[P-KS-10-4] 若年健常成人における分節ごとの腰部可動性の検討
Keywords:腰椎, 可動域測定, 超音波画像解析
【はじめに,目的】
非特異的腰痛は,筋・筋膜性や椎間関節性,椎間板性,仙腸関節性の要因によって引き起こされる。これらの要因は腰部可動性に変化を生じさせることなどから,腰部可動性と腰痛との関連が示唆されている。腰部可動性についてはこれまで,関節可動域検査や指床間距離,modified Schober testの報告が多いが,これらは腰部全体の評価方法である。腰痛者では可動性が低下している分節前後の分節の可動性に過可動性が出現するなど代償的な作用が現れるとされており,既存の腰部全体の評価方法で測定しても異常値にならないことがあるため,分節ごとの可動性評価は重要である。本研究では超音波診断装置(以下US)を用いて,若年健常者を対象とした分節ごとの定量的腰部可動性評価を実施し,分節ごとの可動性の特徴を検討することを目的とした。
【方法】
対象者は整形外科的既往のない男性8名,検者は理学療法士1名とした。使用機器はUS(GE Healthcare社製vivid-i),プローブは周波数6.3MHz,分解能2.0mmのリニア式プローブ(GE Healthcare社製8L-RS),また,撮影時は超音波ゲル(日本光電工業社製)を使用した。対象者8名について,正座にて股関節・腰椎を最大屈曲した姿勢(屈曲位),腹臥位(中間位),パピー肢位(伸展位),の3つの姿勢にて撮影を行った。検者は対象者のL1-5を触診し,マーキングを行った。マークを目印にプローブを脊柱に対して平行,かつ棘突起の直上に垂直に置き,腰椎棘突起の画像を撮影した。部位はL1-2,L2-3,L3-4,L4-5間の4分節とし,各姿勢でそれぞれ3回連続撮影した。分析は画像内の棘間をUSの計測機能を使用し1mm単位で計測した。3回測定の平均値を代表値とし,腰椎の総可動距離(屈曲位-伸展位),屈曲可動距離(屈曲位-中間位),伸展可動距離(中間位-伸展位)を算出した。総可動距離における屈曲,伸展可動距離の割合を算出し,総可動距離,屈曲可動距離,伸展可動距離における分節ごとの可動割合を算出した。
【結果】
腰部可動距離の平均値(標準偏差)は総可動距離が5.3(0.8)cm,屈曲可動距離が4.2(0.5)cm,伸展可動距離が1.2(0.5)cmであった。屈曲可動距離は総可動距離の78.4%,伸展可動距離は22.6%であった。総可動距離の分節ごと(L1-2,L2-3,L3-4,L4-5)の可動割合の平均値は,20.7%,22.3%,24.7%,32.3%であった。屈曲可動距離では,15.3%,21.8%,29.1%,33.8%であり,伸展可動距離では,43.5%,23.9%,7.5%,25.1%であった。
【結論】
腰部の総可動距離における分節ごとの可動性は下部腰椎の可動性が大きく,上部腰椎の可動性が小さいという通説と同様の結果が得られた。しかし,さらなる分析で,腰部可動距離を屈曲可動距離,伸展可動距離に分けて検討した所,屈曲可動距離と伸展可動距離において異なるパターンの存在が明らかになった。今後は,疾患を有する対象者において検討し,臨床応用を図っていく。
非特異的腰痛は,筋・筋膜性や椎間関節性,椎間板性,仙腸関節性の要因によって引き起こされる。これらの要因は腰部可動性に変化を生じさせることなどから,腰部可動性と腰痛との関連が示唆されている。腰部可動性についてはこれまで,関節可動域検査や指床間距離,modified Schober testの報告が多いが,これらは腰部全体の評価方法である。腰痛者では可動性が低下している分節前後の分節の可動性に過可動性が出現するなど代償的な作用が現れるとされており,既存の腰部全体の評価方法で測定しても異常値にならないことがあるため,分節ごとの可動性評価は重要である。本研究では超音波診断装置(以下US)を用いて,若年健常者を対象とした分節ごとの定量的腰部可動性評価を実施し,分節ごとの可動性の特徴を検討することを目的とした。
【方法】
対象者は整形外科的既往のない男性8名,検者は理学療法士1名とした。使用機器はUS(GE Healthcare社製vivid-i),プローブは周波数6.3MHz,分解能2.0mmのリニア式プローブ(GE Healthcare社製8L-RS),また,撮影時は超音波ゲル(日本光電工業社製)を使用した。対象者8名について,正座にて股関節・腰椎を最大屈曲した姿勢(屈曲位),腹臥位(中間位),パピー肢位(伸展位),の3つの姿勢にて撮影を行った。検者は対象者のL1-5を触診し,マーキングを行った。マークを目印にプローブを脊柱に対して平行,かつ棘突起の直上に垂直に置き,腰椎棘突起の画像を撮影した。部位はL1-2,L2-3,L3-4,L4-5間の4分節とし,各姿勢でそれぞれ3回連続撮影した。分析は画像内の棘間をUSの計測機能を使用し1mm単位で計測した。3回測定の平均値を代表値とし,腰椎の総可動距離(屈曲位-伸展位),屈曲可動距離(屈曲位-中間位),伸展可動距離(中間位-伸展位)を算出した。総可動距離における屈曲,伸展可動距離の割合を算出し,総可動距離,屈曲可動距離,伸展可動距離における分節ごとの可動割合を算出した。
【結果】
腰部可動距離の平均値(標準偏差)は総可動距離が5.3(0.8)cm,屈曲可動距離が4.2(0.5)cm,伸展可動距離が1.2(0.5)cmであった。屈曲可動距離は総可動距離の78.4%,伸展可動距離は22.6%であった。総可動距離の分節ごと(L1-2,L2-3,L3-4,L4-5)の可動割合の平均値は,20.7%,22.3%,24.7%,32.3%であった。屈曲可動距離では,15.3%,21.8%,29.1%,33.8%であり,伸展可動距離では,43.5%,23.9%,7.5%,25.1%であった。
【結論】
腰部の総可動距離における分節ごとの可動性は下部腰椎の可動性が大きく,上部腰椎の可動性が小さいという通説と同様の結果が得られた。しかし,さらなる分析で,腰部可動距離を屈曲可動距離,伸展可動距離に分けて検討した所,屈曲可動距離と伸展可動距離において異なるパターンの存在が明らかになった。今後は,疾患を有する対象者において検討し,臨床応用を図っていく。