第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-12] ポスター(基礎)P12

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-12-5] 統合失調症患者におけるADL評価
FIMとRehabの関連と影響因子について

一関 優1, 畠山 和利2, 渡邉 基起2, 若狭 正彦3 (1.久幸会今村病院理学療法室, 2.秋田大学医学部附属病院リハビリテーション部, 3.秋田大学大学院医学研究科保健学専攻理学療法講座)

キーワード:統合失調症, FIM, 精神科リハビリテーション行動尺度

【はじめに,目的】慢性期の統合失調症(Schizophrenia;以下Sz)は,日常生活・対人関係・問題解決の能力低下が起こるとされている。Szの評価の中でも精神科リハビリテーション行動尺度(Rehabilitation Evaluation of Hall and Baker;以下Rehab)は汎用性や信頼性,妥当性が高い。しかし,Rehabは理学療法領域で十分認識されておらず,FIMとの関連性について述べた報告は渉猟しうる限りない。本研究の目的は,慢性期SzのFIMとRehabの関連性を明らかにすることである。



【方法】対象は慢性期Sz 31例(男性18例,女性13例,平均年齢49.0±12.0歳)である。評価はFIMおよびRehabを用いた。Rehabは,日常生活動作や社会的活動性などの項目で構成される。1週間以上患者を観察し,合計点が0-40点「社会生活が可能」,41-64点「中等度困難」,65-144点「社会生活が困難」と分類される。比較的評価項目が少なく(23項目),評定基準が示されている。統計はSPSSver20を用い,FIMとRehab各項目の関連性をSpearmanの相関係数を用いて検定した。その後,Rehab合計点が65点以上の患者に対し,重回帰分析を行った。有意水準はp<0.05とした。



【結果】FIM大項目での関連は,FIMセルフケア・Rehabセルフケア(r=-0.65),FIMコミュニケーション・Rehab言葉の分かりやすさ(r=-0.592),FIM合計・Rehab合計(r=-0.528)で有意に負の相関がみられた。Rehab合計点が65点以上であった患者は,31例中18例だった。重回帰分析の結果,Rehab合計点・FIMセルフケア合計点(β:-0.723,p=-0.02),Rehab合計点・FIM小項目間では整容(β:-0.684,p=0.009)とトイレ動作(β:-051,p=0.027)が抽出された。



【考察】FIMとRehabのセルフケアやコミュニケーション,合計点に負の相関がみられた。慢性期Szは,身辺整理や周囲に対する関心が欠如するとされている。本研究はこれを支持する結果だった。重回帰分析から,Rehab合計点はFIMセルフケア合計点が,FIM小項目では整容とトイレ動作が抽出された。これは活動性や問題解決能力の低下など,複数要因からセルフケアに助言・援助が必要であるためと考える。Rehabは,評価期間と項目内容からSzを詳細に評価が出来る。しかし,FIMのトイレ動作と整容の2点に着目すると,短時間で容易にRehab全体の点数が把握できる可能性がある。

【結語】慢性期SzのFIMとRehabの合計点は関連していた。他の要因など検討の余地はあるが,互換性が期待できる。さらに,Szはトイレ動作と整容の2点に着目すると全体の点数が推測出来る可能性がある。