[P-HT-05-5] 腎機能低下を有する人工膝関節全置換術後患者の歩行自立に影響する術前因子
CKDの重症度分類G2-G4での検討
Keywords:腎機能低下, TKA, 歩行遅延
【はじめに,目的】Total Knee Arthroplasty(TKA)は超高齢者まで手術適応が拡大しており除痛,機能改善に対し有効な治療手段である。加齢により腎機能が低下する事は広く知られており,腎機能低下に応じて身体機能・QOLも低下するという報告もある。TKAでは術後転倒が問題となることも多く,転倒の有無が生命予後と密接に関係していることから,今回,腎機能低下を有したTKA患者において術後早期の歩行自立に影響する術前因子を抽出する事を目的とし本研究を実施した。
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究で実施した。2015年1月~2016年7月に初回片側TKAを実施し,血性Cr値による推算糸球体濾過量(eGFR)が術前血液検査で90mL/分/1.73m2以下であった61名(年齢75.3±7.6歳,男性16名)を対象とした。両側TKA,UKA,術後合併症(骨折・感染)例は除外した。従属変数として術後14日目のTimed Up and Go test(TUG)を用い13.5秒未満を歩行自立群(n=43),13.5秒以上を歩行未自立群(n=18)とした。検討項目として,患者背景因子は年齢,性別,Body Mass Index,術前身体機能は患側膝屈曲・伸展筋力,患側膝屈曲・伸展・股関節伸展可動域,TUG最大時間,5m歩行時間,疼痛,患者立脚型評価は自己効力感,APDL,JKOMとし,OA重症度としてKellgren-Lawrence(K/L)分類を各々診療録より収集した。歩行自立の可否により各要因について2群間比較を行いp<0.20の要因を独立変数とし,歩行自立の可否に影響する要因を抽出するため多重ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とし統計解析ソフトはR2. 8. 1を使用した。
【結果】単変量解析により13要因が独立変数として選択され,多変量解析の結果,OA重症度(OR 1.74,95%CI 1.17-2.58,p=0.038),TUG(OR 1.49,95%CI 1.01-2.19,p=0.046),痛み(OR 1.41,95%CI 0.87-2.29,p=0.160),年齢(OR 1.27,95%CI 1.03-1.58,p=0.027),自己効力感(OR 0.94,95%CI 0.86-1.02,p=0.121),性別(女性)(OR 10.86,95%CI 0.36-325.38,p=0.169),患側膝伸展可動域(OR 0.90,95%CI 0.77-1.04,p=0.147)が抽出された。
【結論】腎機能低下症例においてTKA術後の歩行自立の可否に影響する術前因子は膝OAが重症,術前TUGが延長,高齢となったOA重症度はX線上で評価を行うK/L分類を使用しており妥当性のある評価として世界的に汎用されている。またTUGは地域在住高齢者を対象とした歩行自立の可否を決定する要因として使用されており加齢により歩行速度は遅延する事が予測できる。TKA患者の術後早期の歩行自立因子として,術前TUG,患側膝伸展筋力,自己効力感が重要とされており,腎機能低下患者を対象とした本研究においてもTUGが抽出された点で先行研究を支持する結果となった。しかし,CKD stage2-4と広く腎機能低下患者を対象とした本研究においては,重症度の違いによりmodifiable factorが変化する可能性がある。従って,今後CKD stageをカテゴリー化してmodifiable factorを抽出する必要がある。
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究で実施した。2015年1月~2016年7月に初回片側TKAを実施し,血性Cr値による推算糸球体濾過量(eGFR)が術前血液検査で90mL/分/1.73m2以下であった61名(年齢75.3±7.6歳,男性16名)を対象とした。両側TKA,UKA,術後合併症(骨折・感染)例は除外した。従属変数として術後14日目のTimed Up and Go test(TUG)を用い13.5秒未満を歩行自立群(n=43),13.5秒以上を歩行未自立群(n=18)とした。検討項目として,患者背景因子は年齢,性別,Body Mass Index,術前身体機能は患側膝屈曲・伸展筋力,患側膝屈曲・伸展・股関節伸展可動域,TUG最大時間,5m歩行時間,疼痛,患者立脚型評価は自己効力感,APDL,JKOMとし,OA重症度としてKellgren-Lawrence(K/L)分類を各々診療録より収集した。歩行自立の可否により各要因について2群間比較を行いp<0.20の要因を独立変数とし,歩行自立の可否に影響する要因を抽出するため多重ロジスティック回帰分析を実施した。有意水準は5%未満とし統計解析ソフトはR2. 8. 1を使用した。
【結果】単変量解析により13要因が独立変数として選択され,多変量解析の結果,OA重症度(OR 1.74,95%CI 1.17-2.58,p=0.038),TUG(OR 1.49,95%CI 1.01-2.19,p=0.046),痛み(OR 1.41,95%CI 0.87-2.29,p=0.160),年齢(OR 1.27,95%CI 1.03-1.58,p=0.027),自己効力感(OR 0.94,95%CI 0.86-1.02,p=0.121),性別(女性)(OR 10.86,95%CI 0.36-325.38,p=0.169),患側膝伸展可動域(OR 0.90,95%CI 0.77-1.04,p=0.147)が抽出された。
【結論】腎機能低下症例においてTKA術後の歩行自立の可否に影響する術前因子は膝OAが重症,術前TUGが延長,高齢となったOA重症度はX線上で評価を行うK/L分類を使用しており妥当性のある評価として世界的に汎用されている。またTUGは地域在住高齢者を対象とした歩行自立の可否を決定する要因として使用されており加齢により歩行速度は遅延する事が予測できる。TKA患者の術後早期の歩行自立因子として,術前TUG,患側膝伸展筋力,自己効力感が重要とされており,腎機能低下患者を対象とした本研究においてもTUGが抽出された点で先行研究を支持する結果となった。しかし,CKD stage2-4と広く腎機能低下患者を対象とした本研究においては,重症度の違いによりmodifiable factorが変化する可能性がある。従って,今後CKD stageをカテゴリー化してmodifiable factorを抽出する必要がある。