第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-04] ポスター(心血管)P04

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-04-1] 胸部大血管術後における術前frailty(フレイル)がリハビリテーション進行および術後経過に及ぼす影響

杉浦 宏和1, 小山 昭人1, 中村 雅則2 (1.市立札幌病院リハビリテーション科, 2.市立札幌病院心臓血管外科)

キーワード:胸部大血管術後, frailty(フレイル), 術後リハビリテーション

【はじめに,目的】

近年,心臓手術においてフレイルは術後在院日数の長期化,術後合併症発生率,術後死亡率および転院率の増加などの予後不良因子であることが示されている。しかしながら,胸部大血管手術におけるフレイルの影響を検討した報告は少ない。そこで,本研究では胸部大血管手術患者における術前フレイルが術後リハビリテーション(以下リハビリ)進行および術後経過に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

2012年10月から2016年4月までに当院で待機的胸部大血管手術を施行し,術後リハビリを実施した45例(平均年齢:73.9±7.9歳,性別:男性31例,女性14例,術式:弓部置換21例,上行置換4例,TEVAR20例)を対象とした。術前より歩行が介助レベルの症例および開心術との同時手術症例は対象より除外した。術前フレイル評価にはCanadian Study of Health and Aging clinical frailty scale(CFS)を用い,CFS4点以上をフレイル群,CFS4点未満を非フレイル群の2群に分類した。2群間における患者背景因子,周術期管理状況,術後リハビリ進行状況(座位開始日数,立位開始日数,歩行開始日数,100m歩行自立日数,歩行自立遅延・非自立の割合),術後経過(術後合併症発生率,術後在院日数,転帰,6~12ヶ月以内の再入院率および主要心血管イベントの発生率)を後方視的に調査し検討した。統計学的解析には,2群間の比較に対応のないt検定およびカイ二乗検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

フレイル群は16例(35.6%),非フレイル群は29例(64.4%)であった。患者背景因子,術式などの周術期管理状況は2群間で有意差を認めなかった。術後リハビリ進行状況および術後経過は,フレイル群は非フレイル群と比較して(フレイル群vs.非フレイル群),100m歩行自立日数が有意に遅延し(9.4±7.2vs.4.7±2.6日,p<0.01),歩行自立遅延・非自立の割合が有意に高かった(7例;43.8%vs.3例;10.3%,p<0.01)。歩行自立遅延・非自立の主要因は術前からの低ADL,精神由来(せん妄)などであった。また,術後在院日数が有意に長く(32.2±9.0vs.22.7±9.4日,p<0.05),転院率が有意に高かった(4例;25.0%vs.3例;10.3%,p<0.05)。一方,術後合併症発生率,6~12ヶ月以内の再入院率および主要心血管イベントの発生率は2群間で有意差を認めなかった。

【結論】

胸部大血管手術において術前フレイルは歩行自立遅延・非自立の割合を増加させ,歩行自立日数を遅延させる。また,術後在院日数の延長や転院率を増加させることが示唆された。遠隔期の成績には差は認めなかったが,歩行自立日数や在院日数などの術後経過に影響を及ぼすため,胸部大血管手術における術前フレイル評価は重要である。今後はフレイルの評価法や詳細な身体機能評価を含めた検討,術式別での検討が必要である。