第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-10] ポスター(基礎)P10

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-10-1] マーカーを用いたKinect測定値の信頼性検証

石井 達也, 岡田 裕太, 丸毛 達也 (医療法人社団愛友会上尾中央総合病院)

キーワード:Kinect, 信頼性, 動作解析

【目的】

Kinect(Microsoft社製)は,これまでの3次元動作解析装置と比較して安価であり,測定が簡便である。Kinectの利点はマーカーを用いずに関節中心を推定でき,1つの計測機器で3次元の情報を得られることである。そのため,姿勢・動作を解析するツールとして有効とされている。しかし,動作によっては関節中心を読み取れず,誤差を生じやすいとの報告がある。マーカーを使用した場合,簡便性は損なわれるが,Kinectをより誤差の少ない状態で姿勢・動作解析に使用できると考えられる。本研究ではマーカーを用いて撮影した場合のKinect測定値の信頼性を検証することを目的とする。

【目的】

計測機器にはKinect1台,動作解析ソフトICpro,東大型角度計(以下,角度計)を用いる。Kinectの設置位置は計測点より3m離し,高さを70cmとする。Kinectのマーカー抽出精度を検証するため,角度計の両端及び中心部に赤外線反射マーカーを貼付する。角度計を任意の角度でランダムに設定し,マーカー貼付面(以下,貼付面)がKinectの撮影面に対し0°,45°,90°となる角度でそれぞれ撮影する。撮影後,動作解析ソフトICproを用いて各マーカーが成す角度を算出する。角度計の数値と,Kinectによる測定値の両方を記録する。測定は貼付面の角度ごとにそれぞれ10回繰り返す。同様に,身体にマーカーを貼付した場合の測定値を検証する。被検者は健常成人男性1名とし,大転子,膝関節中心および外果に赤外線反射マーカーを貼付する。測定肢位は座位とし,被検者の任意の膝関節屈曲角度を測定する。撮影は矢状面より行い,大転子-膝関節中心-外果が成す角を膝関節角度と定義し,動作解析ソフトICproを用いて算出する。同時に,検者が角度計を使用して膝関節角度を測定する。計測は10回実施する。各測定において,信頼性を評価するため,級内相関係数(ICC)の算出を行い,Kinect測定値と角度計の数値の検者間信頼性を求める。有意水準は5%未満とする。統計処理にはSPSS Statistics 21を用いる。

【結果】

貼付面がKinectの撮影面に対し0°,45°,90°の測定の場合,検者間ICCはそれぞれr=0.99(p<0.01),r=0.99(p<0.01),r=0.83(p<0.01)であった。すべての測定で高い検者間ICCを得られたが,90°の測定のみ,0°,45°の測定と比較して低い検者間ICCを示した。被検者を用いた測定の検者間ICCはr=0.99(p<0.01)であった。

【結論】

マーカーを貼付した測定にて,Kinectによって信頼性の高い測定値を得られた。特に,マーカー貼付面が撮影面を向いている場合の測定値の信頼性が高い。よって,Kinectはマーカーを用いて臨床上の姿勢・動作解析に活用できる可能性があり,特に,撮影面と同一面上の動作を解析するのに有効であると考える。