[P-HT-04-3] 無気肺の治療に難渋した腹部大動脈瘤破裂に腹部コンパートメント症候群を合併した1例
Keywords:腹部コンパートメント症候群, 腹部大動脈瘤破裂, 無気肺
【はじめに,目的】
腹部大動脈瘤破裂の合併症に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)があり,発生率は4~12%と低いが,予後は不良である。ACS合併症例は,横隔膜の挙上による呼吸不全をきたしやすく,理学療法に難渋する場合がある。今回,我々は無気肺の治療に難渋した腹部大動脈瘤破裂後のACS合併症例を経験したため報告する。
【方法】
症例は67歳,男性。腹部大動脈瘤破裂に対して,緊急で腹部ステントグラフト内挿術を施行し,ACSの合併を認めた。術後1日目,外科的減圧術を施行。胸部X線で,横隔膜の挙上と無気肺を認めた。その後,外科的治療として,術後5日目に閉腹術,術後15日目に気管切開を施行した。理学療法は術後1日目より横隔膜の挙上と両下葉の無気肺を認めたが,Open managementであっため,積極的な体位変換は行えなかった。その後,術後6日目(閉腹術翌日)から両下葉の無気肺に対して前傾側臥位(両側)での体位呼吸療法を行い,術後16日目(気管切開翌日)から日本循環器学会のガイドラインに準じて離床を行った。
【結果】
無気肺の改善には発症後26日間を要した。閉腹後,前傾側臥位(両側)での体位呼吸療法を行ったが,横隔膜の挙上と無気肺の改善には至らなかった。しかし,離床開始翌日(術後17日目)より,横隔膜の下降と無気肺の改善を認め,術後18日目にSIMVからCPAPへ変更可能となり,術後30日目に人工呼吸器を離脱した。人工呼吸器装着日数は30日,ICU在室日数は33日,在院日数は79日,100m歩行自立日は術後48日目であった。腹部の創部治癒が不良で,在院期間は延長したが,自宅退院が可能であった。そして,退院時の身体活動量は同年代レベルまで改善を認めた。理学療法中,心房細動の移行は認めたが,その他のイベントの発生は認めなかった。
【結論】
腹部大動脈瘤破裂後にACSを合併した症例では,Open managementにより,積極的な体位変換が行えず,無気肺の治療に難渋する。また,閉腹後,前傾側臥位での体位呼吸療法を行ったが,横隔膜の挙上と無気肺の改善には至らず,離床開始後に改善を認めた。ACS後の横隔膜挙上と無気肺は,腹部臓器の圧迫によって引き起こされるため,離床は重力による腹部臓器の下降と機能的残気量の増加をもたらし,有効な治療となりうる。しかし,腹部大動脈瘤破裂後のACS合併症例は重症化しやすく,離床を開始する時期については慎重な判断が必要であると考えられた。
腹部大動脈瘤破裂の合併症に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)があり,発生率は4~12%と低いが,予後は不良である。ACS合併症例は,横隔膜の挙上による呼吸不全をきたしやすく,理学療法に難渋する場合がある。今回,我々は無気肺の治療に難渋した腹部大動脈瘤破裂後のACS合併症例を経験したため報告する。
【方法】
症例は67歳,男性。腹部大動脈瘤破裂に対して,緊急で腹部ステントグラフト内挿術を施行し,ACSの合併を認めた。術後1日目,外科的減圧術を施行。胸部X線で,横隔膜の挙上と無気肺を認めた。その後,外科的治療として,術後5日目に閉腹術,術後15日目に気管切開を施行した。理学療法は術後1日目より横隔膜の挙上と両下葉の無気肺を認めたが,Open managementであっため,積極的な体位変換は行えなかった。その後,術後6日目(閉腹術翌日)から両下葉の無気肺に対して前傾側臥位(両側)での体位呼吸療法を行い,術後16日目(気管切開翌日)から日本循環器学会のガイドラインに準じて離床を行った。
【結果】
無気肺の改善には発症後26日間を要した。閉腹後,前傾側臥位(両側)での体位呼吸療法を行ったが,横隔膜の挙上と無気肺の改善には至らなかった。しかし,離床開始翌日(術後17日目)より,横隔膜の下降と無気肺の改善を認め,術後18日目にSIMVからCPAPへ変更可能となり,術後30日目に人工呼吸器を離脱した。人工呼吸器装着日数は30日,ICU在室日数は33日,在院日数は79日,100m歩行自立日は術後48日目であった。腹部の創部治癒が不良で,在院期間は延長したが,自宅退院が可能であった。そして,退院時の身体活動量は同年代レベルまで改善を認めた。理学療法中,心房細動の移行は認めたが,その他のイベントの発生は認めなかった。
【結論】
腹部大動脈瘤破裂後にACSを合併した症例では,Open managementにより,積極的な体位変換が行えず,無気肺の治療に難渋する。また,閉腹後,前傾側臥位での体位呼吸療法を行ったが,横隔膜の挙上と無気肺の改善には至らず,離床開始後に改善を認めた。ACS後の横隔膜挙上と無気肺は,腹部臓器の圧迫によって引き起こされるため,離床は重力による腹部臓器の下降と機能的残気量の増加をもたらし,有効な治療となりうる。しかし,腹部大動脈瘤破裂後のACS合併症例は重症化しやすく,離床を開始する時期については慎重な判断が必要であると考えられた。