[P-KS-09-5] 回復期脳卒中患者のSEP下肢感覚機能評価とSIAS下肢運動麻痺との関連性について
Keywords:SEP, 感覚障害, 脳卒中
【はじめに,目的】
脳卒中患者の運動麻痺と感覚障害について客観的なデータを持って証明された先行研究は未だに少ない。感覚を客観的に評価する方法として,体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:以下SEP)があり,脳卒中患者の感覚機能評価法として診察上行われている。本研究の目的は回復期脳卒中患者のSEPの下肢感覚障害と下肢運動麻痺重症度との関連性を検討することである。
【方法】
本研究は後方視によるコホート研究である。対象は平成25年1月から平成27年5月の間に当院に入院した初発脳卒中片麻痺患者48名(男性23名・女性25名,平均年齢69.1才±12.5才,発症から平均36日)。除外項目は糖尿病,両片麻痺,小脳失調,多発性脳梗塞を有するものとした。使用データは臨床検査科のSEPの検査データとSIAS下肢運動機能とした。SEPの評価は導出される波形を良好・不全・不良の3タイプに分類。SISAは股関節,膝関節,足関節の運動を0~5の6段階で評価。下肢SEP,SIASの評価は入院後1週間以内に実施した。下肢SEP検査と波形判別は,熟練した臨床検査技師1名により実施された。SEPによる下肢感覚障害とSIASによる下肢運動麻痺の関連性について統計ソフトRを使用し,Spermanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
SEPとSIASの関連性についてはP<0.01で股関節の相関係数は0.60,膝関節の相関係数は0.52,足関節は相関係数0.48,3項目合計の相関係数は0.54であった。感覚機能と運動麻痺が一致しない例がいくつか見られた。特徴的なのは感覚機能が不良だが運動麻痺が比較的良好な例と感覚機能は良好だが運動機能が不良な例がいくつか見られた事である。また,末梢部では感覚機能と運動麻痺との関連性が弱くなる事が示唆された。
【結論】
本研究の結果から運動麻痺と感覚機能の関連性について客観的な指標からは強く相関していないと言える。これは病巣の部位によって感覚機能に強く影響を与えやすい部位と運動機能に強く影響を与えやすい部位が特異的に障害されていたと考えられる。そのため,運動機能が良好であれば感覚機能も良好であるとは言い切る事が出来ない。また,末梢部ではその症状がより顕著に出ている事が言える。脳卒中発症から比較的初期の回復期でも高次脳機能障害など適切に感覚機能を評価する事が困難な患者も多い。先行研究よりSEPは客観的に感覚機能の評価を行う事が出来る。そのため,SEPによる感覚機能評価と共にCTおよびMRIによる画像診断で病巣の特定とPTによる運動麻痺の評価を合わせる事でより具体的に脳卒中患者の病態を理解し,リハビリテーションにおいて病態に即した治療アプローチの立案を出来る事が期待できる。
脳卒中患者の運動麻痺と感覚障害について客観的なデータを持って証明された先行研究は未だに少ない。感覚を客観的に評価する方法として,体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:以下SEP)があり,脳卒中患者の感覚機能評価法として診察上行われている。本研究の目的は回復期脳卒中患者のSEPの下肢感覚障害と下肢運動麻痺重症度との関連性を検討することである。
【方法】
本研究は後方視によるコホート研究である。対象は平成25年1月から平成27年5月の間に当院に入院した初発脳卒中片麻痺患者48名(男性23名・女性25名,平均年齢69.1才±12.5才,発症から平均36日)。除外項目は糖尿病,両片麻痺,小脳失調,多発性脳梗塞を有するものとした。使用データは臨床検査科のSEPの検査データとSIAS下肢運動機能とした。SEPの評価は導出される波形を良好・不全・不良の3タイプに分類。SISAは股関節,膝関節,足関節の運動を0~5の6段階で評価。下肢SEP,SIASの評価は入院後1週間以内に実施した。下肢SEP検査と波形判別は,熟練した臨床検査技師1名により実施された。SEPによる下肢感覚障害とSIASによる下肢運動麻痺の関連性について統計ソフトRを使用し,Spermanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
SEPとSIASの関連性についてはP<0.01で股関節の相関係数は0.60,膝関節の相関係数は0.52,足関節は相関係数0.48,3項目合計の相関係数は0.54であった。感覚機能と運動麻痺が一致しない例がいくつか見られた。特徴的なのは感覚機能が不良だが運動麻痺が比較的良好な例と感覚機能は良好だが運動機能が不良な例がいくつか見られた事である。また,末梢部では感覚機能と運動麻痺との関連性が弱くなる事が示唆された。
【結論】
本研究の結果から運動麻痺と感覚機能の関連性について客観的な指標からは強く相関していないと言える。これは病巣の部位によって感覚機能に強く影響を与えやすい部位と運動機能に強く影響を与えやすい部位が特異的に障害されていたと考えられる。そのため,運動機能が良好であれば感覚機能も良好であるとは言い切る事が出来ない。また,末梢部ではその症状がより顕著に出ている事が言える。脳卒中発症から比較的初期の回復期でも高次脳機能障害など適切に感覚機能を評価する事が困難な患者も多い。先行研究よりSEPは客観的に感覚機能の評価を行う事が出来る。そのため,SEPによる感覚機能評価と共にCTおよびMRIによる画像診断で病巣の特定とPTによる運動麻痺の評価を合わせる事でより具体的に脳卒中患者の病態を理解し,リハビリテーションにおいて病態に即した治療アプローチの立案を出来る事が期待できる。