枝病変あり緊急で冠動脈インターベンションを施行,その際心原性ショックとなりPCPSとIABPを挿入し集中治療室に帰室した。
【結果】
入院3日目にPCPS,4日目にIABPをそれぞれ離脱した。理学療法は入院7日目に処方され当日より開始した。理学療法介入時,SIMVにてPEEP8cmH2O,PS15cmH2O,1回換気量639mml,P/F比316,ドブタミン(以下DOB)2.85γ,ノルアドレナリン(以下NAD)0.072γ,フロセミド200mg/day,LVEF35%,鎮静中であった。入院9日目と19日目に人工呼吸器離脱を試みるもいずれも2日程度で再挿管となり,28日目に気管切開を施行された。その後,誤嚥性肺炎と思われる症状の併発から心不全の増悪と寛解を繰り返し,混合型せん妄もみられた。主治医・看護師と相談し徐々に心不全が改善傾向であったことから,離床を検討した。入院36日目に端坐位練習を実施し循環動態の悪化が無いことを確認,入院37日目に立位練習を実施した。その時の状態は,SIMVにてPEEP6cmH2O,PS7cmH2O,1回換気量553mml,P/F比400,DOB5γ,NAD0.12γ,フロセミド150mg/dayであった。協力性は得られたが,起き上がり全介助,端坐位保持は見守りで可能,立ち上がり全介助,立位保持可能の状態であった。立位練習以降は混合型せん妄は残存していたが笑顔など表情が出現し上肢を利用したジェスチャーも見られた。その後,DOBとNADは離脱し端座位練習や車椅子移乗もできていたが,入院60日目より腎機能低下や栄養障害により再び心不全が悪化した。それ以降離床できず,セラチア菌血症を契機とした無尿に対するCHDFも行われた。しかしその後回復することなく徐々に状態は悪化し,入院92日目に永眠された。
【結論】
カテコラミン投与中の離床は慎重に行うことが推奨されている。本症例は,呼吸状態が安定せず離床までに1ヶ月以上の重症管理が行われた。今回の入院中に離床が進められない可能性もあったが,医師・看護師とともに刻々と変化する患者の病態を的確に把握し離床を進められたことが本症例のQOLの向上にとって有効的であったと考えられた。
集中治療室での理学療法の早期介入に関する有効性は多く報告されているが,重篤な虚血性心疾患患者において長期カテコラミン投与中の離床に関する報告は少ない。今回,急性心筋梗塞にて入院した症例において,長期カテコラミン投与下での離床を経験したので若干の知見を加えて報告する。
【方法】
今回の報告については,診療録より後方視的に調査した。症例は74歳男性。10年前より糖尿病と脂質異常症にて服薬,1日20本の喫煙あり。独居。電気関係の仕事をしていた。入院前日より胸部違和感と呼吸困難感あり。かかりつけ医を受診し酸素化不良と12誘導心電図にてIII・aVF誘導でQ波認め心筋梗塞疑いで当院に救急搬送された。当院搬送後,呼吸状態悪化し気管内チューブを挿入し人工呼吸器管理となった。その後心臓カテーテル検査にてLAD心筋梗塞を含む3枝病変あり緊急で冠動脈インターベンションを施行,その際心原性ショックとなりPCPSとIABPを挿入し集中治療室に帰室した。
【結果】
入院3日目にPCPS,4日目にIABPをそれぞれ離脱した。理学療法は入院7日目に処方され当日より開始した。理学療法介入時,SIMVにてPEEP8cmH2O,PS15cmH2O,1回換気量639mml,P/F比316,ドブタミン(以下DOB)2.85γ,ノルアドレナリン(以下NAD)0.072γ,フロセミド200mg/day,LVEF35%,鎮静中であった。入院9日目と19日目に人工呼吸器離脱を試みるもいずれも2日程度で再挿管となり,28日目に気管切開を施行された。その後,誤嚥性肺炎と思われる症状の併発から心不全の増悪と寛解を繰り返し,混合型せん妄もみられた。主治医・看護師と相談し徐々に心不全が改善傾向であったことから,離床を検討した。入院36日目に端坐位練習を実施し循環動態の悪化が無いことを確認,入院37日目に立位練習を実施した。その時の状態は,SIMVにてPEEP6cmH2O,PS7cmH2O,1回換気量553mml,P/F比400,DOB5γ,NAD0.12γ,フロセミド150mg/dayであった。協力性は得られたが,起き上がり全介助,端坐位保持は見守りで可能,立ち上がり全介助,立位保持可能の状態であった。立位練習以降は混合型せん妄は残存していたが笑顔など表情が出現し上肢を利用したジェスチャーも見られた。その後,DOBとNADは離脱し端座位練習や車椅子移乗もできていたが,入院60日目より腎機能低下や栄養障害により再び心不全が悪化した。それ以降離床できず,セラチア菌血症を契機とした無尿に対するCHDFも行われた。しかしその後回復することなく徐々に状態は悪化し,入院92日目に永眠された。
【結論】
カテコラミン投与中の離床は慎重に行うことが推奨されている。本症例は,呼吸状態が安定せず離床までに1ヶ月以上の重症管理が行われた。今回の入院中に離床が進められない可能性もあったが,医師・看護師とともに刻々と変化する患者の病態を的確に把握し離床を進められたことが本症例のQOLの向上にとって有効的であったと考えられた。