[P-KS-14-3] 腸骨耳状面3次元形態解析と変性変化との関係について
キーワード:仙腸関節, 3次元形態解析, 変性変化
【はじめに,目的】
仙腸関節は古くから腰痛に代表されるような腰部・下肢領域の運動器障害の原因の一つとして考えられている。しかし,仙腸関節の機能的意義については未だ不明な点が多い。特に仙腸関節の形態には個体差があることが報告されているが,その形態が個体にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない。我々の先行研究からは腸骨耳状面の形態的特徴が関節周辺の骨棘増殖や関節面の磨耗といった構造的な変性変化に影響していることが示唆された。そこで今回,腸骨耳状面の形態をより詳細に定量評価するために耳状面の3次元画像から形態解析を行い,関節の形態と変性変化との関係を調査した。
【方法】
60歳以上の現代日本人男性晒骨の腸骨44体を使用した(平均年齢69.05±5.68,範囲60-83)。まず,各腸骨の耳状面をBuckberryら(2002)とIgarashiら(2005)の年齢推定法に準じて評価し,その評価結果から年齢による影響を標準化したものを耳状面の変性変化の程度を表す指標として,耳状面の変性変化の程度が高度な群(変性群;n=23)と低度な群(非変性群;n=21)に分けた。腸骨耳状面の3次元形態計測は,位置固定したデジタルカメラで角度を少し変えて撮影した2枚の耳状面の写真からPC上で画像処理し3次元画像を作成し,さらに計測のために定義した11カ所の計測点を3次元画像にプロットし,xyz座標成分として抽出した。各計測点のxyz座標から,距離,角度,面積などを示す21項目の計測項目を算出した。21の計測項目の算出値は,耳状面の変性変化が進行群と非進行群の間で比較された。統計学的分析は,エクセル統計(BellCurve for Excel)を使用し,両群の正規性を検定後,t検定を行って比較した。
【結果】
21の計測項目のうち,耳状面全体の湾曲を示す項目の「くびれ横径」と「後縁角」,耳状面の凹凸の大きさを示す「中間膨隆高」と「下部膨隆高」において両群間で有意差を認めた。くびれ横径は進行群で有意に大きく(p<0.01),中間膨隆高,下部膨隆高,後縁角においては非進行群で有意に大きかった(p<0.05)。
【結論】
有意差が得られたくびれ横径,中間膨隆高,下部膨隆高,後縁角は仙腸関節の可動性に関与していると考えられる形態学的特徴である。本研究の結果は,腸骨耳状面の可動性と腸骨耳状面の変性変化の進行の程度の間には何らかの関係があることを示唆している。今後も詳細な検討は必要だが,関節の3次元画像による形態解析は,これまで明らかにされていなかった関節の機能を解き明かすための有効な方法となると考えている。
仙腸関節は古くから腰痛に代表されるような腰部・下肢領域の運動器障害の原因の一つとして考えられている。しかし,仙腸関節の機能的意義については未だ不明な点が多い。特に仙腸関節の形態には個体差があることが報告されているが,その形態が個体にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていない。我々の先行研究からは腸骨耳状面の形態的特徴が関節周辺の骨棘増殖や関節面の磨耗といった構造的な変性変化に影響していることが示唆された。そこで今回,腸骨耳状面の形態をより詳細に定量評価するために耳状面の3次元画像から形態解析を行い,関節の形態と変性変化との関係を調査した。
【方法】
60歳以上の現代日本人男性晒骨の腸骨44体を使用した(平均年齢69.05±5.68,範囲60-83)。まず,各腸骨の耳状面をBuckberryら(2002)とIgarashiら(2005)の年齢推定法に準じて評価し,その評価結果から年齢による影響を標準化したものを耳状面の変性変化の程度を表す指標として,耳状面の変性変化の程度が高度な群(変性群;n=23)と低度な群(非変性群;n=21)に分けた。腸骨耳状面の3次元形態計測は,位置固定したデジタルカメラで角度を少し変えて撮影した2枚の耳状面の写真からPC上で画像処理し3次元画像を作成し,さらに計測のために定義した11カ所の計測点を3次元画像にプロットし,xyz座標成分として抽出した。各計測点のxyz座標から,距離,角度,面積などを示す21項目の計測項目を算出した。21の計測項目の算出値は,耳状面の変性変化が進行群と非進行群の間で比較された。統計学的分析は,エクセル統計(BellCurve for Excel)を使用し,両群の正規性を検定後,t検定を行って比較した。
【結果】
21の計測項目のうち,耳状面全体の湾曲を示す項目の「くびれ横径」と「後縁角」,耳状面の凹凸の大きさを示す「中間膨隆高」と「下部膨隆高」において両群間で有意差を認めた。くびれ横径は進行群で有意に大きく(p<0.01),中間膨隆高,下部膨隆高,後縁角においては非進行群で有意に大きかった(p<0.05)。
【結論】
有意差が得られたくびれ横径,中間膨隆高,下部膨隆高,後縁角は仙腸関節の可動性に関与していると考えられる形態学的特徴である。本研究の結果は,腸骨耳状面の可動性と腸骨耳状面の変性変化の進行の程度の間には何らかの関係があることを示唆している。今後も詳細な検討は必要だが,関節の3次元画像による形態解析は,これまで明らかにされていなかった関節の機能を解き明かすための有効な方法となると考えている。