[P-KS-09-4] 骨盤傾斜角度が座位における前後方向の体幹位置知覚能に及ぼす影響
Keywords:座位, 体幹位置知覚, 骨盤傾斜角度
【はじめに,目的】
これまで我々は座位における前後方向の体幹位置知覚能の測定法を検討し,前後方向における位置知覚能は体幹参照角度毎に一様ではなく体幹位置の影響を受けることを明らかにした。ところで座位では体幹傾斜角度が同じであっても,骨盤傾斜角度によって脊椎の弯曲は大きく異なる。さらに骨盤の傾斜角度によって,筋活動や固有受容器からの感覚情報,坐骨結節や仙骨における座圧分布状態が変化すると考えられる。したがって,骨盤の傾斜角度は座位における体幹位置知覚能に影響すると考え,健常若年者を対象に座位における骨盤の前後傾が体幹の前後方向の位置知覚能に及ぼす影響について検討した。
【方法】
対象者は健常若年者13名(男性8名,女性5名,22±1.0歳)であった。体幹傾斜角度は肩峰と大転子を結んだ線と垂線とのなす角度とし,傾斜角度計(イトー社,BM-801)を取り付けた体幹角度計で測定された。この角度計は軸を中心に矢状面上を180°回転する。また,角度計全体が前後にスライドし軸を着座時の大転子の位置に一致させることができる。
開始肢位は以下のように定めた。被験者を座面高が可変な測定用椅子に着座させ,大腿部が水平,膝関節が90°屈曲位,足関節0°で足底面全体を接地させた。
体幹位置知覚能は被験者が参照した体幹の傾斜角度と,それを再現した角度との絶対誤差で評価された。被験者は閉眼および手を胸元で交差し,以下の手順で知覚能の測定が行なわれた。①被験者は安静座位を3秒間保持する。②被験者は体幹を前後傾し,体幹角度を参照角度に一致させる。③被験者は参照角度を3秒間保持し,その位置を記憶する。④被験者は安静座位に戻らず起立し,安静立位を3秒間保持する。⑤その後,被験者は着座し安静座位を3秒間保持する。⑥被験者は参照角度を再現し,検者がその角度を測定する。参照から再現までが短期記憶の保たれる20秒以内に行われた。体幹角度は垂直位を0°とし前傾をプラス,後傾をマイナスとした。-15,-10,-5,0,5,10および15°の7つの体幹角度での参照と再現がそれぞれ5試行ずつランダムな順序で測定された。また,以上の試行が骨盤前傾位,中間位,後傾位の3条件にてそれぞれ別日に測定された。
【結果】
体幹再現角度の絶対誤差に体幹参照角度および骨盤傾斜角度が及ぼす影響を検討するため二元配置分散分析を行った結果,両者の交互作用が認められた。その後の多重比較検定の結果,体幹を15°前傾したとき,骨盤前傾位に比べ後傾位で絶対誤差が有意に大きかった。すなわち,座位における体幹位置知覚能は,体幹が前傾したときのみ,骨盤前傾位と比べて骨盤後傾位で有意に低かった。
【結論】
座位における骨盤傾斜角度は,体幹前傾位においてのみ体幹位置知覚能に影響を及ぼす可能性が示唆された。しかし,体幹後傾位および中間位付近では別の要因が影響する可能性が考えられた。
これまで我々は座位における前後方向の体幹位置知覚能の測定法を検討し,前後方向における位置知覚能は体幹参照角度毎に一様ではなく体幹位置の影響を受けることを明らかにした。ところで座位では体幹傾斜角度が同じであっても,骨盤傾斜角度によって脊椎の弯曲は大きく異なる。さらに骨盤の傾斜角度によって,筋活動や固有受容器からの感覚情報,坐骨結節や仙骨における座圧分布状態が変化すると考えられる。したがって,骨盤の傾斜角度は座位における体幹位置知覚能に影響すると考え,健常若年者を対象に座位における骨盤の前後傾が体幹の前後方向の位置知覚能に及ぼす影響について検討した。
【方法】
対象者は健常若年者13名(男性8名,女性5名,22±1.0歳)であった。体幹傾斜角度は肩峰と大転子を結んだ線と垂線とのなす角度とし,傾斜角度計(イトー社,BM-801)を取り付けた体幹角度計で測定された。この角度計は軸を中心に矢状面上を180°回転する。また,角度計全体が前後にスライドし軸を着座時の大転子の位置に一致させることができる。
開始肢位は以下のように定めた。被験者を座面高が可変な測定用椅子に着座させ,大腿部が水平,膝関節が90°屈曲位,足関節0°で足底面全体を接地させた。
体幹位置知覚能は被験者が参照した体幹の傾斜角度と,それを再現した角度との絶対誤差で評価された。被験者は閉眼および手を胸元で交差し,以下の手順で知覚能の測定が行なわれた。①被験者は安静座位を3秒間保持する。②被験者は体幹を前後傾し,体幹角度を参照角度に一致させる。③被験者は参照角度を3秒間保持し,その位置を記憶する。④被験者は安静座位に戻らず起立し,安静立位を3秒間保持する。⑤その後,被験者は着座し安静座位を3秒間保持する。⑥被験者は参照角度を再現し,検者がその角度を測定する。参照から再現までが短期記憶の保たれる20秒以内に行われた。体幹角度は垂直位を0°とし前傾をプラス,後傾をマイナスとした。-15,-10,-5,0,5,10および15°の7つの体幹角度での参照と再現がそれぞれ5試行ずつランダムな順序で測定された。また,以上の試行が骨盤前傾位,中間位,後傾位の3条件にてそれぞれ別日に測定された。
【結果】
体幹再現角度の絶対誤差に体幹参照角度および骨盤傾斜角度が及ぼす影響を検討するため二元配置分散分析を行った結果,両者の交互作用が認められた。その後の多重比較検定の結果,体幹を15°前傾したとき,骨盤前傾位に比べ後傾位で絶対誤差が有意に大きかった。すなわち,座位における体幹位置知覚能は,体幹が前傾したときのみ,骨盤前傾位と比べて骨盤後傾位で有意に低かった。
【結論】
座位における骨盤傾斜角度は,体幹前傾位においてのみ体幹位置知覚能に影響を及ぼす可能性が示唆された。しかし,体幹後傾位および中間位付近では別の要因が影響する可能性が考えられた。