[P-KS-13-1] 健常若年女性に対する胸背部圧迫刺激が自律神経活動,手指皮膚温に及ぼす影響
簡易的な圧迫刺激装置を用いた研究
Keywords:胸背部圧迫刺激, 自律神経活動, 手指皮膚温
【目的】
女性は,男性と比較して高い比率で慢性疼痛に悩んでいる。これまで,徒手での皮膚の圧迫が,皮膚温(皮膚血流),心機能など種々の自律神経活動に影響することを確認しているが,施術者が必要であり,技量の影響を受けることが問題である。我々は,脊柱側部への定量的で簡易的な圧迫刺激が可能な圧迫刺激装置の開発をした。本研究は,圧迫刺激装置による胸背部圧迫刺激が自律神経活動,手指皮膚温に及ぼす影響について検討した。
【対象と方法】
対象は,健常成人女性10名とした。冷え性アンケート実施後,室温25℃での背臥位にて胸背部圧迫刺激前後の心電図,血圧および右中指指尖皮膚温(以下,皮膚温)を測定した。性周期の確認は,月経周期を28日とし,月経期(7日目)・排卵期(14日目)・黄体期(28日目)の3期間に分けた。胸背部への圧迫刺激は,圧迫刺激装置KM214-018(ユニークメディカル)を使用し,右第2-4胸椎棘突起の1横指下外側に突起部を当ててゴムバックを固定し,アネロイド型血圧計メーターで50 mmHgに調整し,刺激後5分後に再度圧迫刺激を行った。体表温度は防水型デジタル温度計SK-250WP(佐藤計量器製作所)を使用し,皮膚温を1分間隔で測定した。心電図測定および心拍変動解析は,心拍ゆらぎ測定機器Mem-calc(Tawara)を使用した。自律神経活動の指標は,LF(0.04~0.15 Hz)が心臓交感・副交感神経活動,HF(0.15~0.40 Hz)が心臓副交感神経活動,CVRRが迷走神経活動,LF/HFが交感神経活動とされている。血圧測定は,Lifemate N(日本光電)を使用し,刺激前後に測定した。測定プロトコールは,圧迫前後の安静10分,胸背部圧迫10分とした。統計学的分析はSPSS statistics 23.0(IBM)を使用し,圧迫前後の比較についてWilcoxon符号順位和検定を用い,有意水準5%とした。
【結果】
冷え症アンケートでは全例で自覚症状がみられた。月経周期は10名中9名が黄体期,1名が排卵期であった。圧迫前後の比較において,皮膚温は28.5±4.5℃°から-0.6±0.7℃と有意な低下を認めた(p<0.05)。HFは,571.5±423.2 msec2から723.0±551.5 msec2と有意な上昇を認めた(p<0.05)。
【考察】
胸背部への圧迫刺激後,副交感神経活動が上昇した。矢澤らは,鍼刺激では刺激部位に関係なく交感神経が抑制されると報告している。また,女性は,副交感神経の影響を強く受け,エストロゲンの増加が交感神経系の活動を抑制する。今回の対象者10名のうち9名が,黄体期であったことから副交感神経活動が優位となったと考えられる。また,本実験では刺激中に皮膚温の低下を認めた。安静時において産熱の大部分は内臓系にて産生される。女性ホルモンによる代謝亢進は,体幹部は熱っぽくなり,末梢の手足は冷えやすくなると報告している。以上より,核心温を維持するため血液が中枢部に集まった結果,手指皮膚温が低下したと考えられる。
女性は,男性と比較して高い比率で慢性疼痛に悩んでいる。これまで,徒手での皮膚の圧迫が,皮膚温(皮膚血流),心機能など種々の自律神経活動に影響することを確認しているが,施術者が必要であり,技量の影響を受けることが問題である。我々は,脊柱側部への定量的で簡易的な圧迫刺激が可能な圧迫刺激装置の開発をした。本研究は,圧迫刺激装置による胸背部圧迫刺激が自律神経活動,手指皮膚温に及ぼす影響について検討した。
【対象と方法】
対象は,健常成人女性10名とした。冷え性アンケート実施後,室温25℃での背臥位にて胸背部圧迫刺激前後の心電図,血圧および右中指指尖皮膚温(以下,皮膚温)を測定した。性周期の確認は,月経周期を28日とし,月経期(7日目)・排卵期(14日目)・黄体期(28日目)の3期間に分けた。胸背部への圧迫刺激は,圧迫刺激装置KM214-018(ユニークメディカル)を使用し,右第2-4胸椎棘突起の1横指下外側に突起部を当ててゴムバックを固定し,アネロイド型血圧計メーターで50 mmHgに調整し,刺激後5分後に再度圧迫刺激を行った。体表温度は防水型デジタル温度計SK-250WP(佐藤計量器製作所)を使用し,皮膚温を1分間隔で測定した。心電図測定および心拍変動解析は,心拍ゆらぎ測定機器Mem-calc(Tawara)を使用した。自律神経活動の指標は,LF(0.04~0.15 Hz)が心臓交感・副交感神経活動,HF(0.15~0.40 Hz)が心臓副交感神経活動,CVRRが迷走神経活動,LF/HFが交感神経活動とされている。血圧測定は,Lifemate N(日本光電)を使用し,刺激前後に測定した。測定プロトコールは,圧迫前後の安静10分,胸背部圧迫10分とした。統計学的分析はSPSS statistics 23.0(IBM)を使用し,圧迫前後の比較についてWilcoxon符号順位和検定を用い,有意水準5%とした。
【結果】
冷え症アンケートでは全例で自覚症状がみられた。月経周期は10名中9名が黄体期,1名が排卵期であった。圧迫前後の比較において,皮膚温は28.5±4.5℃°から-0.6±0.7℃と有意な低下を認めた(p<0.05)。HFは,571.5±423.2 msec2から723.0±551.5 msec2と有意な上昇を認めた(p<0.05)。
【考察】
胸背部への圧迫刺激後,副交感神経活動が上昇した。矢澤らは,鍼刺激では刺激部位に関係なく交感神経が抑制されると報告している。また,女性は,副交感神経の影響を強く受け,エストロゲンの増加が交感神経系の活動を抑制する。今回の対象者10名のうち9名が,黄体期であったことから副交感神経活動が優位となったと考えられる。また,本実験では刺激中に皮膚温の低下を認めた。安静時において産熱の大部分は内臓系にて産生される。女性ホルモンによる代謝亢進は,体幹部は熱っぽくなり,末梢の手足は冷えやすくなると報告している。以上より,核心温を維持するため血液が中枢部に集まった結果,手指皮膚温が低下したと考えられる。