[P-KS-11-5] FAI患者における股関節深層外旋筋群筋断面積計測の信頼性の検討
Keywords:Femoroacetabular impingement, MRI画像, 筋断面積
【はじめに,目的】
Femoroacetabular Impingement(FAI)は股関節唇損傷や軟骨損傷を引き起こす病態である。FAIの理学療法では,股関節の動的安定性を担う深層外旋筋群の評価が重要であるが,個々の筋力評価は困難である。筋力以外の筋の評価として,画像を用いた個々の筋形態情報を得る方法は臨床的に有用と思われる。本研究の目的は,MRI画像を用いてFAI患者の股関節深層外旋筋群の筋断面積を計測し,検者内・検者間の信頼性を検討することである。
【方法】
2015年4月以降に当院整形外科を受診し,FAIと診断された男性21名,女性5名,計26名(年齢:31.7±15.5歳,身長:171.0±7.5cm,体重:66.7±12.9kg)を対象とした。検者は経験年数17年と1年の理学療法士の2名とした。計測画像は手術前に当院放射線技師により撮像されたMRI(SIEMENS社製MAGNETOM Skyra 3T,スライス厚0.5mm,TR23msec,TE14mm,NSA 1,SCAN Matrix 384×307)画像を用いた。撮像時の患者の肢位はすべて背臥位・股関節内旋位であった。各検者は26名分の患者のMRI画像を無作為に抽出し,コンピューター画面上のT2*強調横断画像から検者が最大筋断面積と判断したスライスで,患側外閉鎖筋・内閉鎖筋・梨状筋の最大筋断面積をSYNAPSE VINCENT(FUJIFILM社製)を用いてトレース法にて計測した。検者内信頼性の検討のため,各検者とも1回目の計測から3日以上間隔をあけ2回目の計測を実施した。検者間信頼性の検討のため,各検者はもう一人の測定結果を確認できないように配慮した。信頼性の検討に級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:ICC)を用いた。また,系統誤差(固定誤差,比例誤差)の検討にはBland-Altman分析を用いた。
【結果】
検者内相関係数ICC(1,1)は,各検者共に外閉鎖筋が0.98,内閉鎖筋が0.98,梨状筋が0.98~0.99であった。検者間相関係数ICC(2,1)は,外閉鎖筋が0.97,内閉鎖筋が0.98,梨状筋が0.98であった。また,Bland-Altman分析にて,各筋ともに固定誤差,比例誤差は認められなかった。
【結論】
本研究より検者内・検者間相関係数ともに0.97以上と高い信頼性が得られ,系統誤差も認められなかったことから,MRI画像を用いた深層外旋筋群の最大筋断面積の計測は,臨床的に有用な指標になりうることが示され,FAI患者の個々の筋の評価や理学療法プログラム立案の一助となりうると考えられた。今後は筋力値に加え,MRI画像上での筋形態評価との組み合わせでFAI患者の股関節機能評価や理学療法に役立てていきたい。
Femoroacetabular Impingement(FAI)は股関節唇損傷や軟骨損傷を引き起こす病態である。FAIの理学療法では,股関節の動的安定性を担う深層外旋筋群の評価が重要であるが,個々の筋力評価は困難である。筋力以外の筋の評価として,画像を用いた個々の筋形態情報を得る方法は臨床的に有用と思われる。本研究の目的は,MRI画像を用いてFAI患者の股関節深層外旋筋群の筋断面積を計測し,検者内・検者間の信頼性を検討することである。
【方法】
2015年4月以降に当院整形外科を受診し,FAIと診断された男性21名,女性5名,計26名(年齢:31.7±15.5歳,身長:171.0±7.5cm,体重:66.7±12.9kg)を対象とした。検者は経験年数17年と1年の理学療法士の2名とした。計測画像は手術前に当院放射線技師により撮像されたMRI(SIEMENS社製MAGNETOM Skyra 3T,スライス厚0.5mm,TR23msec,TE14mm,NSA 1,SCAN Matrix 384×307)画像を用いた。撮像時の患者の肢位はすべて背臥位・股関節内旋位であった。各検者は26名分の患者のMRI画像を無作為に抽出し,コンピューター画面上のT2*強調横断画像から検者が最大筋断面積と判断したスライスで,患側外閉鎖筋・内閉鎖筋・梨状筋の最大筋断面積をSYNAPSE VINCENT(FUJIFILM社製)を用いてトレース法にて計測した。検者内信頼性の検討のため,各検者とも1回目の計測から3日以上間隔をあけ2回目の計測を実施した。検者間信頼性の検討のため,各検者はもう一人の測定結果を確認できないように配慮した。信頼性の検討に級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:ICC)を用いた。また,系統誤差(固定誤差,比例誤差)の検討にはBland-Altman分析を用いた。
【結果】
検者内相関係数ICC(1,1)は,各検者共に外閉鎖筋が0.98,内閉鎖筋が0.98,梨状筋が0.98~0.99であった。検者間相関係数ICC(2,1)は,外閉鎖筋が0.97,内閉鎖筋が0.98,梨状筋が0.98であった。また,Bland-Altman分析にて,各筋ともに固定誤差,比例誤差は認められなかった。
【結論】
本研究より検者内・検者間相関係数ともに0.97以上と高い信頼性が得られ,系統誤差も認められなかったことから,MRI画像を用いた深層外旋筋群の最大筋断面積の計測は,臨床的に有用な指標になりうることが示され,FAI患者の個々の筋の評価や理学療法プログラム立案の一助となりうると考えられた。今後は筋力値に加え,MRI画像上での筋形態評価との組み合わせでFAI患者の股関節機能評価や理学療法に役立てていきたい。