The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-02] ポスター(心血管)P02

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-02-5] 急性心筋梗塞PCI術後患者の復職に影響する因子
復職支援を目的とする心臓リハビリテーションの課題

田上 光男, 林崎 拓也, 植村 郁恵, 松田 圭司, 豊田 章宏 (独立行政法人労働者健康安全機構中国労災病院)

Keywords:急性心筋梗塞, 復職, 心臓リハビリテーション

【目的】

就労年代の急性心筋梗塞患者の退院後復職は70~80%以上と報告されている。しかしながら,復職前や復職後の就労経過に至る身体的・心理的影響を詳細に追跡した調査は少ない。本研究では原職復帰を希望する急性心筋梗塞患者を対象として,外来心臓リハビリを通じて復職前後の身体・心理的評価を経時的に実施し,復職後の自覚的業務量に影響する因子について分析した。結果より,急性心筋梗塞患者の復帰支援を目的とする心臓リハビリアプローチの課題について考察する。


【対象と方法】

2015年7月から2016年6月までの発症時就労者41名のうち研究同意が得られた18名で,定期的に追跡可能であった男性患者13名(平均年齢58.5±12.8歳)を対象とした。職務内容は厚生労働省 職業分類表を用い調査し,評価内容は1)就労評価として自覚的業務量率(発症前の業務量との比較)を問診し,2)心機能として心エコー,血液検査,3)身体評価として握力,膝伸展筋力,自転車エルゴメータによるCPX,6分間歩行試験,さらに3次元加速度計で退院後の生活活動量の計測,4)心理評価としてSF-36およびセルフエフィカシー(GSES),うつ状態を示すPHQ-9を用いた。いずれの評価も退院時,退院後5か月で実施したが,自覚的業務量は復職時にも確認した。


【結果】

対象者全員の退院後復職までの日数は25.2日であり,退院後1か月から3か月以内で原職復帰し,13人中11人(85%)が1か月以内の復職であった。復職後の自覚的業務量は復職時58.5%で退院後5か月83.6%であった。自覚的業務量を職務内容別にみると,管理・事務業務の回復率は高い傾向にあった。退院時と5か月での身体評価比較では,握力は変化はみられなかったが,膝伸展筋力(111.9,122.8)(単位:Nm),6分間歩行(421m,541m)(単位:m),CPXによるAT(12.7,14.0)(単位:ml/kg/min),生活活動量(492,545)(単位:kcal)では経過ともに有意に向上していた。また心理評価の比較ではSF-36,GSESは退院時に比べ各数値は高くなり,PHQ-9は低くなる傾向ではあったが,有意な差はみられなかた。自覚的業務量と身体・心理的評価の各項目間の相関をみると,復職時にはSF-36の全体健康観(GH)に正の相関(0.771),およびGSESには負の相関(-0.828)がみられ,5か月時には膝伸展筋力とSF-36の心の健康(MH)には正の相関(0.829,0.782)がみられた。


【まとめ】

事務・管理職の復職は早い傾向にあり,復職時の自覚的業務量は60%弱,5か月時点でも90%に満たない。復職後の自覚的業務量の回復経過は下肢筋力,活動量とともに高くなるが,精神的健康度が高い人ほど自覚的業務量の回復は高くなり,自己効力感の高い方ほど復帰後の自覚的業務量は低く見積もっていた。復職支援を目的とする心臓リハビリテーションプログラムは身体的負荷量の向上だけではなく,入院中からの心理・ソーシャルサポートを重視した内容が大切である。