[P-KS-12-1] 2型糖尿病患者における表面筋電図を用いた骨格筋変性の評価
周波数解析を用いて
Keywords:表面筋電図, 周波数解析, 2型糖尿病
【はじめに】
日本において糖尿病は,60歳以上の高齢者の約6人に1人が罹患している疾患である。糖尿病の病態は,インスリンの作用不足による糖代謝異常である。糖代謝において骨格筋は,運動による筋収縮によって血液中に含まれるグルコースの約70~80%を処理する人体最大の糖代謝器官であるため,適切な運動療法は治療として効果的である。そのため糖尿病治療において骨格筋に着目することが非常に重要であると言える。Hickeyらは,2型糖尿病患者の下肢骨格筋では,typeIIB線維の割合が高く,typeI線維やtypeIIA線維の割合が低いことを報告している。つまり骨格筋変性の評価が重要であるが,非侵襲的な評価法は確立されておらず,表面筋電図にて2型糖尿病患者の骨格筋変性を報告したものはない。そこで本研究は,表面筋電図による周波数解析を用い,2型糖尿病患者における骨格筋変性の特徴を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は当院入院中の病棟内歩行自立した者を対象とし,2型糖尿病患者(以下DM群)3名(性別:女性年齢:77.9±8.0歳),2型糖尿病非罹患患者(以下非DM群)3名(性別:女性 年齢:80.4±2.6歳)の計6名である。糖尿病の判定は,医師による診断とHbA1c値が国際基準値以上であることとした。測定は表面筋電図(Noraxon社製myosystem 1400)を用い,胸部脊柱起立筋を標的筋とした。筋電電極(Ambu社製ブルーセンサー)は標的筋に対して筋線維の長軸方向へ平行となるようにし,電極間距離を20mmとした。貼付方法はHermieらの方法に従って貼付した。筋疲労による結果への影響を考慮し測定は1回,腹臥位での5秒間の最大等尺性収縮にて行い,安定した中3秒間を採用した。得られた筋電図波形をパワースペクトル分析し,永田らの報告に基づき0~40HzをtypeI線維,40~80HzをtypeIIA線維,80Hz以上をtypeIIB線維と規定し,周波数比率を(各周波数毎の発揮パワー/全発揮パワー)にて算出した。
【結果】
両群とも対象者の胸部脊柱起立筋MMTは4であり,DM群のHbA1c値(%)は7.0±0.1であった。脊柱起立筋におけるそれぞれの周波数帯の比率(平均±SD%)は,0~40Hz(DM群25.5±5.0:非DM群39.3±4.5),40~80Hz(DM群40.7±5.3:非DM群37.2±2.6),80Hz以上(DM群33.8±7.9%:非DM群23.5±6.9%)であった。
【結論】
本研究の結果は,脊柱起立筋においてtypeI線維(0~40Hz)の比率が低くなり,typeIIB線維(80Hz以上)の比率が高くなることを示し,筋生検を用いた先行研究の報告と一致した。Seokらは2型糖尿病患者において筋内脂肪量の増加,骨格筋内の酸素代謝の減少,相対的解糖系代謝の増加によりtypeI線維が選択的に萎縮することを報告しており,同様の機序で,今回対象とした2型糖尿病患者においても筋萎縮が起こっていると考えられる。以上より,臨床における評価手段として用いやすい表面筋電図により骨格筋変性が評価でき,治療の標的とする筋を明確にできる可能性が示唆された。
日本において糖尿病は,60歳以上の高齢者の約6人に1人が罹患している疾患である。糖尿病の病態は,インスリンの作用不足による糖代謝異常である。糖代謝において骨格筋は,運動による筋収縮によって血液中に含まれるグルコースの約70~80%を処理する人体最大の糖代謝器官であるため,適切な運動療法は治療として効果的である。そのため糖尿病治療において骨格筋に着目することが非常に重要であると言える。Hickeyらは,2型糖尿病患者の下肢骨格筋では,typeIIB線維の割合が高く,typeI線維やtypeIIA線維の割合が低いことを報告している。つまり骨格筋変性の評価が重要であるが,非侵襲的な評価法は確立されておらず,表面筋電図にて2型糖尿病患者の骨格筋変性を報告したものはない。そこで本研究は,表面筋電図による周波数解析を用い,2型糖尿病患者における骨格筋変性の特徴を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は当院入院中の病棟内歩行自立した者を対象とし,2型糖尿病患者(以下DM群)3名(性別:女性年齢:77.9±8.0歳),2型糖尿病非罹患患者(以下非DM群)3名(性別:女性 年齢:80.4±2.6歳)の計6名である。糖尿病の判定は,医師による診断とHbA1c値が国際基準値以上であることとした。測定は表面筋電図(Noraxon社製myosystem 1400)を用い,胸部脊柱起立筋を標的筋とした。筋電電極(Ambu社製ブルーセンサー)は標的筋に対して筋線維の長軸方向へ平行となるようにし,電極間距離を20mmとした。貼付方法はHermieらの方法に従って貼付した。筋疲労による結果への影響を考慮し測定は1回,腹臥位での5秒間の最大等尺性収縮にて行い,安定した中3秒間を採用した。得られた筋電図波形をパワースペクトル分析し,永田らの報告に基づき0~40HzをtypeI線維,40~80HzをtypeIIA線維,80Hz以上をtypeIIB線維と規定し,周波数比率を(各周波数毎の発揮パワー/全発揮パワー)にて算出した。
【結果】
両群とも対象者の胸部脊柱起立筋MMTは4であり,DM群のHbA1c値(%)は7.0±0.1であった。脊柱起立筋におけるそれぞれの周波数帯の比率(平均±SD%)は,0~40Hz(DM群25.5±5.0:非DM群39.3±4.5),40~80Hz(DM群40.7±5.3:非DM群37.2±2.6),80Hz以上(DM群33.8±7.9%:非DM群23.5±6.9%)であった。
【結論】
本研究の結果は,脊柱起立筋においてtypeI線維(0~40Hz)の比率が低くなり,typeIIB線維(80Hz以上)の比率が高くなることを示し,筋生検を用いた先行研究の報告と一致した。Seokらは2型糖尿病患者において筋内脂肪量の増加,骨格筋内の酸素代謝の減少,相対的解糖系代謝の増加によりtypeI線維が選択的に萎縮することを報告しており,同様の機序で,今回対象とした2型糖尿病患者においても筋萎縮が起こっていると考えられる。以上より,臨床における評価手段として用いやすい表面筋電図により骨格筋変性が評価でき,治療の標的とする筋を明確にできる可能性が示唆された。