[P-KS-04-1] 産前・産後における姿勢制御の変化
Keywords:妊婦, 姿勢制御, 重心動揺
【はじめに,目的】妊娠期での姿勢制御能力の低下の原因は,体重や腹囲増加など運動力学的な要素やホルモン分泌変化による関節柔軟性増加や神経制御の遅延等が挙げられている。姿勢制御能力低下に対し,介入,生活指導することは重要であると考える。このため姿勢制御能力低下の一因を特定することは介入への手がかりとなるが,先行研究では明らかにされていなかった。本研究では,妊娠期から産褥期にかけて姿勢制御能力低下が運動力学的原因であるという仮説をもとに,重心動揺計を用いて妊娠期から産褥期での姿勢制御能力の変化を検証した。
【方法】研究対象は,研究の同意を得られた研究協力者が所属する産婦人科に受診している20~30代の妊婦11名である。計測は,経時的変化を捉えるため各計測妊娠中期,末期,産後1か月の計2回実施し,重心動揺計を用いた姿勢制御計測とした。計測方法は裸足で重心動揺計に乗り,10秒間静止立位を保持した。次に先ほどの静止立位時での保持と同様,前方,後方,右方向,左方向の順に各方向にできる限り体重移動し,そして最大移動位置で10秒間保持を行った。この重心動揺計のデータを記録する課題を計2回実施した。統計手法はFriedman検定後多重比較検定(Bonferroni法)を用いた。計測項目は最大移動距離と最大移動時での保持の際の重心動揺とし①各方向の矩形面積②安定性限界面積③IPSの3項目とした。
【結果】妊娠経過に伴い体重は増加し,産後では減少していた。安定性限界面積では有意差は見られなかった。矩形面積では,後方矩形面積のみ妊娠中期から末期にかけて有意に増加し,末期から産後にかけて有意に減少していた(後方:中期183.1±89.9mm2,末期242.6±110.7mm2,産後185.6±102.6mm2)。IPSでは妊娠中期2.1,妊娠末期2.0,産後2.1となり妊娠中期と妊娠末期,妊娠末期と産後で有意差が認められた。
【結論】姿勢制御能力を示すIPSは妊娠経過に伴い低下,産後に回復した。後方での不安定性を示す後方矩形面積は妊娠中期から末期にかけて増加し,産後に減少した。望月らはIPSが大きいほど重心が安定性限界から逸脱せず長い時間安定すると定義している。IPSでは健常者は2.1を示すため,妊娠末期では通常と比較して姿勢制御能力が低下しているものと考えた。妊娠経過に伴い体重は増加し,産後は減少していた。後方への重心移動課題では,股関節伸展と骨盤後傾,脊柱伸展要素が必要となる。妊娠期では体幹後傾位を取るようになり経過とともにその傾向が強くなる。妊娠期での床反力作用点は後方に位置するため,後方重心移動課題では後方の安定域限界から逸脱する可能性が高くなる事が予想される。このため妊娠経過に伴い後方矩形面積が増加し,産後の姿勢変化により減少していたものと考えられた。これらより妊娠期での姿勢制御能力低下は運動力学的要因によるものと考えられた。
【方法】研究対象は,研究の同意を得られた研究協力者が所属する産婦人科に受診している20~30代の妊婦11名である。計測は,経時的変化を捉えるため各計測妊娠中期,末期,産後1か月の計2回実施し,重心動揺計を用いた姿勢制御計測とした。計測方法は裸足で重心動揺計に乗り,10秒間静止立位を保持した。次に先ほどの静止立位時での保持と同様,前方,後方,右方向,左方向の順に各方向にできる限り体重移動し,そして最大移動位置で10秒間保持を行った。この重心動揺計のデータを記録する課題を計2回実施した。統計手法はFriedman検定後多重比較検定(Bonferroni法)を用いた。計測項目は最大移動距離と最大移動時での保持の際の重心動揺とし①各方向の矩形面積②安定性限界面積③IPSの3項目とした。
【結果】妊娠経過に伴い体重は増加し,産後では減少していた。安定性限界面積では有意差は見られなかった。矩形面積では,後方矩形面積のみ妊娠中期から末期にかけて有意に増加し,末期から産後にかけて有意に減少していた(後方:中期183.1±89.9mm2,末期242.6±110.7mm2,産後185.6±102.6mm2)。IPSでは妊娠中期2.1,妊娠末期2.0,産後2.1となり妊娠中期と妊娠末期,妊娠末期と産後で有意差が認められた。
【結論】姿勢制御能力を示すIPSは妊娠経過に伴い低下,産後に回復した。後方での不安定性を示す後方矩形面積は妊娠中期から末期にかけて増加し,産後に減少した。望月らはIPSが大きいほど重心が安定性限界から逸脱せず長い時間安定すると定義している。IPSでは健常者は2.1を示すため,妊娠末期では通常と比較して姿勢制御能力が低下しているものと考えた。妊娠経過に伴い体重は増加し,産後は減少していた。後方への重心移動課題では,股関節伸展と骨盤後傾,脊柱伸展要素が必要となる。妊娠期では体幹後傾位を取るようになり経過とともにその傾向が強くなる。妊娠期での床反力作用点は後方に位置するため,後方重心移動課題では後方の安定域限界から逸脱する可能性が高くなる事が予想される。このため妊娠経過に伴い後方矩形面積が増加し,産後の姿勢変化により減少していたものと考えられた。これらより妊娠期での姿勢制御能力低下は運動力学的要因によるものと考えられた。