[P-KS-12-3] 入院患者の身体活動量と日常生活動作との関連
―身体活動量はただ増えればいい?―
Keywords:身体活動量, 日常生活動作, 身体機能
【はじめに,目的】
患者の活動水準を高めることは,リハビリテーションの重要な目標のひとつである。近年,身体活動量(以下PA)を高めることが運動機能改善を加速させる要素として着目されている。また,運動器疾患において,日常生活での活動量が低い状態にあると,将来的に身体機能の低下が生じやすいことが報告され,この背景をもとに多くの取り組みが報告されている。しかしながらPAの増大とともに身体機能も比例的に向上するかについては,明確にはされていない。本研究では,PAと身体機能の関連性について検証することを目的とする。
【方法】
2013年4月から2014年5月の期間で回復期リハ病棟に入棟し,入棟直後と退院前にPAの測定が可能であった35名を対象とし,疾患は,心不全4名,大腿骨頸部/転子部骨折21名,廃用症候群10名であった。PAは,歩数計(株式会社スズケン,ライフコーダーGS)で連続5日間以上測定し,初日と最終日を除く,実測歩数平均値(歩/日),低~中強度活動時間平均値(分)を算出した。日常生活動作は,Functional Independence Measure(以下FIM)を評価した。その後,入棟直後と退院前で測定された値から,疾患ごとに,歩数とFIM利得,活動時間とFIM利得について,Spearmanの順位相関係数を用いて比較した。また,歩行能力を①手放し歩行自立,②T字杖歩行自立,③T字杖を除く歩行補助具使用や監視を有する歩行,④歩行不可の4段階とした。T字杖以上の歩行形態で自立した群(以下自立群)と自立しなかった群(以下非自立群)に分け,疾患ごとに,退院時の歩数の平均を比較した。統計処理は,Mann-WhitneyのU検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
疾患ごとに相関係数を算出した結果,歩数とFIM利得では,心不全での歩数とFIM利得(0.903)に中等度以上の正の相関を認めた。大腿骨頸部/転子部骨折での歩数とFIM利得(0.166),廃用症候群での歩数とFIM利得(0.169)では相関を認めなかった。活動時間とFIM利得でも同様に,心不全で中等度以上の正の相関を認め(0.950),大腿骨頸部/転子部骨折と廃用症候群では相関を認めなかった。
また,自立群と非自立群で,退院時の歩数の平均を比較すると,廃用症候群において,自立群は,歩数2229.25(歩/日),非自立群は,歩数305.16(歩/日)であり,有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
今回,歩数とFIM,活動時間とFIMの関連を調査した結果,心不全では,歩数や活動時間の増加とFIM利得の増加は,高い正の相関が認められた。一方で,大腿骨頸部/転子部骨折と廃用症候群では,相関は認めなかった。この結果より,心不全では,歩数と活動時間を増やす関わりは,日常生活動作を改善するが,運動器疾患や廃用症候群では,歩数と活動時間をただ増加するだけでは,身体機能は改善せず,セラピストの専門性を活かした運動の質の管理への関わりが欠かせないといえる。
患者の活動水準を高めることは,リハビリテーションの重要な目標のひとつである。近年,身体活動量(以下PA)を高めることが運動機能改善を加速させる要素として着目されている。また,運動器疾患において,日常生活での活動量が低い状態にあると,将来的に身体機能の低下が生じやすいことが報告され,この背景をもとに多くの取り組みが報告されている。しかしながらPAの増大とともに身体機能も比例的に向上するかについては,明確にはされていない。本研究では,PAと身体機能の関連性について検証することを目的とする。
【方法】
2013年4月から2014年5月の期間で回復期リハ病棟に入棟し,入棟直後と退院前にPAの測定が可能であった35名を対象とし,疾患は,心不全4名,大腿骨頸部/転子部骨折21名,廃用症候群10名であった。PAは,歩数計(株式会社スズケン,ライフコーダーGS)で連続5日間以上測定し,初日と最終日を除く,実測歩数平均値(歩/日),低~中強度活動時間平均値(分)を算出した。日常生活動作は,Functional Independence Measure(以下FIM)を評価した。その後,入棟直後と退院前で測定された値から,疾患ごとに,歩数とFIM利得,活動時間とFIM利得について,Spearmanの順位相関係数を用いて比較した。また,歩行能力を①手放し歩行自立,②T字杖歩行自立,③T字杖を除く歩行補助具使用や監視を有する歩行,④歩行不可の4段階とした。T字杖以上の歩行形態で自立した群(以下自立群)と自立しなかった群(以下非自立群)に分け,疾患ごとに,退院時の歩数の平均を比較した。統計処理は,Mann-WhitneyのU検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
疾患ごとに相関係数を算出した結果,歩数とFIM利得では,心不全での歩数とFIM利得(0.903)に中等度以上の正の相関を認めた。大腿骨頸部/転子部骨折での歩数とFIM利得(0.166),廃用症候群での歩数とFIM利得(0.169)では相関を認めなかった。活動時間とFIM利得でも同様に,心不全で中等度以上の正の相関を認め(0.950),大腿骨頸部/転子部骨折と廃用症候群では相関を認めなかった。
また,自立群と非自立群で,退院時の歩数の平均を比較すると,廃用症候群において,自立群は,歩数2229.25(歩/日),非自立群は,歩数305.16(歩/日)であり,有意差を認めた(p<0.05)。
【結論】
今回,歩数とFIM,活動時間とFIMの関連を調査した結果,心不全では,歩数や活動時間の増加とFIM利得の増加は,高い正の相関が認められた。一方で,大腿骨頸部/転子部骨折と廃用症候群では,相関は認めなかった。この結果より,心不全では,歩数と活動時間を増やす関わりは,日常生活動作を改善するが,運動器疾患や廃用症候群では,歩数と活動時間をただ増加するだけでは,身体機能は改善せず,セラピストの専門性を活かした運動の質の管理への関わりが欠かせないといえる。