[P-KS-08-3] 他者との協力関係が上肢運動学習に与える影響
Keywords:運動学習, 他者, 協力
【はじめに,目的】
ヒトの社会生活は他者との関係性により成り立っており,新たな課題を学習していく際には他者と共同注意し,円滑な協力関係を築きながら信頼しあうことで意欲的な行動学習が促進されると考えられる。そこで本研究では,円滑な協力関係が運動学習促進効果に与える影響を検証するために,学習課題を個人または複数名のグループにて取り組むことによる学習効果を検証した。
【方法】
対象は健常大学生72名(男37名,女35名)とし,18名ずつコントロール群,グループ学習群として2名単位グループ群(以下2人組),3名単位グループ群(以下3人組),そしてビデオ観察群に分類した。学習課題はSPEED STACKSとし,マット上に端から3-6-3個に重なったカップをそれぞれピラミッド型に積み上げ,再び最初の形にまで可能な限り速く戻す課題でありその所要時間を計測する。課題はbaselineテストを実施した後,10試行を1trialとして計5trialを実施した。コントロール群では1人で反復し,2人組および3人組では学習者が1トライアル終了毎に休憩をはさみ次の学習者に交代した。2番目(2人組)および3番目(3人組)の学習者には,実施者を観察するよう指示し,休憩中は課題学習のための戦略に関して話し合うようにし,タイムを短縮させるために協力するよう指示した。さらに,グループ学習群では協力効果だけでなく,他者の運動を観察することによる効果が考えられるためビデオ観察群を設けた。このビデオ観察群では1人で課題を実施しtrial実施毎に同じ条件で課題を行っている学習者の手元のみの映像を観察しながら実施した。
統計学的分析は各trailにおける所要時間を反復測定二元配置分散分析(trial×群)にて検定した。また,各グループ内における対象者の関係性について友人関係尺度アンケートを実施し,その友人関係性と学習量の関係をスペアマン順位相関係数にて検定した。なお,有意水準はすべて5%未満とした。
【結果】
所要時間はtrial段階における差および群による差(p<0.01)を認めたものの,交互作用(p=0.87)は認められなかった。友人関係尺度と学習量の相関関係については,2人組では学習量と友人関係性に有意な関係性が認められなかったのに対し,3人組では他者との深い関わりを避けた点数が高い対象者ほど学習量が小さく(r=-0.53,p<0.05),他者と面白さを指向して関わった点数が高い対象者など学習量が大きいという有意な相関関係(r=0.50,p<0.05)が認められた。
【結論】
本研究の結果から,学習課題に対する単なる協力関係による取り組みは,個人練習と比較して運動学習における特異的効果がえられないものの,グループ複数名で取り組む際に,円滑な協力関係を構築できた場合には高い学習効果をもたらす可能性が示唆された。
ヒトの社会生活は他者との関係性により成り立っており,新たな課題を学習していく際には他者と共同注意し,円滑な協力関係を築きながら信頼しあうことで意欲的な行動学習が促進されると考えられる。そこで本研究では,円滑な協力関係が運動学習促進効果に与える影響を検証するために,学習課題を個人または複数名のグループにて取り組むことによる学習効果を検証した。
【方法】
対象は健常大学生72名(男37名,女35名)とし,18名ずつコントロール群,グループ学習群として2名単位グループ群(以下2人組),3名単位グループ群(以下3人組),そしてビデオ観察群に分類した。学習課題はSPEED STACKSとし,マット上に端から3-6-3個に重なったカップをそれぞれピラミッド型に積み上げ,再び最初の形にまで可能な限り速く戻す課題でありその所要時間を計測する。課題はbaselineテストを実施した後,10試行を1trialとして計5trialを実施した。コントロール群では1人で反復し,2人組および3人組では学習者が1トライアル終了毎に休憩をはさみ次の学習者に交代した。2番目(2人組)および3番目(3人組)の学習者には,実施者を観察するよう指示し,休憩中は課題学習のための戦略に関して話し合うようにし,タイムを短縮させるために協力するよう指示した。さらに,グループ学習群では協力効果だけでなく,他者の運動を観察することによる効果が考えられるためビデオ観察群を設けた。このビデオ観察群では1人で課題を実施しtrial実施毎に同じ条件で課題を行っている学習者の手元のみの映像を観察しながら実施した。
統計学的分析は各trailにおける所要時間を反復測定二元配置分散分析(trial×群)にて検定した。また,各グループ内における対象者の関係性について友人関係尺度アンケートを実施し,その友人関係性と学習量の関係をスペアマン順位相関係数にて検定した。なお,有意水準はすべて5%未満とした。
【結果】
所要時間はtrial段階における差および群による差(p<0.01)を認めたものの,交互作用(p=0.87)は認められなかった。友人関係尺度と学習量の相関関係については,2人組では学習量と友人関係性に有意な関係性が認められなかったのに対し,3人組では他者との深い関わりを避けた点数が高い対象者ほど学習量が小さく(r=-0.53,p<0.05),他者と面白さを指向して関わった点数が高い対象者など学習量が大きいという有意な相関関係(r=0.50,p<0.05)が認められた。
【結論】
本研究の結果から,学習課題に対する単なる協力関係による取り組みは,個人練習と比較して運動学習における特異的効果がえられないものの,グループ複数名で取り組む際に,円滑な協力関係を構築できた場合には高い学習効果をもたらす可能性が示唆された。