第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » ポスター発表

[P-HT-04] ポスター(心血管)P04

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本心血管理学療法学会

[P-HT-04-2] 運動療法は心室期外収縮を減少させることができるのか

櫻田 弘治1,2, 板垣 篤典1, 石井 香織1, 長山 医3, 中嶋 美保子3, 葉山 恵津子3, 加藤 祐子4 (1.心臓血管研究所リハビリテーション室, 2.国際医療福祉大学大学院博士課程保健医療学専攻, 3.心臓血管研究所臨床検査室, 4.心臓血管研究所循環器内科)

キーワード:心室期外収縮, 運動療法, HRR

【はじめに・目的】心室期外収縮に対する運動療法の効果に関する検討は,いくつかの先行研究によって報告されているが一定の見解は得られていない。日本においては,奥田らは虚血性心疾患を対象としたスポーツ種目による運動療法によって,運動中の心室期外収縮(VPC)の減少を報告している。今回,我々はホルター心電図により,運動療法が24時間のVPC出現数を減少させることができるのか後方視的に検討したので報告する。

【方法】2004年4月から2013年5月までに,運動療法を開始した同時期に,血液生化学検査,心臓エコー検査,心肺運動負荷検査を行っていた22症例(年齢:65±12歳,男性:12例)を対象とした。基礎疾患は心臓術後14例,心不全6例,虚血性心疾患2例であった。除外症例は,運動療法実施期間中に外科的治療や不整脈薬の調整が行われた症例,心房細動症例,運動療法前のホルター検査にてVPCが0回/日の症例,治療の適応になる可能性がある10000回/日以上のVPC出現数の症例とした。このうち,運動療法が1回/W以上実施可能であった8症例をEX group,運動療法が1回/W未満であった14症例をcontrol groupとして2群に分類し,それぞれ2群におけるVPCの出現数,心機能評価として左室駆出率,心不全の程度(VE/VCO2 slope),運動能としてPeak VO2,副交感神経活性の指標としてheart rate recovery(HRR)を運動療法前後で比較検討した。なお,HRRは運動負荷終了直後の最大心拍数から運動負荷1分後の心拍数の差の値とした。運動療法は有酸素運動を中心として,筋力低下がある場合はレジスタンストレーニングを実施した。統計学的手法はPaired t-testを用い,全ての検定における有意水準はp<0.05とした。

【結果】EX groupにおいて,運動療法実施期間は165±133日であった。VPCの出現数は運動療法前が839(6-6029)個(log VPC:1.9±1.0)から運動療法後には94(4-542)個(log VPC:1.5±0.7)へ有意に減少を認めた(P<0.05)。HRRは運動療法前が9.9±11.1bpmから運動療法後には14.6±10.0bpmへ有意に改善した(P<0.01)。Peak VO2は運動療法前が12.0±2.7ml/min/kgから運動療法後には16.1±4.0ml/min/kgへ有意に改善した(P<0.05)。さらに,心不全の指標であるVE/VCO2は運動療法前が34.7±5.1から運動療法後には30.7±6.6へ有意に改善した(P<0.05)。control groupにおいて,運動療法前後においてVPCの出現数は有意差を認めなかった。HHR,Peak VO2やVE/VCO2も有意な改善は認めなかった。

【考察】運動療法は,peak VO2を改善させ,さらにVPCの出現数を減少させた。理由として,運動療法によってHRRの改善も認めたことから,副交感神経活性の改善が推察される。理学療法士が臨床上遭遇する頻度が高いVPCは,運動療法を行う際にリスク管理として重要視され項目のひとつである。今回の結果より,比較的頻度の少ないVPCは運動療法によって減少させる効果が示唆された。