[P-KS-01-5] 腹臥位股関節伸展運動時の筋活動パターンと歩行立脚期の股関節・骨盤の運動との関係
Keywords:腹臥位股関節伸展, 筋活動パターン, 歩行
【はじめに,目的】
腹臥位股関節伸展運動テスト(Prone hip extension:以下PHE)は腰椎骨盤帯の安定性の評価として用いられ,ハムストリングス・大殿筋・脊柱起立筋・多裂筋などの活動開始タイミングと,腰椎骨盤帯の過剰な運動の有無を評価する。Bruno(2008),Tateuchi(2012)は,PHE時の筋活動パターンに応じて,その際の運動パターンも異なると報告しているが,臨床応用する上では歩行など荷重下の動作との関連性を明らかにする事が重要と考える。そこで,本研究では健常者におけるPHE時の筋活動パターンと,歩行立脚期の股関節・骨盤の運動との関連性について検討する事を目的とした。
【方法】
対象は健常若年男性29名(19-29歳)とした。
PHE課題では,表面筋電計WEB1000(NIHON-KOHDEN)を用い,股関節伸展運動を行わせた際の両側脊柱起立筋,両側多裂筋,測定側大殿筋,測定側半腱様筋の筋活動を測定した。データは整流平滑化し,安静時の平均振幅+3SDを50msec以上持続して越えた点を筋活動開始と定義した。各筋の活動開始時間は大殿筋を基準(0)として標準化した。
歩行課題では,三次元動作解析装置(VICON Nexus)とフォースプレート(Kisler)を用いた。VICON Plug-in-Gait下肢モデルを用い,8mの歩行路を自由速度にて歩行させた際の立脚後期(対側踵接地時)における股関節伸展角度・骨盤前傾角度・骨盤回旋角度を抽出し,静止立位時の値を基準として標準化した。
いずれの課題も解析側は軸足側とし,3試行の平均データを用いた。統計解析はPHE時の各筋活動開始時間と,歩行立脚後期における股関節伸展角度・骨盤前傾角度・骨盤回旋角度について相関分析を行った(有意水準5%)。
【結果】
PHE時の同側多裂筋・対側多裂筋・対側脊柱起立筋の活動開始時間と,歩行立脚後期の股関節伸展角度に有意な負の相関を認めた(相関係数:同側多裂筋=-0.599,対側多裂筋=-0.362,対側脊柱起立筋=-0.360)。
【結論】
PHE時に多裂筋が早期に活動する者ほど,歩行立脚後期の股関節伸展角度が大きかった。これはPHE時に多裂筋の活動遅延により股関節伸展が減少し骨盤前傾が増大したとする先行研究(Tateuchi 2012)に類似した見解と考える。健常者において多裂筋は四肢の運動に先行して収縮し腰椎骨盤帯の安定性を高める(Hodges 1997)。この事から,PHE時に多裂筋が大殿筋に対し早期に収縮する者では,歩行時も腰椎骨盤帯の安定化が反映され,効率的に股関節伸展が生じたと考えられる。また,対側脊柱起立筋の活動開始時間と歩行立脚後期の股関節伸展角度についても相関関係を認めた。脊柱起立筋は胸腰筋膜を介して大殿筋と連結を持つ為,先行収縮によって腰椎骨盤帯の安定性を高める方略を取る者が存在した事がその要因と考えられる。
腹臥位股関節伸展運動テスト(Prone hip extension:以下PHE)は腰椎骨盤帯の安定性の評価として用いられ,ハムストリングス・大殿筋・脊柱起立筋・多裂筋などの活動開始タイミングと,腰椎骨盤帯の過剰な運動の有無を評価する。Bruno(2008),Tateuchi(2012)は,PHE時の筋活動パターンに応じて,その際の運動パターンも異なると報告しているが,臨床応用する上では歩行など荷重下の動作との関連性を明らかにする事が重要と考える。そこで,本研究では健常者におけるPHE時の筋活動パターンと,歩行立脚期の股関節・骨盤の運動との関連性について検討する事を目的とした。
【方法】
対象は健常若年男性29名(19-29歳)とした。
PHE課題では,表面筋電計WEB1000(NIHON-KOHDEN)を用い,股関節伸展運動を行わせた際の両側脊柱起立筋,両側多裂筋,測定側大殿筋,測定側半腱様筋の筋活動を測定した。データは整流平滑化し,安静時の平均振幅+3SDを50msec以上持続して越えた点を筋活動開始と定義した。各筋の活動開始時間は大殿筋を基準(0)として標準化した。
歩行課題では,三次元動作解析装置(VICON Nexus)とフォースプレート(Kisler)を用いた。VICON Plug-in-Gait下肢モデルを用い,8mの歩行路を自由速度にて歩行させた際の立脚後期(対側踵接地時)における股関節伸展角度・骨盤前傾角度・骨盤回旋角度を抽出し,静止立位時の値を基準として標準化した。
いずれの課題も解析側は軸足側とし,3試行の平均データを用いた。統計解析はPHE時の各筋活動開始時間と,歩行立脚後期における股関節伸展角度・骨盤前傾角度・骨盤回旋角度について相関分析を行った(有意水準5%)。
【結果】
PHE時の同側多裂筋・対側多裂筋・対側脊柱起立筋の活動開始時間と,歩行立脚後期の股関節伸展角度に有意な負の相関を認めた(相関係数:同側多裂筋=-0.599,対側多裂筋=-0.362,対側脊柱起立筋=-0.360)。
【結論】
PHE時に多裂筋が早期に活動する者ほど,歩行立脚後期の股関節伸展角度が大きかった。これはPHE時に多裂筋の活動遅延により股関節伸展が減少し骨盤前傾が増大したとする先行研究(Tateuchi 2012)に類似した見解と考える。健常者において多裂筋は四肢の運動に先行して収縮し腰椎骨盤帯の安定性を高める(Hodges 1997)。この事から,PHE時に多裂筋が大殿筋に対し早期に収縮する者では,歩行時も腰椎骨盤帯の安定化が反映され,効率的に股関節伸展が生じたと考えられる。また,対側脊柱起立筋の活動開始時間と歩行立脚後期の股関節伸展角度についても相関関係を認めた。脊柱起立筋は胸腰筋膜を介して大殿筋と連結を持つ為,先行収縮によって腰椎骨盤帯の安定性を高める方略を取る者が存在した事がその要因と考えられる。