[P-KS-02-4] 高電圧電気刺激を用いた等尺性筋収縮による筋伸張効果の検証
Keywords:筋伸張, 高電圧電気刺激, Hold relax
【はじめに,目的】
関節可動性を制限する因子として筋・腱の短縮や筋緊張亢進が挙げられ,これらの改善にはPNF法のHold relaxが有効であることが報告されている。しかし,Hold relaxを実施するためには,対象者が随意収縮を行なえることが前提であり,脳卒中片麻痺患者や脊髄損傷患者のような随意収縮が困難な患者に対しては適用できない。そこで,本研究は,従来の随意収縮ではなく,高電圧電気刺激による筋収縮を用いたHold relax手技により,筋の伸張効果が得られるか否かを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢伸展挙上(以下,SLR)の関節可動域角度が75°以下の男子大学生30名(21.2±0.8歳)の右下肢30肢とし,各15名ずつ随意収縮群(以下,VC群)と電気刺激群(以下,ES群)の2群にランダムに振り分けた。被験者は,ベッド上に垂直に立てた固定版に身体背面をつけた側臥位となり,体幹と左大腿部をベルトにてしっかり固定した。そこから他動的に右下肢最大SLR位の構えを設定した上で,ハムストリングスに2種のHold relaxを行った。VC群には,収縮時間8秒,休憩時間5秒を1セットとしたハムストリングスの随意的最大等尺性収縮を3セット,ES群には,通電9秒,休憩5秒とした右ハムストリングスへの高電圧電気刺激による等尺性収縮を,被験者が耐えうる最大刺激強度で5分間施行した。介入前後のSLR角度は,pull sensorで牽引力をモニターし,事前に算出した関節トルクを示した時の角度をデジタルカメラで撮像し,パソコンソフトImage Jを用いて算出した。2種の介入方法と繰り返しの要因がSLR角度に与える影響について,二元配置分散分析を用いて検定した。統計的有意水準は危険率1%未満とした。
【結果】
繰り返し要因のみ主効果を認め,介入後に有意にSLR角度が増加した(p<0.01)。介入前後のSLR角度差は,VC群が6.0±4.6°,ES群が7.6±5.6°であった。しかし,介入方法の主効果および交互作用は有意ではなかった。ES群の介入中の筋収縮強度は,平均18.5±8.4%MVCであった。
【結論】
高電圧電気刺激によるHold relaxは従来の随意収縮によるHold relaxと同等の筋伸張効果を持つことが証明された。加えて,ES群の筋収縮強度がおよそ20%MVCであったことから,VC群よりもかなり低い筋収縮強度で同程度の効果が得られることがわかった。これは,全通電時間の長さが収縮強度の低さを補ったものと考えられた。高電圧電気刺激は低周波電気刺激よりも刺激痛が少ないこと,そして不随意的に筋収縮を促すことが可能となることからも,随意収縮が困難な患者に対して応用可能となるだろう。今後は,刺激強度・時間や長期効果について検討する必要があると考える。
関節可動性を制限する因子として筋・腱の短縮や筋緊張亢進が挙げられ,これらの改善にはPNF法のHold relaxが有効であることが報告されている。しかし,Hold relaxを実施するためには,対象者が随意収縮を行なえることが前提であり,脳卒中片麻痺患者や脊髄損傷患者のような随意収縮が困難な患者に対しては適用できない。そこで,本研究は,従来の随意収縮ではなく,高電圧電気刺激による筋収縮を用いたHold relax手技により,筋の伸張効果が得られるか否かを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は下肢伸展挙上(以下,SLR)の関節可動域角度が75°以下の男子大学生30名(21.2±0.8歳)の右下肢30肢とし,各15名ずつ随意収縮群(以下,VC群)と電気刺激群(以下,ES群)の2群にランダムに振り分けた。被験者は,ベッド上に垂直に立てた固定版に身体背面をつけた側臥位となり,体幹と左大腿部をベルトにてしっかり固定した。そこから他動的に右下肢最大SLR位の構えを設定した上で,ハムストリングスに2種のHold relaxを行った。VC群には,収縮時間8秒,休憩時間5秒を1セットとしたハムストリングスの随意的最大等尺性収縮を3セット,ES群には,通電9秒,休憩5秒とした右ハムストリングスへの高電圧電気刺激による等尺性収縮を,被験者が耐えうる最大刺激強度で5分間施行した。介入前後のSLR角度は,pull sensorで牽引力をモニターし,事前に算出した関節トルクを示した時の角度をデジタルカメラで撮像し,パソコンソフトImage Jを用いて算出した。2種の介入方法と繰り返しの要因がSLR角度に与える影響について,二元配置分散分析を用いて検定した。統計的有意水準は危険率1%未満とした。
【結果】
繰り返し要因のみ主効果を認め,介入後に有意にSLR角度が増加した(p<0.01)。介入前後のSLR角度差は,VC群が6.0±4.6°,ES群が7.6±5.6°であった。しかし,介入方法の主効果および交互作用は有意ではなかった。ES群の介入中の筋収縮強度は,平均18.5±8.4%MVCであった。
【結論】
高電圧電気刺激によるHold relaxは従来の随意収縮によるHold relaxと同等の筋伸張効果を持つことが証明された。加えて,ES群の筋収縮強度がおよそ20%MVCであったことから,VC群よりもかなり低い筋収縮強度で同程度の効果が得られることがわかった。これは,全通電時間の長さが収縮強度の低さを補ったものと考えられた。高電圧電気刺激は低周波電気刺激よりも刺激痛が少ないこと,そして不随意的に筋収縮を促すことが可能となることからも,随意収縮が困難な患者に対して応用可能となるだろう。今後は,刺激強度・時間や長期効果について検討する必要があると考える。